M&A用語集|な行
2027年1月・中小企業M&A実務能力・倫理検定試験の学習に
28語。意味・使用例・間違えやすい点をまとめています。
見つかりませんでした。検索語や読みの絞り込みを変えてください。
内部監査
ないぶかんさ
会社の業務や管理の仕組みが適切に働いているかを、調べる対象の部署から独立した立場で点検し、改善点を経営者などへ報告する活動です。違反の発見だけでなく、仕事の進め方やリスクへの対応を良くするためにも行います。
買収後の管理体制を整えるため、内部監査で各部門の経費処理や承認の手順を確認する。
間違えやすい点内部統制は、ミスや不正を防ぎ、業務を適切に進めるための仕組みです。内部監査は、その仕組みや実際の運用などを点検し、改善を促す役割です。日常の担当者が自分の仕事を確認するだけの作業とは区別します。
出典
日本内部監査協会「内部監査基準」(2004年改訂) ↗
[1]内部監査の意義、[2]内部監査の独立性と組織上の位置:公正・独立の立場、内部統制の整備・運用の評価と改善
内部収益率
ないぶしゅうえきりつ
別名・英字:IRR/Internal Rate of Return
投資で出入りするお金について、将来のお金を今の価値に換算した収入と支出が釣り合う割引率です。IRRと略し、正味現在価値(NPV)がゼロになる率を指します。買収などの投資がどの程度の収益率になるかを見込み、必要な収益率と比べるために使います。
買収後に得られる資金を見積もり、内部収益率と必要な収益率を比較します。
間違えやすい点毎年必ず受け取れる利回りではなく、予測する入金・支出の金額と時期に左右されます。投資の規模が違えば、高率でも生み出す価値が大きいとは限りません。率が一つに決まらない場合もあるため、NPVなどと併せて判断します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「IRR」 ↗
内部収益率の定義、投資額とキャッシュフローの現在価値、IRRルール
Aswath Damodaran「Measuring Investment Returns」(NYU Stern) ↗
掲載p.40「Discounted cash flow measures of return」、pp.49〜58:NPVがゼロになる率、複数IRR、投資規模による比較の違い
内部成長
ないぶせいちょう
別名・英字:オーガニックグロース
自社の人材、技術、商品、設備などを生かし、売上や利益を伸ばすことです。オーガニックグロースとも呼びます。商品開発、販売先の開拓、生産性の改善などが例です。M&Aによって他社の事業を取り込む成長と比べ、成長戦略を考えるときに使います。
M&Aだけでなく、既存商品の改良による内部成長も組み合わせて事業を伸ばします。
間違えやすい点社員の人数を増やすことだけを意味しません。少ない人数でも、商品や仕事の仕方を改善して利益が伸びれば内部成長につながります。M&Aによる外部成長と組み合わせることもあり、どちらか一方しか選べないわけではありません。
出典
経済産業省委託「令和3年度中小製造業の競争力強化に向けた協業・連携及び事業再編に関する調査事業」調査報告書 ↗
3「協業・連携、及びM&Aの必要性」及び掲載p.16「成長のパターン別にみたメリット・デメリット」:自社と社外の経営資源の区別
国土交通省委託・野村総合研究所ほか「令和3年度 我が国建設企業のローカル化の推進に向けた調査業務 調査報告書」(2022年3月25日) ↗
掲載pp.102・107〜108「ローカル化の推進手法」:内部成長と外部成長の区別及び相互作用
内部統制
ないぶとうせい
会社の仕事を適切に進め、不正やミスを防ぎ、報告の信頼性や法令順守、財産の保全を支える仕組みです。承認の手順、担当の分担、記録の確認などを日々の業務に組み込みます。M&Aでは、買収対象の管理体制や買収後に改善すべき点を調べるために確認します。
経費の申請と承認を同じ人だけで済ませないなど、内部統制の運用を確認します。
間違えやすい点内部監査は、この仕組みの整備・運用を検討して改善を促す活動です。内部統制は監査部門だけの仕事ではなく、経営者や従業員にも役割があります。仕組みがあっても、不正や誤りを完全に防げる保証はありません。
出典
企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)」(2023年4月7日) ↗
基準Ⅰ.1・3・4及び実施基準Ⅰ.1・4:4つの目的、限界、経営者・内部監査人・その他の者の役割
内部留保
