M&A用語集|あ行
2027年1月・中小企業M&A実務能力・倫理検定試験の学習に
88語+関連1語。意味・使用例・間違えやすい点をまとめています。
見つかりませんでした。検索語や読みの絞り込みを変えてください。
アーニング・マルチプル・レシオ
あーにんぐまるちぷるれしお
M&Aの取引価格が、対象会社の利益の何倍に当たるかを見る比率です。似た会社の取引を材料に、価格の目安を考えるときに使います。利益には税引後の最終利益などを使い、どの価格をどの利益で割った数値かを確認して比較します。
参考取引のアーニング・マルチプル・レシオは、今回と同じ利益の定義か確認します。
間違えやすい点株価と1株利益を比べるPERに似た考え方ですが、買収価格には経営権や取引条件の影響もあります。利益倍率には複数の作り方があるので、名称だけでPERやEBITDA倍率と同じだと決めつけません。
出典
IPEV Board「International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines, December 2022」 ↗
Section I 3.4、p.24 Use of Earnings multiples及びp.25 Acquisition multiples vs quoted company trading multiples
アーリーリタイア
あーりーりたいあ
一般的な引退時期より早めに、仕事や経営の第一線から退くことです。M&Aでは、経営者が会社や事業を次の担い手へ引き継ぎ、自分の働き方や生活を変える目的として使われます。
早期引退を見据え、社員や取引先への引継ぎ期間を確保して会社売却を進める。
間違えやすい点会社を売れば、その日にすべての役割が終わるとは限りません。契約で一定期間の引継ぎや支援を約束する場合があるため、代金だけでなく退任時期や残る義務も確認します。
出典
日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援・成約事例」 ↗
経営者の引退に際して第三者へ事業を引き継いだ事例。早期引退に必要な資産額などは扱わない
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第3版 ↗
第1章・M&Aの流れ、最終契約とクロージング後のリスク
ROE
あーるおーいー
別名・英字:株主資本利益率/自己資本利益率
株主側の元手である自己資本に対し、会社がどのくらい最終的な利益を稼いだかを見る割合です。Return on Equityの略で、自己資本利益率といいます。一般に当期純利益を期首と期末の平均自己資本で割り、資金の使い方を考える材料にします。
ROEが上がった理由を、利益の増加と自己資本の変化に分けて確認します。
間違えやすい点高ければ無条件によいわけではありません。自己資本が小さいと高く出る場合もあるため、利益の内容と借入金の多さも確認します。借入れを増やしただけで、自己資本が自動的に減るわけではありません。
出典
日本取引所グループ「株価検索―はじめての方へ―」 ↗
主要項目の説明:ROE
ROA
あーるおーえー
別名・英字:総資産利益率
会社が持つ資産全体を使い、どのくらい効率よく利益を生んだかを見る割合です。Return on Assetsの略で、総資産利益率といいます。基本は「利益÷総資産」で、借入金で用意した分も含む資産全体に目を向けます。
設備を多く持つ会社なので、売上の伸びと合わせてROAも確認します。
間違えやすい点使う利益には営業利益、経常利益、当期純利益など複数の種類があります。比較するときは分子の利益と資産の集計時点をそろえます。株主側の元手に対する利益を見るROEとは、比べる対象が異なります。
出典
日本取引所グループ「総資産利益率」 ↗
用語の解説本文
アーンアウト
あーんあうと
会社や事業を買った後の売上・利益など、あらかじめ決めた条件に応じて、買い手が売り手へ追加の代金を払う仕組みです。最初に払う代金に、将来の結果に応じた追加分を組み合わせます。
買収後の利益目標を達成した場合に追加代金を払うアーンアウトを、売買契約に盛り込む。
間違えやすい点金額が決まった代金を何回かに分けて払う「分割払い」と違い、追加額は目標の達成状況などで変わります。どの数字を使い、誰が確かめ、いつ払うかまで決めておかないと、後で認識が食い違う原因になります。
出典
経済産業省「中小M&Aガイドライン第3版 参考資料」 ↗
リスク事項の詳細・アーンアウト条項
経済産業省「スタートアップにおけるアーンアウト条項に関する税制上の論点」 ↗
アーンアウトスキームの概要。税務の結論は本項目では説明しない
IRR
あいあーるあーる
別名・英字:内部収益率
最初に支払う投資額と、その後に回収すると見込むお金の金額・時期から計算する収益率です。内部収益率といい、投資の採算を判断するときに使います。将来のお金を今の価値に直した回収額と、投資額がつり合う率を求めます。
買収後の回収額と回収時期を予測し、IRRが投資家の求める水準に届くか検討します。
間違えやすい点毎年その率の現金を必ず受け取れるという意味ではありません。金額と時期の予測に左右されます。投資案の大きさが違うとIRRだけでは選べず、お金の出入りによっては答えが複数ある場合もあります。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「IRR」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
IFRS
あいえふあーるえす
別名・英字:国際財務報告基準
会社の資産や利益などを、どのようなルールで計算し決算書にまとめるかを定める国際的な会計基準です。国際財務報告基準といい、国をまたいだ会社比較にも使われます。日本基準とは別のルールなので、M&Aでは対象会社が何を採用しているか確認します。
日本基準の会社とIFRSの会社を比べるので、のれんなどの処理の違いを確認します。
間違えやすい点日本のすべての会社が使う決まりではありません。同じ事業でも採用基準によって利益や資産の数字が変わることがあります。数字の大小だけで優劣を決めず、会計基準と処理内容を合わせて読みます。
出典
IFRS財団「Issued Standards」 ↗
IFRS Accounting Standardsの公表主体・基準一覧
金融庁「IFRS関連情報一覧」 ↗
IFRS及び日本での適用に関する資料
相対取引
あいたいとりひき
関連する表記:相対方式
取引所で多くの注文を突き合わせるのでなく、売り手と買い手が価格や数量などを個別に合意して行う取引です。M&Aでは、特定の相手と一対一で条件を話し合う進め方も「相対方式」と呼ばれます。
売り手と買い手が直接条件を話し合い、相対取引で株式の売買価格を決める。
間違えやすい点金融商品の市場外取引を表す「相対取引」と、複数の買い手を競わせる入札に対するM&Aの「相対方式」は、着目点が違います。仲介者が間に入っていても、当事者間で個別に条件を決めることはあります。
ITデューデリジェンス
あいてぃーでゅーでりじぇんす
買収前に、相手企業の業務システムや情報管理、ITの運用体制などを調べることです。古いシステムの更新費用、情報漏えいへの備え、買収後も使い続けられるかなどを確認し、想定外の出費や業務停止のリスクを見つけます。
ITデューデリジェンスで、親会社から切り離した後も販売管理システムを使えるか確認する。
間違えやすい点財務DDが決算の数字などを調べるのに対し、IT DDは業務を動かすシステムや運用を調べます。ウイルス検査だけではなく、買収後に必要な更新・分離・統合の費用や体制も確認します。
出典
PwC Japan「ITデューデリジェンス」 ↗
買収後のIT投資・コスト、事業継続リスク、IT資産の調査
太陽グラントソントン「ITデューデリジェンス」 ↗
IT環境・IT組織・ITセキュリティ、スタンドアロン化の影響
IB
あいびー
別名・英字:IB(Investment Bank)/投資銀行
投資銀行、または企業の買収や資金集めなどを支援する業務を指す略語です。証券会社の部門などが、M&Aの助言に加え、株式や社債を発行して資金を集める手伝いも行います。資料によって、組織を指すのか仕事を指すのかを確認します。
海外企業の買収と、そのための資金調達についてIB部門に相談する。
間違えやすい点預金や振込を扱う銀行窓口とは、主な仕事が異なります。また、M&Aの助言だけを意味する言葉でもなく、会社が株式や社債を発行して資金を調達する支援なども含みます。
出典
野村ホールディングス「インベストメント・バンキング」 ↗
債券・株式の引受、M&Aアドバイザリー、買収資金調達の支援
IPO
あいぴーおー
別名・英字:新規株式公開/株式上場
