M&A用語集|さ行
2027年1月・中小企業M&A実務能力・倫理検定試験の学習に
187語。意味・使用例・間違えやすい点をまとめています。
見つかりませんでした。検索語や読みの絞り込みを変えてください。
サーチファンド
さーちふぁんど
経営者を目指す人が投資家の支援を受けて引き継ぐ会社を探し、買収後は自らその会社を経営する仕組みです。会社を探す活動への支援と、買収のための資金提供を組み合わせる形が代表的です。
サーチファンドでの承継を検討し、経営者候補の経験と引継ぎ後の方針を確認する。
間違えやすい点会社探しだけを代行する仲介サービスではありません。経営者候補本人が引継ぎ先を探し、その後の経営も担う点が特徴です。資金の集め方や投資家の関わり方には複数の形があります。
出典
サーチファンド・ジャパン「サーチファンドとは?」 ↗
サーチファンドの概要、経営者候補が主役、活動資金・買収資金と承継後の経営
中小企業庁 成長発展に向けた研究会資料「サーチファンドのチャレンジと目指す世界」 ↗
2023年公表・サーチャーと投資家・支援者による仕組み
サービサー
さーびさー
別名・英字:サービサー(債権回収会社)
貸付金など、法律で認められた種類のお金の支払いを受ける権利を管理・回収する専門会社です。銀行などから依頼を受けるほか、その権利を買い取って回収する場合もあります。日本では法務大臣の許可が必要です。
借入金の返済相談の窓口が、銀行からサービサーに変わった。
間違えやすい点債権は、お金の支払いなどを求められる権利です。サービサーの許可があっても、あらゆる未払い金を自由に回収できるわけではありません。許可業者かどうかと、対象債権かどうかは別に確認します。
出典
法務省「債権管理回収業(サービサー)制度」 ↗
許可制度・取扱対象となる特定金銭債権の説明
債券
さいけん
国や会社などがお金を借りるために発行する有価証券です。国が発行する国債、会社が発行する社債などがあります。買った人は発行者にお金を貸す立場になり、利息や返済などの条件を確認します。会社の資金調達や、保有する金融資産の話で登場します。
買収対象が持つ債券について、発行者と満期までの期間を確認します。
間違えやすい点同じ読みの「債権」は支払などを求める権利で、債券は金融商品の名前です。また、株式と違って通常は株主になるものではありません。返済が約束されていても、支払不能や途中売却による損失の可能性があります。
債権
さいけん
特定の相手に、お金の支払いや物の引渡しなどを求められる権利です。たとえば商品を売った会社が、買い手に代金を請求できる権利が当たります。M&Aでは売掛金や貸付金の回収見込み、権利を誰が引き継ぐかを確認するときに重要です。
売掛金という債権が、いつ、どの相手から回収できるか確認します。
間違えやすい点請求できる権利があっても、必ず現金を回収できるとは限りません。相手が支払う義務を負う側から見ると「債務」です。国債や社債などの金融商品を指す、同じ読みの「債券」とも区別します。
債権者保護手続き
さいけんしゃほごてつづき
合併や会社分割などの際、会社にお金を貸す銀行や、未払い代金を受け取る取引先などの利益を守るための手続です。法律に従って知らせ、異議を述べる機会を設け、必要に応じて支払いや担保の提供などを行います。
合併の日程を決める際、債権者保護手続きに必要な期間も織り込む。
間違えやすい点すべてのM&Aで、取引先全員の同意が必要という意味ではありません。再編の方法や債権の内容によって、保護の対象者や必要な手続が異なります。
出典
会社法 ↗
第789条・第799条・第810条(債権者の異議等)
財産評価基本通達
ざいさんひょうかきほんつうたつ
相続税や贈与税などを計算するとき、土地や株式などの財産をいくらと評価するかについて、国税庁が示した基本的な取扱いです。非上場会社の株式を家族に引き継ぐ場面でも使います。財産の種類や株主の立場などにより、評価の仕方が変わります。
子へ自社株を贈与するので、財産評価基本通達に沿って株価を確認します。
間違えやすい点買収相手との売買価格を一律に決めるルールではありません。また、通達自体が法律というわけでもありません。税金のための評価とM&Aの価格検討では、目的と適用する取扱いを分けて確認します。
最終契約
さいしゅうけいやく
別名・英字:最終契約書