ないぶりゅうほ
会社が得た利益のうち、配当などで社外に出さずに積み重ねてきた部分を指す言葉です。通常は、貸借対照表の純資産にある利益剰余金を中心に捉えます。M&Aでは、過去の利益の蓄積や、会社の財務状況を確認するときに登場します。
内部留保が大きくても、支払いに使える預金が十分にあるかは別に確認します。
間違えやすい点現金の貯金額ではありません。利益を元手に設備や在庫を増やしている場合もあり、利益剰余金と預金残高は一致しません。内部留保が多いだけで、すぐ支払いや配当に使えるお金が多いとは判断できません。
出典
中小企業基盤整備機構 J-Net21「内部留保のメリットとデメリットについて教えてください。」(2025年3月21日) ↗
1(1)貸借対照表でみる内部留保・1(2)利益剰余金:利益の累積と現金・預金との違い
二項モデル
にこうもでる
将来の株価を、一定の期間ごとに「上がる」「下がる」の2通りに分けて、株を買う権利などの値段を計算する方法です。この分岐を何段階も重ね、将来の各場合の権利の価値から、現在の価値を見積もります。
ストックオプションの評価で、株価の上昇・下落と途中で権利を使える条件を二項モデルに織り込む。
間違えやすい点将来の株価が必ず2通りになるという予言ではなく、計算のための仮定です。株価の動く幅や評価期間などを変えると結果も変わります。上昇と下落の確率を、必ず半々に置くわけでもありません。
出典
企業会計基準委員会「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」第11号 ↗
2006年改正版、第2項(1)・5頁:二項モデルの定義。第5〜7項:評価技法と条件の反映。旧制度固有の取扱いは使用しない
2012年問題
にせんじゅうにねんもんだい
2012年ごろ、1947~1949年生まれの団塊の世代が65歳を迎え、会社を率いる人の引退と、次の経営者をどう確保するかが重なって注目された問題です。後継者探しや育成、会社の引継ぎ準備を急ぐ必要があるという、当時の事業承継の課題を表す歴史用語です。
事業承継の2012年問題を取り上げた当時の資料から、後継者の育成に早く取り組む必要性を学ぶ。
間違えやすい点現在の手続期限を指す言葉ではありません。60歳での大量退職に着目した2007年問題や、金融円滑化法が2013年3月末に期限を迎えたこととは区別します。経営者に65歳での引退が義務付けられていたわけでもありません。
出典
みずほ総合研究所「『事業承継の2012年問題』を乗り越えるために」(2012年8月30日、国立国会図書館保存) ↗
本文1頁「1.はじめに」(PDF4枚目):団塊世代の65歳到達、経営者の引退接近と後継者の選定・育成を『事業承継の2012年問題』と呼ぶ箇所。脚注1:オーナー経営者には一般的に退職年齢がない点。原発表元のアンケート調査・分析報告を保存した原資料。
内閣府「平成18年版高齢社会白書」第1章第3節1 企業における就業 ↗
冒頭:1947~1949年生まれの団塊の世代が2007年から一般的な定年年齢60歳へ到達し始める『2007年問題』の説明。
金融庁「中小企業等に対する金融円滑化対策について」 ↗
中小企業金融円滑化法に関する注記:2009年12月4日施行、2013年3月末の期限到来。2012年問題とは別事項として区別するため参照。
二段階買収
にだんかいばいしゅう
会社の株式をまず集め、続いて残りの株主から株式を取得する手続を行う買収方法です。上場会社の完全子会社化では、最初にTOB(価格や期間を示して株式を買い集める手続)を行い、次に残った株主へ金銭を交付して株式を集約する例があります。
TOBに応募しなかった株主の株式も取得するため、二段階買収の二段目の手続を検討する。
間違えやすい点二段目には、株式併合などを使い、少数株主に金銭を交付して株主ではなくする「スクイーズアウト」が用いられます。二段階という名前は、TOBを必ず二回行うという意味ではありません。
出典
日本取引所グループ「公開買付け又は自己株式の公開買付け」 ↗
開示実務STEP2・開示に関する注意事項③「公開買付け後の二段階買収について」
日本取引所グループ「株式の分割又は併合」 ↗
開示義務及びSTEP2・その他の注意事項②:スクイーズアウトとしての株式併合、二段階買収の二段目と端数処理による金銭交付
入札方式
にゅうさつほうしき
複数の買い手候補から、希望する買収価格や条件を提出してもらい、相手を選ぶM&Aの進め方です。オークション方式とも呼びます。候補を絞り込みながら、資料の開示や会社の調査、条件の再提示を進めることがあります。