まだ上場していない会社が、新しく株式を証券取引所で売買できるようにすることです。「新規株式公開」ともいいます。株式を発行して会社が資金を集めたり、創業者などが持っている株式を売り出したりすることがあります。
会社を成長させる方法として、他社への売却だけでなくIPOも検討する。
間違えやすい点IPOは株式を取引所で売買できるようにすることです。M&Aは会社や事業を他の相手に引き継ぐ取引で、目的も手続も異なります。IPOをしただけで、必ず特定の会社の子会社になるわけではありません。
アウトイン型M&A
あうといんがたえむあんどえー
別名・英字:OUT-IN型M&A/アウトイン(OUT-IN)型M&A
外国の企業が、日本の企業や事業を買うM&Aです。日本を基準に、買う側が国外(Out)、買われる側が国内(In)にある、という順で読みます。
海外企業が日本の部品メーカーを買収するアウトイン型M&Aを検討する。
間違えやすい点会社や事業を引き継ぐ方法を決める言葉ではありません。株式を買うのか事業を買うのかは別に確認し、外国企業が関わる許認可や投資規制なども調べます。
出典
日本貿易振興機構「ジェトロ対日投資報告2025」 ↗
第2章第5節・M&AをIN-IN、IN-OUT、OUT-INの三類型に分類
赤字会社の売却
あかじがいしゃのばいきゃく
売上より費用が大きく、利益がマイナスになっている会社の株式や事業を、別の人・会社へ売ることです。技術、人材、顧客などを引き継ぐ価値があれば、赤字の会社でも買い手が検討する場合があります。
赤字会社の売却を検討する前に、赤字の理由と買い手が改善できる点を整理する。
間違えやすい点赤字だから必ず売れない、または借金がすべてなくなる、という意味ではありません。売却の可否や価格、借入れ・保証の扱いは個別に確認し、不利な情報も隠さず伝えます。
出典
中小企業庁「2021年版中小企業白書」 ↗
第2部第3章第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用・業績不振企業の相談
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第3版 ↗
第1章・M&Aの流れ、最終契約とクロージング後のリスク
アセットパーチェス
あせっとぱーちぇす
会社の株式ではなく、対象とする事業や資産を選んで買い取る方法です。日本のM&Aでは、事業譲渡による買収を説明するときなどに使われます。設備だけでなく、契約や負債なども、何を引き継ぐのか一つずつ決めていきます。
店舗の事業をアセットパーチェスで取得する案について、設備、賃貸借契約、雇用の引継ぎを確認する。
間違えやすい点株式を買う方法では、会社が持つ資産や契約は原則としてその会社に残ります。アセットパーチェスでは引継ぎ対象を定め、契約相手の承諾や従業員の同意など、個別の手続が必要になる場合があります。
出典
日本公認会計士協会「事業承継支援マニュアル」(経営研究調査会研究報告第60号) ↗
第2章Ⅲ4「第三者売却の取引スキーム」185~186頁:事業譲渡の契約・権利義務の個別移転
厚生労働省「事業譲渡等指針」 ↗
事業譲渡に伴う労働契約の承継に関する基本的事項
アセットファイナンス
あせっとふぁいなんす
不動産などの資産が生む収入や資産の価値に着目して、お金を集める方法です。たとえば賃貸ビルの家賃収入を、返済や投資家への分配の原資とします。会社全体の信用だけに頼らず、資産を資金調達に生かすときに検討します。
保有する賃貸ビルの家賃収入を使ったアセットファイナンスを検討します。
間違えやすい点単に資産を売ることや、担保を付けた借入れだけを意味する言葉ではありません。資産の持ち主、返済の原資、借り手が負う責任の範囲などで仕組みが変わるため、名称だけで判断しません。
出典
日本政策投資銀行「アセットファイナンス(不動産)」 ↗
「アセットファイナンス(不動産)とは」及び「スキーム」
アドバイザー
あどばいざー
別名・英字:M&Aアドバイザー
M&Aを進める売り手や買い手に、助言や実務の支援をする人・会社です。相手探しや交渉を手伝う人のほか、法律、会計、税金などの専門家もいます。「アドバイザー」という肩書だけでは、誰のために何をするのかまでは分かりません。
会社売却の進め方と候補先探しについて、M&Aアドバイザーに相談する。
間違えやすい点売り手と買い手の間に立つ「仲介」と、一方の依頼者を支援する「FA」では立場が異なります。また、相手探しを頼めば法律や税金の確認もすべて含まれるとは限りません。立場と仕事の範囲を契約で確かめます。
アドバイザリー
あどばいざりー
専門知識を使い、依頼者が判断できるように助言や支援をする業務です。M&Aでは、相手探し、価格や取引条件の検討、交渉の準備、契約や実行までの段取りなどを支えます。依頼する内容は、専門家の得意分野や契約によって違います。
買収を進める際、価格の検討と相手との交渉支援をアドバイザリー業務として依頼する。
間違えやすい点助言を受けても、買収するかどうかを決めるのは依頼者です。アドバイザリーという言葉だけで、融資、法律相談、税務申告なども含むとは限らないため、依頼範囲と役割を契約で確認します。
出典
日本政策投資銀行「M&Aアドバイザリーサービス」 ↗
「M&Aアドバイザリーサービスとは」「M&AプロセスとDBJによるM&Aアドバイザリーサービスの提供体制」
アドバイザリー契約
あどばいざりーけいやく
M&Aを手伝う人や会社に、どの仕事を、いくらで頼むかなどを決める契約です。相手探し、価格の検討、交渉の支援など、依頼する範囲を具体的に定めます。契約の名称だけで、支援する側の立場や仕事内容が全部決まるわけではありません。
支援する立場、仕事の範囲、料金が発生する時点を確かめて、アドバイザリー契約を結ぶ。
間違えやすい点株式や事業を売買する契約ではなく、支援を依頼するための契約です。手数料の計算方法や最低額、途中でやめる条件、契約終了後に取引した場合の報酬、他社へ相談できる範囲も確認します。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第3版 ↗
第1章Ⅱ3(2)仲介者・FAの選定及び仲介契約・FA契約の締結/第2章・専任条項、テール条項
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」 ↗
参考資料6・仲介契約/FA契約締結時のチェックリスト
アナジー効果
あなじーこうか
会社や事業を組み合わせた結果、別々に運営していたときの合計より、成果や価値が小さくなってしまうことです。統合で社員が離職したり、仕事が混乱したりすることなどが原因になります。
買収後の顧客離れや社員の退職が、アナジー効果につながっていないか確認する。
間違えやすい点組み合わせによってよい効果が出るシナジーと反対の意味です。買収代金が高すぎて損をすることだけでなく、事業を一緒にすることで生じる悪い影響に着目します。
出典
野村総合研究所「シナジー/アナジー」 ↗
統合による価値の増減とPMI
アフターM&A
あふたーえむあんどえー
M&Aが成立した後の期間や、そこで必要になる取組を広く指す呼び方です。事業の引継ぎ、社員や取引先との関係づくり、経理の整備、契約上の後処理などを進めます。
アフターM&Aの計画として、経営体制と取引先への説明、残る契約手続を整理する。
間違えやすい点法令で範囲が一つに決まった用語ではありません。統合やすり合わせを意味するPMIと重なる部分がありますが、文脈によっては保証解除や代金の後払いなどの処理も含めて使われます。
出典
中小企業庁「中小PMIガイドライン」 ↗
M&A成立後の事業継続・成長に向けた統合やすり合わせ
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第3版 ↗
第1章・M&Aの流れ、最終契約とクロージング後のリスク
アメリカンオプション
あめりかんおぷしょん
決められた期限までの期間内であれば、原則いつでも、契約で定めた価格で買う・売る権利を使えるオプションです。オプションは、将来の取引をする権利を決めた契約のこと。いつ権利を使える契約かを区別するための呼び名です。
このアメリカンオプションは、期限の前にも買う権利を使える契約です。
間違えやすい点米国の会社や米国市場だけの取引という意味ではありません。満期日にだけ権利を使えるヨーロピアンオプションと区別します。実際に行使できる日時や条件は、個々の契約や商品のルールで確認します。
出典
日本取引所グループ「アメリカンタイプ」 ↗
用語の解説本文
アライアンス
あらいあんす
別々の企業が、共通の目的のために協力することです。販売先を紹介し合う、技術を共同開発する、商品を一緒に作るなど、協力の形はいろいろあります。
海外市場に進むため、現地企業と販売面のアライアンスを結ぶ。