M&Aで何を、いくらで、どの条件で引き継ぐかを正式に約束する契約です。調査や交渉の結果を反映し、代金の支払方法、実行までに必要な手続、説明が事実と違った場合の責任などを決めます。株式譲渡契約や事業譲渡契約などが該当します。
買収調査で見つかった未払い費用の扱いを調整し、その内容を最終契約へ反映する。
間違えやすい点基本合意は交渉途中の条件整理ですが、最終契約は取引の権利や義務を具体的に定めます。ただし、契約を結ぶ日と代金の支払・株式の引渡しの日が分かれ、実行条件を満たす必要がある場合もあります。
出典
日本公認会計士協会「事業承継支援マニュアル」 ↗
第2章Ⅲ3「譲渡契約書」176~178頁:表明保証・誓約事項・前提条件・補償
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
第1章:最終契約の締結、クロージング
再調達原価法
さいちょうたつげんかほう
いま同じような設備や事業の仕組みを用意し直すなら、どれほどの費用がかかるかを基に価値を考える方法です。昔買った値段ではなく、今の調達費用に目を向けます。資産や事業を自分で用意する場合と、買収する場合を比べる材料になります。
同等の生産設備をいま用意する費用を、再調達原価法で見積もります。
間違えやすい点創業時に実際にかかった費用を、そのまま足す方法ではありません。古さや性能の低下も検討します。また、同じ設備を用意できても同じ売上を生むとは限らないため、収益力の確認も必要です。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「コスト・アプローチ」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第10号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」 ↗
第362項(1):同等資産の受入れに要するコスト
サイトM&A
さいとえむあんどえー
運営中のウェブサイトや、サイトを使った事業を売買することです。記事、画像、ドメイン(サイトの住所)、運営の仕組みなどを引き継ぎ、買い手がそのサイトの運営を続ける形が代表的です。
サイトM&Aの契約前に、記事の著作権とドメインが売買対象に含まれるかを確認する。
間違えやすい点サイトを買う取引と、運営会社の株を買う取引は同じではありません。広告契約や外部サービスのアカウントなどは、その利用規約や契約上、自由に引き継げない場合があります。
出典
ラッコM&A「購入の流れ(サイト売買・株式・事業・事業資産)」 ↗
サイトデータとドメインの引継ぎ、サイト以外の対象物、検収の説明
ラッコM&A「事業譲渡契約書ひな形(サイト譲渡)」 ↗
譲渡対象サイトと著作権等の対象を定める契約ひな形
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
2024年8月・第1章 中小M&Aの手法と手続
債務
さいむ
特定の相手に、お金を支払う、借りたお金を返す、約束した物を引き渡すなどの行為をする義務です。同じ関係を相手の権利の側から見ると「債権」になります。M&Aでは、誰がどの義務を負い、取引後に誰が引き継ぐかを確認します。
買収対象の債務について、返済先と支払期限、引継ぎの範囲を確認します。
間違えやすい点借入金だけを指す言葉ではありません。商品を引き渡す義務なども含みます。一方、会計の「負債」は決算書に計上するための認識・測定のルールがあるため、法律上の債務と完全に同じ範囲とは限りません。
財務アドバイザー
ざいむあどばいざー
別名・英字:FA/ファイナンシャルアドバイザー
M&Aで売り手か買い手の一方から依頼を受け、会社の価値、価格や取引条件、交渉の進め方などを助言する専門家です。FAとも呼びます。依頼者が取引を判断できるよう支え、相手探しから取引実行まで関わる場合もあります。
売り手側の財務アドバイザーに、買い手から提示された価格と支払条件の検討を依頼する。
間違えやすい点売り手と買い手の双方を支援する仲介者とは立場が異なります。また、財務アドバイザーという名称だけで、税務申告や法律相談、買収資金の融資まで含むわけではなく、依頼範囲の確認が必要です。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
用語集「FA(フィナンシャル・アドバイザー)/FA契約」「仲介者/仲介契約」
日本政策投資銀行「M&Aアドバイザリーサービス」 ↗
M&Aアドバイザリーサービスとは・M&Aプロセスと提供体制