入札方式で集まった提案を、価格、資金の裏付け、契約条件、買収後の方針から比較する。
間違えやすい点1社ずつ交渉する相対方式と異なり、複数候補の競争を利用します。ただし、最高額を示した会社が自動的に選ばれるわけではありません。参加条件や選び方は案件ごとに定めます。
出典
経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019年6月28日) ↗
3.4.2・35〜36頁、脚注61・63:入札手続(オークション)と対抗提案への過度の接触制限。MBO等を主な対象とする指針であり一般的な法定要件とはしない
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」改訂に関する資料(2023年9月) ↗
74頁前後「基本合意の締結」:入札手続での意向表明書と応諾書。入札時の合意形成を確認する参考で、現行制度の個別義務には使用しない
任意売却
にんいばいきゃく
借入金の返済が難しいときに、銀行などと条件を調整し、担保に入れた不動産を通常の売買で売り、その代金を返済に充てる方法です。借金を完済できない場合には、担保を外すための同意や、売却代金をどう配分するかの調整が必要になります。
担保に入っている不動産の任意売却について、売却価格と返済への充当額を銀行と協議する。
間違えやすい点裁判所の手続で売却する競売とは異なります。また、売却ができても、残った借金が自動的に免除されるわけではありません。売却後の返済についても別途確認します。
出典
住宅金融支援機構「任意売却パンフレット」 ↗
掲載p.1「任意売却について」「ご留意いただく事項」、p.4「利害関係人との調整」、p.5「売買契約の締結」:通常売買、抵当権抹消の承諾、残債務の返済義務
ネームクリア
ねーむくりあ
買い手候補に売り手の会社名を明かし、より詳しい会社情報を見せる段階です。匿名の紹介を見て関心を持った候補先について、売り手の同意を得て、秘密保持契約を結んでから進めます。誰に社名を伝えるかを管理する大切な工程です。
売り手に開示先の候補を確認し、同意と秘密保持契約がそろった相手へネームクリアを行う。
間違えやすい点秘密保持契約そのものや、会社の売却が決まったことを指す言葉ではありません。社名を伝えても交渉は途中です。売り手の同意は原則として候補先ごとに得るもので、仲介会社へ無条件に任せてよいわけではありません。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
第2章II 4(4)p93〜94「譲り受け側の選定(マッチング)」:定義、売り手の同意、候補先との秘密保持契約、個別同意を原則とする規律
中小企業庁「中小M&Aガイドライン改訂(第3版)に関する概要資料」 ↗
p10「ネームクリアにあたって遵守すべき規律」:匿名資料から実名を含む詳細資料の開示へ進む流れ
ネガティブチェック
ねがてぃぶちぇっく
取引相手となる会社や経営者について、行政処分、訴訟、事件など、取引判断に関わる不利な情報がないか調べることです。M&Aでは相手を選ぶ際などに、新聞記事や調査会社の情報などを確認します。
買い手候補のネガティブチェックで見つかった記事について、同名の別会社ではないか、内容と発生時期を確認する。
間違えやすい点検索で名前が出たことだけで、調べている会社の不正と判断できません。所在地や関係者、記事の内容・時期を確かめます。訴訟の当事者であることも、それだけで違法行為をした証拠にはなりません。
出典
東京商工リサーチ「ネガティブ情報検索サービス『ネガティブチェック』」 ↗
サービス概要・サービスの詳細説明:行政処分、訴訟、事件・事故と新聞記事情報、代表者・役員等の確認、取得可能な情報③の原告・被告の区別
東京商工リサーチ「tsr-van2 WEBユーザーガイド:ネガティブチェック」 ↗
「ネガティブチェックを見る」:商号・代表者・役員・住所を加味した検索、意図しない記事が検出された場合の内容確認
ネットキャッシュ
ねっときゃっしゅ
現預金などから、利息を支払う借入金や社債などを差し引いた金額です。基本形は「現預金等-有利子負債」で、プラスなら対象にした手元資金の方が多い状態です。M&Aでは、借入れを考慮した資金の余裕や、株式価格の調整を確認するときに使います。
現預金の残高だけでなく、借入金を差し引いたネットキャッシュも確認します。