間違えやすい点協力することが、相手の会社を買うことを意味するわけではありません。株式を持ち合う場合も持たない場合もあり、仕事の分担、費用、成果の扱いを契約で決めます。
出典
中小企業庁「2020年版中小企業白書」 ↗
第2部第1章第6節 外部連携・オープンイノベーションの推進
アンゾフの成長マトリクス
あんぞふのせいちょうまとりくす
別名・英字:アンゾフの製品・市場成長マトリックス
事業の成長方向を、「商品」と「お客さん・市場」が今までと同じか、新しいかで整理する枠組みです。既存市場を深める、新市場へ進む、新商品を作る、両方を新しくする、の四方向に分けます。
買収で新しい商品を得るのか新しい市場へ進むのかを、アンゾフの成長マトリクスで整理する。
間違えやすい点どの方向なら必ず成功するかを決める表ではありません。方向を整理した後に、必要な人材・資金や、実現する方法を考えます。
出典
中小機構J-Net21「アンゾフの成長マトリックス」 ↗
市場・製品を既存と新規に分ける四つの成長方向
ESOP
いーそっぷ
従業員が自社の株式を持ち、株価上昇などによる利益を受けるための制度を指します。日本では、財産を預かって管理する信託の仕組みを使い、一定の条件を満たした従業員に株式を渡す制度などがあります。国や制度により具体的な仕組みは異なります。
ESOPを導入し、従業員へ自社株式を交付する条件を定める。
間違えやすい点従業員が会社を買い取るEBOとは同じ意味ではありません。また、従業員が給与から資金を出し合う一般的な持株会とも、資金の出し手や株式を渡す条件が異なる場合があります。
EPS
いーぴーえす
別名・英字:1株当たり当期純利益/一株当たり当期純利益
会社が一定期間に稼いだ最終的な利益を、普通株式1株当たりに直した金額です。Earnings Per Shareの略で「1株当たり当期純利益」といいます。会社全体の利益が増えたかだけでなく、1株分の利益の変化を見るために使います。
増資で株数が増えるので、利益総額だけでなくEPSがどう変わるかも確認します。
間違えやすい点配当として必ずもらえる金額ではありません。通常は、その期間の平均株式数から会社自身が持つ株式を除いて計算します。利益が増えても株数がさらに増えると、EPSが下がることがあります。
出典
日本取引所グループ「株価検索―はじめての方へ―」 ↗
主要項目の説明:一株当たり当期純利益
企業会計基準委員会「企業会計基準第2号 1株当たり当期純利益に関する会計基準」 ↗
第12・14・17項:普通株式に係る利益、期中平均株式数、自己株式の控除
EBO
いーびーおー
別名・英字:従業員買収
従業員が、自分たちの働く会社の株式や事業を買い取ることです。後継者がいない会社で、仕事を理解している従業員が事業を引き継ぐ方法の一つになります。買収資金の用意と、その後の経営体制を考える必要があります。
従業員がEBOで会社の株式を取得し、オーナーから事業を引き継ぐ。
間違えやすい点現経営陣によるMBOと、買い手が誰なのかを分けて覚えます。従業員が福利厚生の一環で自社株を少しずつ保有することと、事業を買い取って引き継ぐことも同じではありません。
出典
中小機構J-Net21「事業承継をサポートする仕組み」 ↗
役員・従業員承継/MBO・EBO
EBITDA
いーびっとだー
別名・英字:イービッダー/イービットディーエー
借入金の利息、税金、建物や設備などの取得費用を使用期間に分けて計上する費用を差し引く前の利益です。資金の借り方や設備投資の時期による差をある程度除き、事業の稼ぐ力を比べるときに使います。
売上だけで決めず、EBITDAも確認して本業の稼ぐ力を比べましょう。
間違えやすい点現金そのものではありません。売掛金の回収や設備の購入によるお金の動きは別に確認します。計算や一時的な損益の除き方が会社ごとに違うこともあるので、比較前に定義をそろえます。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「EBITDA」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
EBITDAマルチプル
いーびっとだーまるちぷる
別名・英字:EV/EBITDA倍率
会社の事業などの価値を示すEVが、EBITDAの何倍かを見る倍率です。式は「EV÷EBITDA」。EBITDAは利息・税金・設備などの取得費用を分けて計上する費用の控除前の利益で、似た会社の価格水準を比べる材料になります。
同業の取引とEBITDAマルチプルを比べ、今回の価格が高い理由を確かめます。
間違えやすい点EV/EBITDA倍率も同じ指標を指します。EVは株式代金と異なり、借入金や現預金の扱いをそろえる必要があります。「この年数で必ず投資を回収できる」という倍率ではなく、設備投資や税負担なども別に見ます。
EV
いーぶい
別名・英字:企業価値
会社の事業などを一体として、いくらの価値があるか金額で表したものです。資金を貸す銀行などと株主の両方の立場から見る価値で、M&Aの価格検討に使います。Enterprise Valueの略で、日本語では企業価値といいます。
提示されたEVから株式の売却代金を考えるため、借入金と現預金の扱いを確認します。
間違えやすい点株主が受け取る株式代金と同じではありません。株式価値に借入金などを加え、現預金を引いてEVを示す資料もあります。事業外の資産を含めるかなど、資料ごとの定義をそろえて比較します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「企業価値」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
EVA
いーぶいえー
別名・英字:経済付加価値/経済的付加価値
税金を考慮した事業の利益から、その事業に使った資金のコストを差し引いた金額です。資金のコストには、借入金の利息だけでなく、株主が期待する利益も含めて考えます。資金を預けた人の期待を超える価値を生んだかを見る指標です。
会計上は黒字でも、資金のコストを考えたEVAがプラスか確認します。
間違えやすい点最終利益がプラスならEVAも必ずプラスになるわけではありません。Economic Value Addedの略で、経済的付加価値と呼びます。資金のコストの見積りで結果が変わり、株価そのものを示す数値ではありません。
出典
Stern Value Management「Proprietary Tools」 ↗
EVA®:算式 NOPAT − WACC × Capital
一橋大学大学院経営管理研究科「EVA」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
異業種参入
いぎょうしゅさんにゅう
今までとは違う業種の事業を始めることです。自分たちで新しい事業を作る方法も、すでにその業種で事業をする会社を買う方法もあります。
食品会社が介護事業を買収し、異業種参入を進める。
間違えやすい点同じ業種で店や営業地域を増やすこととは区別します。得意分野が違うため、買っただけで運営できるとは限らず、人材や許認可、顧客への対応などを確かめます。
出典
中小企業庁ミラサポplus「事例から学ぶ!新事業展開」 ↗
異分野への新事業展開の考え方。税制や補助制度の数値は本項目に含めない
中小企業庁「2025年版中小企業白書」 ↗
第2部第2章第3節 スケールアップに向けた投資行動と海外展開
意見表明報告書
いけんひょうめいほうこくしょ
公開買付けの対象になった会社が、その買付けに賛成か反対かなどの意見と、その理由を示す法定の開示書類です。株主が自分の株式を売るかどうかを考える材料になります。公開買付者に対する質問などが記載される場合もあります。
公開買付価格への賛同理由を知るため、対象会社の意見表明報告書を読む。
間違えやすい点公開買付届出書は、買う側が買付条件などを示す書類です。意見表明報告書は、買われる会社側の見解を示します。書類が提出されたこと自体が、株主全員の売却への同意を意味するわけではありません。
出典
金融商品取引法(2026年3月31日時点) ↗
第27条の3第2項/第27条の10第1項・第2項
金融庁「公開買付けに関するQ&A等の改正」関連資料(2025年7月4日) ↗
対象者の意見の内容・根拠・理由と、公開買付届出書・意見表明報告書の関係
発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令 ↗
第25条(対象者の意見表明等)第1項・第2項
意向表明書
いこうひょうめいしょ
別名・英字:LOI
買い手候補が売り手へ、「このような条件で買いたい」と伝える書面です。希望価格、買う方法、調査の進め方、予定日程などを書き、買収を検討する意思と条件を示します。まだ調査前であれば、その時点の情報を基にした提案になります。
買い手候補が、希望価格と買収後の運営方針を記した意向表明書を提出する。
間違えやすい点提出しただけで、売り手も価格に合意したり、買収が完了したりするわけではありません。基本合意書とは目的や使い方が異なり、LOIという英語も資料によって指す書面が違います。守る義務があるかは、名前ではなく内容から確認します。
一次情報
いちじじょうほう
M&Aの実務では、詳しい資料を開示する前に示す、会社名などを伏せた初期の案件情報を「一次情報」と呼ぶ場合があります。業種や大まかな規模などを伝え、買い手候補が検討を始める材料にします。
仲介会社から一次情報を受け取り、関心があれば秘密保持契約を結んで詳しい資料を確認する。
間違えやすい点この用法では、ノンネームシートに近い意味です。一方、調査や報道では、本人への聞き取りや元の記録などを「一次情報」と呼びます。何の場面で使われているかを確認し、初期の案件資料だけで内容が裏付け済みとは考えないようにします。
出典
ストライク「一次情報」 ↗
M&A実務における匿名の初期案件情報という用法を確認(本文L165〜169)。説明文は独自に作成
日本政策金融公庫「事業を譲り受けたい方」 ↗
2.ノンネームシートの確認〜詳細資料による検討(匿名情報、秘密保持契約後の詳細開示)
内閣府「防災の動き」広報ぼうさい第109号 ↗
一般的な情報調査における元の情報源という用法
移転価格税制
いてんかかくぜいせい
海外の関連企業との取引を通じて、日本で課税される利益が海外へ移ることを防ぐ税制です。独立した会社同士なら成立する価格を基準に、取引の所得を計算します。この基準となる価格を「独立企業間価格」といいます。
海外子会社との商品売買や利用料が、移転価格税制上適切かを調べる。
間違えやすい点会社を移転したときの税金という意味ではありません。海外の関連企業との間の値付けの問題です。どの価格が適切かは、取引の内容や各社の役割・負担するリスクなどから検討します。
出典
財務省「移転価格税制の概要」 ↗
制度の概要/独立企業間価格による所得の計算
医療法人の出資持分
いりょうほうじんのしゅっしもちぶん
持分のある医療法人で、出資者が持つ財産上の権利です。法人を辞めるときの払戻しや、解散して残った財産の分配などに関わります。すべての医療法人にあるわけではなく、株式会社の株式とは別の仕組みです。
医療法人の引継ぎでは、出資持分の移転と、社員・役員の交代を分けて確認する。
間違えやすい点持分を多く取得しても、その割合どおりに投票権を得るわけではありません。医療法人の「社員」は運営上の決定に参加する人で、従業員の意味でも、出資持分そのものでもありません。
インアウト型M&A
いんあうとがたえむあんどえー
別名・英字:IN-OUT型M&A/インアウト(IN-OUT)型M&A
日本の企業が、外国の企業や事業を買うM&Aです。日本を基準に、買う側が国内(In)、買われる側が国外(Out)にある、という順で読みます。
日本の会社が海外の販売会社を買収するインアウト型M&Aを進める。
間違えやすい点外国企業が日本企業を買うアウトイン型とは、買う側と買われる側が逆です。買収先の国の制度や通貨、雇用、税金などの違いを確認する必要があります。
出典
日本貿易振興機構「ジェトロ対日投資報告2025」 ↗
第2章第5節・M&AをIN-IN、IN-OUT、OUT-INの三類型に分類
インイン型M&A
いんいんがたえむあんどえー
別名・英字:IN-IN型M&A/インイン(IN-IN)型M&A
日本の企業どうしで行うM&Aです。買う側も買われる側も国内(In)にあるため、このように呼びます。国内の会社が別地域の同業会社を買う場合などが当たります。
地方の会社が別の国内企業を買収する案件を、インイン型M&Aに分類する。
間違えやすい点国内どうしでも、会社を買うか事業を買うか、株式を何割買うかで手続は異なります。この分類だけで、取引が簡単か、許認可の確認が不要かまで判断することはできません。
出典
日本貿易振興機構「ジェトロ対日投資報告2025」 ↗
第2章第5節・M&AをIN-IN、IN-OUT、OUT-INの三類型に分類
インカムアプローチ
いんかむあぷろーち
別名・英字:Income Approach/インカム・アプローチ
会社や事業が、これからどれだけ利益やお金を生みそうかに注目して、価値を見積もる考え方です。過去にいくらもうかったかだけでなく、今後の見通しを使います。将来のお金を、受け取るまでの時間や見通しの不確かさも考えて、今の価値に換算する方法などがあります。
会社の将来の事業計画を基に、インカムアプローチで買収対象の価値を検討する。
間違えやすい点代表的な方法が、将来の現金の出入りを予測するDCF法です。インカムアプローチは考え方の分類、DCF法はその中の具体的な計算方法です。予測や前提が違えば評価額も変わり、その額がそのまま売買価格になるとは限りません。
出典
中小機構J-Net21「会社を売却する際、売却価格をどのように考えたらよいでしょうか。」 ↗
DCF法とインカムアプローチ・事業計画と取引価格の関係
インカムゲイン
いんかむげいん
株式の配当金や債券の利息など、資産を持っている間に得る収入です。資産を売らずに保有することで、どのような収入が見込めるかを考えるときに使います。投資全体の損得を見るには、保有資産の値動きや費用も合わせて確認します。
株式を売った差益と、保有中に受け取った配当金のインカムゲインを分けて確認します。
間違えやすい点資産を売ったときの値上がり益であるキャピタルゲインと区別します。配当金は必ず支払われる約束ではなく、収入があっても資産価格の下落で損失になる場合があります。収入だけで投資全体の利益は決まりません。
インサイダー取引
いんさいだーとりひき
株式が市場で売買される上場会社の買収など、まだ公表されていない重要な情報を、仕事などを通じて知った関係者らが、公表前にその株式などを売買する、法令で禁止された取引です。会社の社員に限らず、外部の取引先や情報を受け取った人も対象になり得ます。
未公表の買収情報を知ったため、その会社の株式売買を行わず、社内の情報管理担当に確認する。
間違えやすい点秘密を漏らさないことと、自分が取引してよいことは別です。「この情報でもうけるつもりはなかった」だけでは、規制対象から外れません。また、他人に利益を得させる目的などで情報を伝えたり、取引を勧めたりする行為にも別の規制があります。
出典
日本取引所グループ「インサイダー取引規制」 ↗
会社関係者・情報受領者、未公表重要事実に基づく売買の規制
証券取引等監視委員会「取引推奨規制を知っていますか?」 ↗
令和6年度版の監視委コラム/情報伝達・取引推奨規制
証券取引等監視委員会「市場へのメッセージ」2026年1月23日 ↗
業務委託先等の非上場会社役職員にも規制対象となる例
インフォメーション・メモランダム
いんふぉめーしょんめもらんだむ
別名・英字:IM/企業概要書
売却する会社の事業内容、業績、組織、取引先などを買い手候補に伝える説明資料です。略してIM、日本語では企業概要書と呼びます。通常は秘密を守る契約を結んだ後に渡し、買い手が詳しい検討に進むための材料にします。
秘密保持契約を結んだ買い手候補に、インフォメーション・メモランダムを渡す。
間違えやすい点社名を伏せて関心を確かめるノンネームシートより、具体的な情報を載せます。ただしIMは会社説明の資料であり、その数字や説明がすべて調査済みという意味ではありません。買い手は内容を確かめます。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
用語集「企業概要書(IM、IP)」「ノンネーム・シート」
インプライドボラティリティ
いんぷらいどぼらてぃりてぃ
売買されているオプションの価格から逆算した、対象の株価などの変動の大きさを表す数値です。市場が先々どの程度の値動きを織り込んでいるかを知る手掛かりになります。予想変動率とも呼ばれ、オプションの価格を比べるときに使います。
株価が落ち着いていても、決算発表前にインプライドボラティリティが上がっています。
間違えやすい点将来その幅で動くという保証や、値上がりする確率ではありません。過去の値動きから計算する変動率とも異なります。逆算に使う価格や計算モデルが違えば数値が変わることもあります。
ウェイバー
うぇいばー
自分が持つ権利を行使しない、または相手に一定の条件を満たすよう求めない、と認めることです。M&Aでは、取引を実行する前に満たす予定だった条件の一部を免除する場面などで使われます。何を免除するのか、範囲を明確にします。
必要書類の一部が未提出のため、契約上その提出を求める買い手がウェイバーを出せるか確認する。
間違えやすい点すべての義務を無条件でなくす意味ではありません。誰がどの権利・条件を放棄するかを確認します。契約当事者が合意しても、法律上必要な許可などを自由に省略できるわけではありません。