間違えやすい点有価証券などを含めるかは資料で異なり、範囲をそろえる必要があります。同じ範囲ならネットデットの符号を逆にした金額です。全額が自由に使える現金として残っている、という意味ではありません。
出典
野村證券「証券用語解説集:ネットキャッシュ」 ↗
手元流動性(現金・預金+有価証券)から有利子負債を差し引く定義
アインホールディングス「2024年4月期 3Q IR資料」 ↗
掲載p.5「連結B/S」:ネットキャッシュ=現預金-有利子負債。計算対象に定義差があることの確認
ネットデット
ねっとでっと
別名・英字:純有利子負債
利息を支払う借入金や社債などの合計から、現預金などを差し引いた金額です。純有利子負債とも呼び、手元資金も考慮した借入れの大きさを表します。M&Aでは、事業の評価額から株式の価格を考える際の調整などに使います。
借入金と現預金の範囲をそろえ、株式価格の調整に使うネットデットを確認します。
間違えやすい点計算範囲が同じなら、ネットキャッシュとはプラスとマイナスが逆になります。現預金や負債のどこまでを含めるかは資料・契約で異なります。使途の制限がある預金などを、そのまま自由な返済資金とは考えません。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「企業価値」 ↗
現預金を除いた純有利子負債、企業価値と株式価値の関係
アインホールディングス「2024年4月期 3Q IR資料」 ↗
掲載p.5「連結B/S」:ネットキャッシュ=現預金-有利子負債。符号を逆にする関係の確認
根抵当権
ねていとうけん
継続的な借入れなどで、増減する借金を一定の範囲でまとめて担保する権利です。返済が滞った際には、土地や建物を売った代金から、定めた上限額まで優先的に返済を受ける仕組みです。この上限を「極度額」といいます。
事業用不動産の根抵当権について、極度額だけでなく、担保している借入金の実際の残高も確認する。
間違えやすい点通常の抵当権が特定の借金を担保するのに対し、根抵当権は継続取引で生じる借金などをまとめて担保します。極度額は現在の借入残高ではないため、登記だけで借金の金額を判断しません。
出典
e-Gov法令検索「民法」 ↗
第398条の2・第398条の3:一定範囲の不特定債権と極度額、確定元本・利息等への根抵当権行使
東京地方裁判所「担保権,被担保債権・請求債権目録(担保不動産競売)の書き方」 ↗
1(2)根抵当権、2 被担保債権・請求債権目録の書き方:極度額と債権の範囲、極度額と請求金額の区別
年買法
ねんばいほう
別名・英字:時価純資産+のれん法
会社の資産から借金などの負債を引いた純資産に、利益の何年分かを足して、株式の売買価格の目安を出す考え方です。純資産を今の価値に直す場合などがあり、どの利益を何年分加えるかは、会社の状況や交渉によって決まります。
年買法で示された価格について、純資産の直し方と、加えた利益の種類・年数を確認する。
間違えやすい点時価純資産法は、資産と負債を今の価値に直した差額を基準にします。年買法はそこへ利益分を加える点が違います。「何年分なら必ず売れる」という公定の相場や、成立価格を保証する計算ではありません。
出典
中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(2025年5月9日) ↗
p37「M&Aにおけるバリュエーションについて」:純資産法に数年分の利益を加える「いわゆる年買法」、加算する利益種類・年数が事例ごとに異なり交渉で決まる説明
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法」 ↗
参考資料全体p4〜6:簿価純資産法・時価純資産法、数年分の利益を加算する場合。算定額と最終合意価格が必ず一致するわけではない点
納税猶予
のうぜいゆうよ
一定の条件を満たすことで、税金の支払いを待ってもらう制度です。事業承継では、後継者が贈与や相続で受け継いだ非上場会社の株式について、贈与税・相続税の支払いを先送りできる制度が使われます。
事業承継税制の納税猶予を受けている株式を売却する前に、納める税額を確認する。
間違えやすい点納税が不要になる「免除」とは異なります。対象株式を売却するなどした場合は、猶予されている税額の全部又は一部と利子税の納付が必要になることがあります。株式を売買するだけで自動的に適用される制度でもありません。
出典
国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」(令和7年5月・7月更新) ↗