出典
ベネッセホールディングス「株式併合並びに単元株式数の定めの廃止及び定款の一部変更に関するお知らせ」(2024年3月27日) ↗
7頁:公開買付け開始の前提条件の充足又は公開買付者による放棄に関する実例
公正取引委員会「他の競争当局との情報交換のためのウェイバー(秘密性の権利放棄)」 ↗
情報交換に関する秘密性の権利放棄という別の使用場面
売掛債権
うりかけさいけん
商品を売ったりサービスを提供したりした後に、相手から代金を受け取る権利です。後払いの取引で、まだ回収していない売上代金を受け取る権利と考えると分かりやすくなります。決算書では「売掛金」などの名前で表れます。
買収前の調査で、売掛債権の相手先・支払期限・回収見込みを確認する。
間違えやすい点売上を計上したことと、お金が入ったことは同じではありません。権利があっても相手が払えない場合があるため、残高だけでなく長期未回収や貸倒れの可能性も調べます。
売り手価値
うりてかち
売り手の立場から、その会社や事業にどれだけの価値があるかを見積もったものです。将来の利益の見通しや、自分たちで事業を続ける場合の価値などが、売却条件を考える材料になります。
売り手価値の根拠となる事業計画を整理し、買い手の見方との違いを話し合う。
間違えやすい点売り手の希望額が、そのまま公正な評価額や成立価格になるわけではありません。買い手が見込む価値とも区別し、どの前提で計算した金額なのかを確認します。
出典
かえでファイナンシャルアドバイザリー「売り手価値」 ↗
Seller’s Valueという用語の用例。価格・価値の説明は中小M&Aガイドラインとも照合
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第3版 ↗
第1章・M&Aの流れ、最終契約とクロージング後のリスク
売渡請求
うりわたしせいきゅう
株式を持つ人に対し、その株式を売り渡すよう求めることです。例えば、一定の強い支配関係を持つ株主から少数株主へ請求する制度や、相続で株式を得た人に会社が請求する制度があります。どの制度の話かを先に確かめます。
株式を集約する方法として、売渡請求を利用できる条件と価格の決め方を確認する。
間違えやすい点買いたい人なら誰でも、一方的に売却を強制できるわけではありません。請求する人、対象株式、会社の承認、価格についての手続などは、利用する制度ごとに異なります。
営業権
えいぎょうけん
関連する表記:のれん
会社や店が積み重ねてきた信用、顧客との関係、技術や運営の工夫などによって、利益を生む力の価値を表す言葉です。M&Aでは「のれん」という意味で使われることがあります。
事業の価格を考える際、設備だけでなく顧客基盤などの営業権の価値も検討する。
間違えやすい点営業するための許可や免許のことではありません。会計上の「のれん」を資産として記録するかは取得方法などによって決まり、自社の評判を好きな金額で帳簿に載せてよいわけではありません。
出典
国税庁・税務大学校論叢「営業権の意義」 ↗
営業権を生む名声・取引関係などの超過収益力の考え方。引用判例の旧条文や償却年数は本項目では使用しない
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第3版 ↗
第1章・M&Aの流れ、最終契約とクロージング後のリスク
営業譲渡
えいぎょうじょうと
会社が営む事業を、別の人や会社へ譲り渡すことを指す言葉です。昔の会社法制や過去の契約書などで使われ、現在の会社法では通常「事業譲渡」という用語で説明します。設備や取引先との契約など、何を引き継ぐかを決めます。
過去の営業譲渡契約書を読み、譲渡対象の店舗・設備・契約の範囲を確認する。
間違えやすい点株式を譲り渡して株主を変える取引とは異なります。事業譲渡では、契約・従業員・許認可などの引継ぎをそれぞれ確認し、「営業」という呼び名だけで一切が自動的に移ると考えないようにします。
ADR
えーでぃーあーる
別名・英字:裁判外紛争解決
裁判の判決による解決とは別の方法で、もめごとの解決を目指す仕組みです。第三者が間に入る話合いや仲裁などがあります。M&Aでは契約をめぐる争いの解決方法を考えるときに登場し、裁判外紛争解決手続とも呼ばれます。
契約をめぐって争いが起きた場合、裁判のほかADRを利用できるか確認しましょう。
間違えやすい点事業再生ADRは、経営が苦しい会社が第三者の関与の下で債権者と再建を話し合う制度です。また、証券の文脈のADRは「米国預託証券」という別の意味なので、前後の話で区別します。
出典
法務省・かいけつサポート「制度について」 ↗
「裁判外紛争解決手続(ADR)について」
経済産業省「事業再生ADR制度の概要(令和7年度)」 ↗
制度概要
日本取引所グループ「ADR」 ↗
用語の解説本文
益金
えききん
法人税を計算するときに、収入・収益側へ数える金額です。商品を売った売上や、資産を売った収入などが代表例です。法人税の対象となる所得は、原則として益金から、税務上の費用に当たる「損金」を引いて計算します。
会計上の利益に税務上の調整を加え、益金と損金から課税所得を計算する。
間違えやすい点益金は、銀行口座へ入金されたお金の総額ではありません。また、費用を引いた後の利益そのものでもありません。会計の収益と税務の益金は一致しない部分があります。
益金不算入
えききんふさんにゅう
法人税の計算で、ある収益の全部または一部を、益金に数えない取扱いです。会計上は収益に入っていても、税務上は取り除く場合があります。例えば、法人が受け取る配当には、一定の範囲を益金へ含めない制度があります。
子会社から受け取った配当について、益金不算入となる範囲を確認する。
間違えやすい点収益を帳簿から消すという意味ではありません。会計の記録は残した上で税務の計算を調整します。すべての配当が一律に全額対象になるわけでもなく、株式の保有関係などの要件を確認します。
出典
財務省「受取配当等の益金不算入制度」 ↗
制度趣旨/受取法人段階での税負担の調整。保有割合の個別数値は本項目では使用しない
エキゾチックオプション
えきぞちっくおぷしょん
将来、決めた価格で買う・売る権利に、標準的な形とは異なる条件を加えたオプションの総称です。期間中の値動きや複数の価格を使って受取額を決めるものなどがあります。必要な取引やリスクに合わせ、細かい条件を設けるときに使われます。
平均価格を使うエキゾチックオプションなので、満期日の価格だけでは受取額を判断できません。
間違えやすい点一つの決まった商品名ではありません。どんな条件で権利が生じる・消えるか、支払額がどう決まるかは契約次第です。「複雑だから必ず高収益」「必ず割高」と考えず、条件ごとの損益を確認します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「オプション」 ↗
「さらに詳しく」のオプションの種類・プレーンバニラとエキゾチックの説明
大阪証券取引所「デリバティブ実践講座・エキゾチック・オプションズ」 ↗
表2「エキゾチック・オプションの分類」
エクイティファイナンス
えくいてぃふぁいなんす
別名・英字:エクイティーファイナンス
会社が株式を発行するなどして、投資家に株主になってもらう形でお金を集めることです。借入れと違い、原則として決まった期日に元本を返す約束はありません。設備投資や買収などに使う資金を、出資として集めるときに検討します。
買収資金の一部は借入れに加え、株式発行によるエクイティファイナンスで用意します。
間違えやすい点返済がないから負担もない、という意味ではありません。株数が増えると既存株主の持分割合や議決権に影響します。また、社長が自分の株式を売るだけなら、通常、売却代金は社長に入り会社の資金調達とは別です。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「エクイティ・ファイナンス」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
エクイティロールオーバー
えくいてぃろーるおーばー
会社を売る人が、買収後も買い手側の会社などの株式を持ち、事業の成長に投資を続ける仕組みです。売却代金の一部を再出資する方法のほか、保有株式を買収用の会社の株式へ置き換える方法もあります。必ず一度現金を受け取るわけではありません。
売却後も成長に関わりたいので、代金の一部をエクイティロールオーバーで再出資します。
間違えやすい点将来の業績に応じて売却代金を追加で受け取るアーンアウトとは異なり、出資した株式の値下がりも引き受けます。この名称だけで税金の支払いを先延ばしにできるわけではなく、実際の取引内容で判断します。
出典