掲載p.1制度概要、p.4「非上場株式等の継続保有等」「納付する必要がある主な場合」、p.5免除、p.6相続税の流れ:贈与・相続による取得、株式譲渡時の全部又は一部の納付と利子税
ノーショップ条項
のーしょっぷじょうこう
ほかの買い手候補を自ら探したり、買収の提案を持ちかけたりする行為を制限する契約条項です。進行中のM&Aをまとめやすくするため、売り手側が一定の期間、こうした行動を控えると約束することがあります。
ノーショップ条項の有効期間中に、別の買い手を募る打診をしてよいか契約を確認する。
間違えやすい点ノートークは、別の候補との話合いや交渉の制限まで含む用語です。ただし、条項名が同じでも、禁止する行為、対象期間、例外は契約や国のルールによって異なります。
出典
NetComm Wireless/Casa Systems「Scheme Implementation Deed」(2019年、SEC提出Exhibit 10.1) ↗
掲載36頁・14.2 No-shop、14.3 No-talk、14.4 No due diligence、39頁・14.7 Fiduciary out。外国の個別契約の実例であり日本法の共通要件ではない
経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019年6月28日) ↗
3.4.2・35〜36頁、脚注61・63:入札手続(オークション)と対抗提案への過度の接触制限。MBO等を主な対象とする指針であり一般的な法定要件とはしない
ノートーク条項
のーとーくじょうこう
進行中のM&Aとは別の買い手候補と、買収について話し合うことを制限する契約条項です。売り手が誘わずに相手から提案を受けた場合でも、交渉を始めたり続けたりしないと約束する形があります。
第三者から買収提案を受けたため、ノートーク条項の対象となる交渉か、例外に当たるかを確認する。
間違えやすい点ノーショップは候補探しや勧誘の制限が中心です。ノートークも絶対的な禁止とは限らず、より良い提案への対応などの例外は、取締役の責任に関する国のルールや契約によって異なります。
出典
NetComm Wireless/Casa Systems「Scheme Implementation Deed」(2019年、SEC提出Exhibit 10.1) ↗
掲載36頁・14.2 No-shop、14.3 No-talk、14.4 No due diligence、39頁・14.7 Fiduciary out。外国の個別契約の実例であり日本法の共通要件ではない
経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019年6月28日) ↗
3.4.2・35〜36頁、脚注61・63:入札手続(オークション)と対抗提案への過度の接触制限。MBO等を主な対象とする指針であり一般的な法定要件とはしない
ノックアウト条項
のっくあうとじょうこう
オプションでは、株価などが決めた条件に達すると、株などを売買する権利を消滅させる取り決めです。新株予約権でも、株価や業績が一定水準を下回ると、株式を受け取る権利を使えなくする条件として設ける例があります。
対象会社の新株予約権を調べ、ノックアウト条項により権利を使えなくなる条件を確認する。
間違えやすい点ノックインは、条件を満たすと権利が有効になる方向の仕組みです。仕組債ではノックアウトが早期返済の条件を指すこともあります。何が起きる条項かは、商品や契約ごとに読み分けます。
出典
日本証券業協会「金融商品や取引の特徴やリスク」 ↗
「EB債の商品内容を理解するポイント」3頁(PDF8頁)脚注:ノックイン・ノックアウトの一般的な権利発生・消滅の意味。仕組債では商品条件も確認する趣旨
光通信「業績条件付有償ストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ」(2018年5月21日) ↗
2頁:業績条件を一定期間下回ると新株予約権が消滅するノックアウト条項。個別の年率・期間を一般化しない
SMBC日興証券「ノックアウト」 ↗
仕組債での早期償還条項としての用法。オプションの権利消滅と効果を区分
ノックイン条項
のっくいんじょうこう
オプションでは、株価などが決めた水準に達すると、株などを売買する権利が有効になる取り決めです。新株予約権では、決めた株価や業績を達成してから、株式を受け取る権利を使えるようにする条件として設ける例があります。
新株予約権のノックイン条項を読み、株価だけでなく業績の条件も満たす必要があるか確認する。