米国SEC公開資料「Rollover and Contribution Agreement」(2022年10月31日) ↗
RECITALS及びSection 1.1。保有株式を買収用会社へ拠出して新株を取得する実例。米国の個別契約であり、日本の税務上の取扱いを示す資料ではない
エグジット
えぐじっと
創業者や投資家が、持っている株式を売るなどして、事業に投じたお金や成長による利益を回収することです。M&Aで株式を売る方法や、上場後に株式を売る方法などがあります。会社を育てた先の「出口」という意味で使います。
創業時から、将来のM&Aや上場後の株式売却をエグジットの選択肢として検討する。
間違えやすい点エグジットは、必ずしも会社を廃業することではありません。経営者や株主が替わっても事業は続く場合があります。また、上場しただけで全株式がお金に換わるわけではなく、売却等によって回収します。
出典
経済産業省「令和5年度 スタートアップの成長に向けた実態調査」報告書 ↗
「エグジットとしてのM&A」を実現するポイント・IPOとM&Aの比較
エグゼキューション
えぐぜきゅーしょん
M&Aの候補が具体化した後、調査、価格や契約条件の交渉、必要な手続の準備などを進め、取引を実現させる実務を指す言葉です。候補先を見つけるだけでなく、合意できる内容にまとめて実行へつなげる段階と考えると分かりやすくなります。
候補先との交渉が具体化したため、エグゼキューションを担当するチームを組む。
間違えやすい点オリジネーションは取引の機会や候補を生み出す仕事、エグゼキューションは具体的な案件を進める仕事です。支援会社によって区切り方は異なり、契約書への署名や代金の決済だけを指すとは限りません。
出典
日本政策投資銀行「M&Aアドバイザリーサービス」 ↗
「M&AプロセスとDBJによる提供体制」の図:戦略立案、オリジネーション、エグゼキューション、クロージング
エスクロー
えすくろー
売り手や買い手とは別の第三者に代金などを預け、決めた条件が満たされたことを確認してから相手に渡す仕組みです。M&Aでは、後日発生する補償に備えて代金の一部を一定期間預けるなど、約束どおりの受渡しを確保するために使います。
契約違反に対する補償に備え、売却代金の一部をエスクローで預ける条件を協議する。
間違えやすい点買い手が代金を分割して直接払うだけなら、通常はエスクローとは呼びません。第三者への預託と払出し条件が要点です。何にでも使える保証ではなく、預け先、期間、払出し条件を決めます。
出典
エスクロー・エージェント・ジャパン「新規上場申請のための有価証券報告書」 ↗
「事業の内容」エスクロー業務の定義、第三者による金銭の保全と決済の説明
経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」 ↗
エスクローサービス:第三者による代金の預かりと条件確認後の支払い
SPA
えすぴーえー
別名・英字:株式譲渡契約
M&Aでは、株式を売る人と買う人が、株式の売買条件を定める契約を指します。英語のShare Purchase AgreementやStock Purchase Agreementの略です。売る株式、代金、実行日、約束と違うことが分かった場合の対応などを決めます。
SPAで株式の売買価格と、代金支払いまでに満たす条件を確認する。
間違えやすい点秘密を守るNDAや、交渉途中の基本合意とは役割が違います。また、署名する日と実際に株式・代金を受け渡す日は同日とは限らないので、実行条件を確認します。
出典
経済産業省・中小企業庁「中小M&Aガイドライン参考資料7」 ↗
(4)株式譲渡契約書サンプル
SPC
えすぴーしー
別名・英字:特別目的会社
特定の目的のために用意する会社です。M&Aでは、対象会社の株式を買うための受け皿として設立し、出資や借入れを集めることがあります。株式の売買契約に書かれた買い手が、実際に事業をしている会社とは別のSPCである場合もあります。
買収用のSPCを設立し、その会社で資金を調達して対象会社の株式を取得する。
間違えやすい点SPCという名前だけで会社の法的な種類が決まるわけではありません。株式会社や合同会社など、どの形を使い、誰が出資・保証するかを個別に確かめます。
出典
中小機構J-Net21「事業承継をサポートする仕組み」 ↗
特別目的会社(SPC)を用いる承継
XBRL
えっくすびーあーるえる
会社が公表する財務情報などを、コンピュータで読み取りやすくするための国際的なデータ形式です。売上高や利益などの数値に、何の項目か、どの期間の情報かといった目印を付けることで、比較や集計に使いやすくします。
EDINETからXBRLデータを取得し、同業他社の財務数値を集計する。
間違えやすい点PDFは主に人が見るための表示形式、XBRLは項目の意味をコンピュータでも扱いやすくする仕組みです。XBRLで取得できた数字でも、会社や年度による項目の違いを確かめて比較します。
EDINET
えでぃねっと
金融庁が運営する、会社の開示書類をインターネットで調べられる仕組みです。有価証券報告書などを通じて、事業の内容、業績、大株主、抱えるリスクなどを確認できます。M&Aでは、相手企業や同業他社を調べる入口になります。
EDINETで有価証券報告書を開き、対象会社と同業他社の事業内容や利益を比較する。
間違えやすい点会社のホームページとは別の、公的な開示書類の閲覧先です。ただし、すべての会社が同じ書類を提出しているわけではなく、未上場の中小企業の詳しい情報が必ず見つかるものではありません。
NDA
えぬでぃーえー
別名・英字:機密保持契約/秘密保持契約
相手から教わった情報を外に漏らさず、約束した目的以外に使わないことなどを決める契約です。Non-Disclosure Agreementの略で、日本語では秘密保持契約です。M&Aでは、会社名や詳しい財務資料を開示する前などに締結します。
NDAを結んでから、買い手候補へ非公開の決算書を開示する。
間違えやすい点NDAを結べば、どんな資料でも自由に渡せるわけではありません。何を秘密とするか、誰に見せてよいか、使える目的、契約終了後の扱いなどを契約内容と照らし合わせます。
出典
公正取引委員会・経済産業省「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」 ↗
第2・1 NDA(秘密保持契約)
経済産業省・中小企業庁「秘密保持契約書サンプル」 ↗
第1条(秘密保持義務)
NPV
えぬぴーぶい
別名・英字:正味現在価値
将来入ってくると見込むお金を今の価値に換算し、投資で支払うお金の今の価値を差し引いた金額です。Net Present Valueの略で、正味現在価値ともいいます。回収までの時間や資金のコストを考え、投資する意味があるか検討します。
買収代金だけでなく将来の追加投資も入れ、NPVがプラスになるか計算します。
間違えやすい点将来もらう金額を、そのまま足した数値ではありません。また、NPVがプラスでも利益が保証されるわけではなく、回収額や換算に使う率の予測が変われば結果も変わります。IRRは金額ではなく率で示します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「NPV」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
FA
えふえー
別名・英字:ファイナンシャルアドバイザー
M&Aで、売り手か買い手のどちらか一方と契約し、その依頼者を支援する人や会社です。取引相手探し、条件の検討、交渉の進め方への助言などを行います。何をどこまで依頼できるかは、支援する会社や契約によって異なります。
買い手側のFAに、提示された買収価格と契約条件の検討を依頼する。
間違えやすい点仲介者は売り手と買い手の双方と契約するのに対し、FAは一方との契約に基づいて支援する立場です。「FA」という名前だけで、法律・税務・会計の調査まで全部含まれるとは判断できません。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」(2024年8月) ↗
用語集「FA(フィナンシャル・アドバイザー)/FA契約」「仲介者/仲介契約」
FAS
えふえーえす
別名・英字:ファイナンシャルアドバイザリーサービス
企業の買収や立て直しなどについて、主に財務や会計の面から調査・助言をするサービスを指します。買収先の数字を調べる、会社の価値を見積もる、買収後の統合を手伝うといった仕事があり、そうした専門会社を指す場合もあります。
買収先の決算内容と会社の評価額を確かめるため、FASの専門会社へ相談する。
間違えやすい点FAはM&Aで一方の当事者を支援する立場を表すのに対し、FASは幅広い助言サービスや提供会社を表す言葉です。同じ会社がFA業務も行うことがあり、実際の業務範囲は契約で確認します。