間違えやすい点ノックアウトは、条件により権利を使えなくする方向の仕組みです。ノックインが有利とは限らず、仕組債では株価下落時に返済条件が変わり損失につながる場合もあります。対象となる権利や条件を確認します。
出典
日本証券業協会「金融商品や取引の特徴やリスク」 ↗
「EB債の商品内容を理解するポイント」3頁(PDF8頁)脚注:ノックイン・ノックアウトの一般的な権利発生・消滅の意味。仕組債では商品条件も確認する趣旨
REVOLUTION「有償ストックオプション(第9回新株予約権)の発行に関するお知らせ」(2024年11月21日) ↗
4〜5頁:株価と業績を条件とするノックイン条項の実例。金額・期限・同社の上場目標は一般的条件として用いない
のれん
のれん
別名・英字:暖簾
会社や事業の取得に支払った金額が、個別に確認して評価した資産から負債を引いた金額を上回る場合の差額です。顧客基盤や組織などへの期待が背景にあります。M&Aでは、買収価格の内容や、取得後の利益への影響を確認するために見ます。
買収価格のうち、のれんとして計上する金額と、その根拠を確認します。
間違えやすい点日本基準では、原則として20年以内の効果が及ぶ期間に分けて費用にし、必要なら減損処理もします。国際会計基準(IFRS)では定期的な償却をせず、少なくとも毎年、価値の低下を調べます。帳簿上の純資産との差額とは限りません。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第28・31・32項:取得原価の配分、のれんの算定と償却。第108項:減損会計の適用
IFRS Foundation「IFRS 3 Business Combinations—Proposed questions for the RfI」(2013年12月スタッフ資料) ↗
p.7「5. Non-amortisation of goodwill and indefinite life intangible assets」:IFRS 3における非償却と毎年の減損テスト
のれん減損
のれんげんそん
別名・英字:のれんの減損
買収で計上したのれんについて、事業の収益性が低下し、会計上の金額を回収できる見込みが乏しくなった場合などに、その金額を減らして損失にする処理です。M&Aでは、買収時に期待した稼ぐ力が続いているかや、損失が利益に与える影響を確認するために見ます。
買収先の業績見通しが悪化したため、のれん減損の検討が必要か確認します。
間違えやすい点定期的に費用にする償却とは別です。日本基準と国際会計基準(IFRS)では調べる手順や判定条件が異なり、単年の赤字や株価下落だけで自動的に決まるものではありません。損失計上が、同額の現金流出を意味するわけでもありません。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(2025年10月16日改正)」 ↗
第17・18・25・51〜54項:のれんの減損の兆候、認識の判定と回収可能価額への減額
IFRS Foundation「IAS 36 Impairment of Assets」 ↗
About:回収可能価額との比較、のれんを配分した資金生成単位の減損テスト、毎年の判定
のれん償却
のれんしょうきゃく
別名・英字:のれんの償却
買収で計上したのれんを、その効果が続くと見込む期間に分けて費用にする会計処理です。日本基準では、原則として20年以内の合理的な期間で規則的に行います。M&Aでは、買収後の利益に毎期どれほど影響するかを見積もる際に確認します。
買収後の利益計画には、見込まれるのれん償却の費用を織り込みます。
間違えやすい点毎年追加で買収代金を支払う処理ではありません。減損は回収見込みの悪化などを踏まえて帳簿額を減らす別の処理です。国際会計基準(IFRS)ではのれんの定期的な償却を行わず、少なくとも毎年、減損のテストをします。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第32・107・108項:20年以内の効果の及ぶ期間にわたる規則的償却、投資原価の費用配分と減損
IFRS Foundation「IFRS 3 Business Combinations—Proposed questions for the RfI」(2013年12月スタッフ資料) ↗
p.7「5. Non-amortisation of goodwill and indefinite life intangible assets」:IFRS 3における非償却と毎年の減損テスト
のれん分け
のれんわけ
別名・英字:暖簾分け
店で経験を積んだ従業員などが、元の店の屋号(店の名前)やノウハウなどを使うことを認められ、独立して経営する方法です。元の経営者の支援を受けながら、新しい店舗や譲り受けた店舗を運営する形などがあります。
のれん分けで独立する店長と、店名の使い方や独立後の指導、使用料について取り決める。
間違えやすい点会計上の「のれん」は、買収金額が、受け入れた資産から負債を差し引いた評価額を上回る部分です。この独立方法とは別の意味です。屋号を使う条件、代金やロイヤリティ(使用料)の有無は、取り決めによって異なります。
出典
中小企業診断協会「中小企業の事業継続を助ける日本伝統の承継手法(のれん分け・社員独立)報告書」(平成31年2月) ↗
第4章「のれん分けとは?」掲載p.20〜29、特にp.21の歴史・社員独立、p.28〜29のブランド・ノウハウ提供、及び第5章p.33の買取方式と委託方式(調査・ヒアリング事例)
企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準」 ↗
第31項:取得原価と資産・負債への配分純額の差額としてののれん
ノンコア事業
のんこあじぎょう
会社が今後の経営で重点的に人やお金を投入する中心分野から外れる事業です。本業への投資を優先するため、別の事業をノンコアと位置付け、他社への売却や独立を検討することがあります。その会社の経営方針との関係で決まります。
ノンコア事業の売却を検討し、本業への投資と、売却先での事業の成長を両立できるか調べる。
間違えやすい点赤字の事業や、価値のない事業という意味ではありません。利益が出ていても、自社では十分に人やお金を回せないことがあります。別の会社が引き継ぐことで、今より成長できる可能性にも目を向けます。
出典
経済産業省「第4回事業再編研究会 事務局説明資料」(2020年3月17日) ↗
p11「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の主なポイント:ノンコアの定義、収益力が必ず低いとは限らない点、売却・独立等とベストオーナーの視点
ノンネームシート
のんねーむしーと
別名・英字:ノンネーム
売り手の会社名を伏せて、事業の内容や大まかな地域、売上規模などを買い手候補に伝える資料です。まず関心があるかを尋ねるために使います。会社を特定されないよう、載せる情報の細かさも調整します。ティーザーとも呼ばれます。
買い手候補へ送る前に、ノンネームシートの業種と地域の組合せから会社名が分からないか確認する。
間違えやすい点会社名だけを消せば十分、というものではありません。珍しい商品や詳しい数字から会社が分かることもあります。社名を含む詳しい資料を見せる段階はネームクリアといい、その前に秘密保持契約などを確認します。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
用語集p19「ノンネーム・シート(ティーザー)」、p20「秘密保持契約」「企業概要書」:匿名の概要資料の目的と詳細資料との区別
経済産業省委託調査報告(M&Aスキルマップ) ↗
スキルマップp39「マッチング/ノンネーム・シートの作成・確認」:情報の細かさ・財務情報からの特定、大まかな所在地・業種・事業規模、売り手の合意
ノンリコースローン
のんりこーすろーん
特定の事業や資産から得るお金と、その資産を返済のあてにする融資です。原則として、その範囲を超えて出資者や親会社の財産に返済を求めない契約にします。不動産の取得や、専用会社を使う事業などで利用されます。
不動産を買う専用会社のノンリコースローンについて、返済の対象となる物件・賃料と追加負担の条件を確認する。
間違えやすい点返済しなくてよい借金や、無担保の借入れという意味ではありません。返済責任を負う財産の範囲を絞る仕組みです。一定の場合だけ追加支援を求めるなど、例外は契約で確認します。
出典
日本政策投資銀行「金融用語集 な行・ノンリコース」 ↗
ノンリコース:事業収益・プロジェクト資産への依存と親会社の保証との区分
内閣府「第3回成長資金の供給促進に関する検討会」三菱東京UFJ銀行提出資料(2014年10月23日) ↗
5頁:ノンリコースファイナンス。事業者に返済義務を課さない又は限定的に課す定義、特定事業の資金による返済。古い市場統計は使用しない


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