出典
KPMG FAS 公式サイト ↗
支援体制:経営戦略/M&A・PMI/事業再生・事業変革/不正調査等
KPMG FAS「Corporate Finance部門」 ↗
職務内容:M&Aアドバイザリー、企業・事業価値評価
M&A
えむあんどえー
別名・英字:M&A(エムアンドエー)
会社や事業を他の相手へ引き継いだり、複数の会社を一つにまとめたりする取引の総称です。会社の株式を売買する方法や、一部の事業だけを引き継ぐ方法などがあります。事業を成長させたい場合や、後継者を探す場合にも使われます。
後継者がいないため、従業員の雇用を引き継ぐ相手をM&Aで探す。
間違えやすい点M&Aをしても、必ず会社同士が合併するわけではありません。株式を売買しても会社自体は残る場合があります。何を引き継ぐ取引なのかを確かめると、手法の違いを理解しやすくなります。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
第1章「中小M&Aの手法」および用語集「M&A」
M&Aグロース
えむあんどえーぐろーす
他の会社や事業を買うことで、自社やグループの成長を目指す考え方です。顧客、人材、技術、店舗などを引き継ぎ、自力で一からそろえるより早く事業を広げようとします。
自社での出店に加え、地域の同業会社を買うM&Aグロースも検討する。
間違えやすい点自社の人材や技術を育てて成長するオーガニックグロースと対比して使います。買収をすれば必ず成長するという意味ではなく、買収後にどう事業を運営するかまで考える必要があります。
出典
中小企業庁「2025年版中小企業白書」 ↗
第2部第2章第3節 スケールアップに向けた投資行動と海外展開
中小企業庁「中小PMIガイドライン」 ↗
M&A成立後の事業継続・成長に向けた統合やすり合わせ
M&Aシニアエキスパート認定制度
えむあんどえーしにあえきすぱーとにんていせいど
一般社団法人金融財政事情研究会が、M&Aに関する知識や実務能力を持つ人材の育成のために設けている認定制度です。所定の受講条件があり、認定講座を修了したうえで認定試験に合格すると、同会認定の称号が授与されます。
M&Aの支援実務を学ぶため、M&Aシニアエキスパート認定制度の受講条件を確認する。
間違えやすい点中小企業庁が運営する「中小企業M&A実務能力・倫理検定試験」とは、運営主体も受験の仕組みも異なる別制度です。名前が似ていても、講座の修了や合格が今回の検定の合格を意味するわけではありません。
出典
一般社団法人金融財政事情研究会「M&Aシニアエキスパート」 ↗
ご参加のおすすめ/受講資格/認定試験の受験条件・称号の授与
中小企業庁「中小企業M&A実務能力・倫理検定試験」 ↗
運営主体・試験概要
M&Aブティック
えむあんどえーぶてぃっく
M&Aの助言や支援に専門を絞った会社・専門家集団を指す呼び方です。特定の業界や取引規模を得意とする会社、M&Aを専門とする会計事務所などがあります。名前だけで支援の内容や料金が決まるわけではありません。
売却候補先を探すため、自社の業界に詳しいM&Aブティックへ相談する。
間違えやすい点法令で規模や業務範囲が統一された会社の区分ではありません。売り手・買い手の双方を支援する仲介なのか、一方を支援するFAなのか、実際の契約内容を確認する必要があります。
出典
中小企業庁「M&A実施段階の支援機関(マッチング、交渉等)」 ↗
「M&Aの案件規模と主な支援機関(イメージ)」の中小M&Aブティック・M&A特化の会計事務所等
M&A銘柄
えむあんどえーめいがら
買収などの対象になるとの見方から、投資家の関心を集める会社の株式を指す市場での呼び方です。公表済みの案件を指すのか、まだ決まっていない見込みを含むのかは、使われる記事や資料によって異なります。
M&A銘柄という見出しだけで判断せず、会社が公表した買収提案や契約の内容を確認する。
間違えやすい点法令によって一律に認定される区分ではなく、そう呼ばれても買収の成立や株価の上昇は確定しません。M&A支援会社の株式を指す「M&A関連株」とも、記事の文脈を見て区別します。
出典
ストライク「M&A用語集」 ↗
「M&A銘柄」:市場で使われる呼称の用例。法定制度の定義としては扱わない
麻生フオームクリート「公開買付けに係る賛同の意見表明及び応募推奨に関するお知らせ」(2024年12月9日) ↗
1~3頁:実際の公表済み公開買付けにおける当事者・買付条件・成立条件の例
MEBO
えむいーびーおー
会社の経営陣と従業員が一緒に、自分たちの会社の株式や事業を買い取ることです。経営を担う人だけでなく、働く人も買収に参加する点が特徴です。誰がどれだけ出資し、今後の決定をどう行うかを整理します。
経営陣と従業員が共同出資し、MEBOでオーナーから事業を引き継ぐ。
間違えやすい点経営陣が中心のMBO、従業員が中心のEBOとの違いは、買い手として参加する人です。単に従業員へ少量の株式を配る制度とは、取引の目的や規模が異なります。
出典
一橋大学ビジネススクール「MBO」 ↗
MBO・MEBO・EBOの区別
MSCB
えむえすしーびー
別名・英字:転換価額修正条項付新株予約権付社債
株式へ換えるときの価格が、株価の動きに合わせて修正される仕組みを持つ転換社債です。転換社債は、条件に従い株式に換えられる社債のこと。会社の資金調達手段の一つで、後から株数がどれほど増えるかを確認するときに重要になります。
MSCBの転換価格が下がる場合、発行される株数がどれほど増えるか確認します。
間違えやすい点価格が固定された転換社債と区別します。同じ金額でも、株式に換える価格が低くなると株数が増え、既存株主の持分割合が薄まる可能性があります。取引所規則上の「MSCB等」の範囲は、個別の条件も確認します。
出典
東京証券取引所「用語集:MSCB等」 ↗
適時開示実務に関するよくある質問・MSCB等の定義
MOU
えむおーゆー
交渉の途中で、その時点までに双方が確認した考え方や条件を書き留める合意文書です。M&Aでは、価格の目安、今後の調査、交渉の進め方などを整理する基本合意書の名称として使われます。英語のMemorandum of Understandingの略です。
詳細な調査に進む前に、検討中の譲渡条件と交渉日程をMOUで確認する。
間違えやすい点MOUを交わせば売買が確定するとは限りません。一方、秘密保持や他社と交渉しない約束などには、拘束力を持たせる場合があります。文書名だけで判断せず、どの条項が義務になるかを確認します。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」参考資料(用語集) ↗
「基本合意書(LOI、MOU)」
MBI
えむびーあい
外部から経営者を迎え、その経営者が買収に参加して会社の経営を担う方法です。会社の中に適切な後継者がいないときなどに、投資ファンドの出資と、外部の経営人材を組み合わせて引継ぎを検討します。
外部の経営者候補を迎えるMBIで、後継者がいない会社の引継ぎを検討する。
間違えやすい点すでにその会社を経営している人が買うMBOと違い、外部の経営人材が中心になります。人を紹介しただけのケースと、買収・資金調達を伴う取引は区別します。
出典
経済産業研究所「マネジメント・バイアウトにおける経営者・取締役の行為規整」 ↗
MBOの類型/③MBI(Management Buy-In)
MBO
えむびーおー
別名・英字:経営陣による買収
会社の経営陣が、オーナーなどから自分たちの会社の株式や事業を買い取ることです。経営してきた人が、買い手にもなる点が特徴です。必要なお金を用意するため、投資ファンドや銀行の協力を受けることもあります。
現経営陣がMBOで創業者の株式を買い取り、会社の経営を引き継ぐ。
間違えやすい点MBOは「誰が買うか」を表す言葉です。借入れを活用するLBOは「どう資金を用意するか」の話なので、MBOとLBOを組み合わせる取引もあります。
出典
日本政策投資銀行「LBO/MBO」 ↗
MBO(Management Buyout)の説明
MBOファンド
えむびーおーふぁんど
経営陣が会社を買い取るMBOに、資金や経営面の支援を提供する投資ファンドを指す呼び名です。複数の投資家から集めたお金を出資し、経営陣と一緒に会社の成長や事業の引継ぎを進めます。
経営陣だけでは買収資金が足りないため、MBOファンドに共同出資を相談する。
間違えやすい点ファンドからの出資は銀行の借入れとは異なり、ファンドも株主になります。MBO専用の法律上の法人形態という意味ではなく、支援する取引や投資方針を確認します。
出典
日本政策投資銀行「LBO/MBO」 ↗
MBOにおけるバイアウト・ファンドとの共同スポンサー
LBO
えるびーおー
別名・英字:レバレッジドバイアウト
買収する会社が将来生み出すお金や、持っている財産に着目して資金を借り、買収代金の一部に充てる方法です。買い手は自分で出すお金を抑えられますが、買収後に返済を続けられるかが重要になります。
対象会社の将来の収入を見込んで借入れを行い、LBOで買収資金を用意する。
間違えやすい点単に買い手が借金をした取引すべてを、同じ意味でLBOと呼ぶわけではありません。対象会社の収益や財産をどう返済・担保に結び付けるかがポイントです。
出典
日本銀行「LBOファイナンスの動向とリスク管理」 ↗
2024年6月/LBOファイナンスの仕組み・図表5
LBOファイナンス
えるびーおーふぁいなんす
LBOによる買収のために、銀行などから資金を借りる仕組みです。買収対象会社が今後生み出すお金などを返済の支えにするため、売上や利益だけでなく、手元に残るお金と返済日程を調べます。
対象会社の資金計画を基に、銀行とLBOファイナンスの金額・金利・返済条件を協議する。
間違えやすい点LBOが買収方法全体を指すのに対し、こちらは主に資金調達の側面を指します。借入額を増やせばよいわけではなく、業績悪化や金利上昇に耐えられるかも確認します。
出典
全国銀行協会「国内LBOファイナンスの課題に関する報告書(2023年度)」 ↗
LBOファイナンスの概要・返済原資
エンジェル投資家
えんじぇるとうしか
別名・英字:エンジェル
創業して間もない会社などに、自分のお金を出資する個人投資家です。資金を出すほか、経験を生かして経営の相談に乗ったり、取引先を紹介したりする人もいます。会社が育ち、株式を売却できることなどを期待して投資します。
創業初期の事業計画を説明し、エンジェル投資家から出資を受ける。
間違えやすい点融資と違い、株式への出資では約束した期日に元本が返ってくるわけではありません。エンジェル税制という優遇制度もありますが、個人の出資ならすべて自動的に対象になるわけではなく、要件があります。
出典
経済産業省「エンジェル税制のご案内・ガイドライン」(令和6年度版) ↗
「はじめに」:スタートアップへ投資を行う個人投資家、対象企業・個人の要件
黄金株
おうごんかぶ
別名・英字:拒否権付株式
合併などの重要な決定に、その種類の株式を持つ株主の承認も必要とする株式の呼び名です。普通の株主総会で多数が賛成しても、別に必要な承認が得られなければ決定が効力を持たないように設計できます。拒否権付種類株式とも呼ばれます。
黄金株が発行されているため、買収や合併について誰の承認が必要かを確認する。
間違えやすい点金でできた株式でも、必ず高い配当を受けられる株式でもありません。何について拒否できるかは会社の基本ルールである定款で決まるため、すべての決定を無条件に止められるとは限りません。
オーガニックグロース
おーがにっくぐろーす
自社の商品、人材、技術などを育て、売上や利益を伸ばしていくことです。新商品を自社で開発する、営業先を増やす、仕事を効率化するといった成長を指します。
買収だけに頼らず、自社商品の販路拡大によるオーガニックグロースを進める。
間違えやすい点他社の会社や事業を買って広げる成長とは分けて考えます。どちらか一方だけを選ぶ必要はなく、M&Aで得た強みと自社の改善を組み合わせることもあります。
出典
関東経済産業局「中堅・中小企業のための海外M&A」 ↗
用語集・オーガニックグロースとインオーガニックグロースの説明(2026年2月公表)
中小企業庁「2025年版中小企業白書」 ↗
第2部第2章第3節 スケールアップに向けた投資行動と海外展開
オーナー企業
おーなーきぎょう
創業者やその家族など、会社の株式を持つ人が、経営にも強く関わる企業です。株式を持つことによる会社への影響力と、社長などとして経営する役割が近い関係にあります。
オーナー企業の売却では、社長の意向と、ほかの株主の持株状況を確認する。
間違えやすい点小さい会社や非上場会社すべてがオーナー企業とは限りません。また、社長一人で全株式を持つとも限らないため、誰が株式を持ち、誰の同意が必要かを調べます。
出典
中小企業庁「2018年版中小企業白書」 ↗
第1部第4章第2節 企業の統治構造の整備状況・オーナー経営企業
オーバーアロットメント
おーばーあろっとめんと
新規上場や増資などで株式の購入希望が多いとき、証券会社が大株主などから株式を借り、予定分に追加して販売する仕組みです。需要に応じた販売や、その後の株価の安定を図るために使われます。略してOAと書くこともあります。
新規上場で購入希望が多いため、オーバーアロットメントによる追加販売を行います。
間違えやすい点追加販売分がすべて新しく発行される株式という意味ではありません。借りた株式は、市場での買付けや、あらかじめ定めた株式取得の権利の利用などで返します。販売枠を無制限に増やせる制度ではありません。
出典
日本取引所グループ「オーバーアロットメント」 ↗
用語の解説本文
オプション
おぷしょん
将来、決められた価格で株式などを買う、または売る権利を定めた契約です。買う権利をコール、売る権利をプットと呼びます。買い手は権利を得るための代金を払い、値動きへの備えや、将来の売買条件を確保するために利用します。
将来その株式を買えるよう、価格と期限を決めたオプションを契約に入れます。
間違えやすい点権利を持つ側は、条件に従い、使わない選択もできます。一方、権利を与えた側は、相手が使った場合に応じる義務を負います。対象・期限・価格・行使条件を確かめ、単なる売買の約束と区別します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「オプション」 ↗
「回答」:コール・プット、買い手の権利と売り手の義務
オフバランス
おふばらんす
会社の資産や負債の一覧である貸借対照表に、ある資産や取引が計上されない状態をいいます。たとえば保有資産を売却し、会計上も自社の資産から外す場合です。資産を抱える負担や資金の使い方を見直す場面で登場します。
資産を別会社に移す案について、会計上もオフバランスになる条件を確認します。
間違えやすい点書類上の名義を変えれば、自由に帳簿から消せるわけではありません。会計基準に照らして実態を判断します。貸借対照表に載らなくても、契約上の負担やリスク、決算書で説明すべき情報がなくなるとは限りません。
出典
野村総合研究所「オフバランス」 ↗
「オフバランスとは」及び権利・義務の移転に関する説明
親会社
おやがいしゃ
別の会社の経営の決定を支配している会社です。典型的には、子会社の株主が投票する権利の過半数を持っている会社が当たります。ただし、実際の支配関係によって判断する場合もあり、会社の名前が似ているだけでは親会社とはいえません。
買収後は買い手企業が親会社となり、対象会社を子会社として管理する。
間違えやすい点親会社と子会社は、通常は別々の法人です。親会社になっただけで、子会社のすべての契約や借金が自動的に親会社へ移るわけではありません。
出典
会社法 ↗
第2条第3号・第4号(子会社・親会社)
オリジネーション
おりじねーしょん
M&Aにつながる相談や取引の機会を見つけ、具体的な案件の入口をつくる仕事です。会社の課題や売却・買収の希望を聞き、相手候補を探して提案します。まだ取引が決まっていない段階から、双方が検討できる状態へつなげます。
買い手の希望する業種と地域を聞き、候補先を探すオリジネーションを始める。
間違えやすい点候補が具体化した後に調査や条件交渉を進めるエグゼキューションと区別されます。相手候補を紹介できても成約したことにはならず、実施する業務や段階の区切り方は支援会社によって異なります。
出典
日本政策投資銀行「M&Aアドバイザリーサービス」 ↗
「M&AプロセスとDBJによる提供体制」の図:戦略立案とエグゼキューションの間にオリジネーションを位置付け
PAI
ぴーえーあい / 別の読みの関連語
別名・英字:Post Acquisition Integration
Post Acquisition Integrationの略で、会社を買った後に、仕事の進め方や人事、経理、システムなどを整える取組を指す呼び方です。買収時に期待した効果を、実際の成果につなげるために行います。
買収後の引継ぎ計画に、社員の説明や経理の整備などPAIの作業を入れる。
間違えやすい点PMIと近い意味で使われますが、英語の略し方や扱う範囲は資料で確認します。別の法的手続があるわけではありません。このサイトでは英字の関連語として扱い、「あ」から始まる語には数えません。
出典
かえでファイナンシャルアドバイザリー「PAI」 ↗
Post Acquisition Integrationの表記と買収後統合作業の用例
中小企業庁「中小PMIガイドライン」 ↗
M&A成立後の事業継続・成長に向けた統合やすり合わせ


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