財務シナジー
ざいむしなじー
会社が一緒になることで、資金の使い方や調達条件などが改善し、別々だったときより価値が高まる効果です。たとえば資金に余裕のある会社が、成長に必要なお金が足りない会社を支える場合があります。買収後に見込む相乗効果の一つです。
借入条件や資金の活用で、どのような財務シナジーを見込むか検討します。
間違えやすい点仕入れや生産の効率化による事業上の相乗効果とは、分けて考えます。また、一緒になれば必ず借入金利や税金が下がるわけではありません。税務上の制限や追加負担も含め、根拠を持って効果を見積もります。
出典
Aswath Damodaran(NYU Stern)「Motives for Acquisitions」 ↗
Sources of Financial Synergy:余剰資金、負債調達能力、税効果(一般理論)
債務超過
さいむちょうか
会社の負債が、資産の総額を上回っている状態です。資産から負債を差し引いた純資産がマイナスになります。帳簿ではプラスでも、回収できない売掛金などを見直すと実質的に債務超過となる場合があり、M&Aでは財務の実態を確認します。
帳簿上の純資産だけでなく、不良資産を除いた後も債務超過でないか確認します。
間違えやすい点ある期間の赤字や、支払日に現金が足りない状態とは別です。また、債務超過だから即座に倒産する、M&Aで絶対に売れないと決まるわけではありません。資金繰りや将来性、負債の処理なども検討します。
財務デューデリジェンス
ざいむでゅーでりじぇんす
別名・英字:Financial DD/財務DD
買収を検討する会社の決算や資金の状況を詳しく調べることです。見かけの利益が一時的に増えていないか、回収できない売掛金や帳簿に表れていない支払義務がないかなどを確認し、買収価格や契約条件を考える材料にします。
財務デューデリジェンスで、一度だけ発生した利益と、通常の営業で得た利益を分けて確認する。
間違えやすい点決算書の数字が適正かについて意見を示す会計監査とは、目的や調査範囲が異なります。財務DDを行えば全分野の問題が分かるわけではなく、税務・法務・人事などは必要に応じて別途調べます。
出典
太陽グラントソントン「財務デューデリジェンス」 ↗
財務DDの調査項目:損益計算書分析・貸借対照表分析・簿外債務等
PwC Japan「デューデリジェンス」 ↗
財務デューデリジェンスの目的・正常収益力分析
債務の株式化
さいむのかぶしきか
別名・英字:DES/デット・エクイティ・スワップ
会社が負っている借金などを、その会社の株式に換える仕組みです。お金を貸していた側は、返済を受ける立場から株主の立場へ変わります。DES(デット・エクイティ・スワップ)ともいい、事業再生などで返済負担や財務状態を見直す際に使われます。
返済負担を見直すため、債権者と債務の株式化を協議します。
間違えやすい点会社が一方的に借金を消す方法ではなく、債権者との合意や所定の手続が必要です。株主になる側は、将来の成長に参加する一方、投資した株式が値下がりするリスクも負います。税務も個別に確認します。
財務分析
ざいむぶんせき
決算書などの数字を読み、会社の稼ぐ力、支払う力、資金の使い方などを確かめることです。利益率を計算したり、過去や同業会社と比べたりします。M&Aでは、対象会社の強みや問題点を把握し、価格や買収後の計画を考える材料になります。
財務分析で利益率の低下と在庫の増加を確認し、その理由を調べます。
間違えやすい点指標を計算しただけでは、原因まで分かるとは限りません。一時的な損益や会計処理の違い、事業の特徴も確認します。利益と現金の動きは違うため、一枚の決算書や一つの指標だけで判断しないことが大切です。
詐害行為
さがいこうい
返済や支払いに充てる財産を減らすなどして、お金を受け取る権利を持つ人の回収を妨げる行為です。例えば、借金を返せない会社が、価値ある財産を他人へ無償で渡す場合などが問題になり、一定の条件で裁判所に取消しを求められます。
経営が苦しい会社の事業を売る際、残る債権者の回収を妨げる詐害行為にならないかを確認する。
間違えやすい点財産を売る取引がすべて該当するわけではなく、売却条件、相手の認識などの要件を見ます。人をだまして契約させる「詐欺」とも別の制度で、名称の似方だけで判断しません。
先取り二段階オファー
さきどりにだんかいおふぁー
最初に買う株式には高い価格を示し、経営を支配できるようになった後で取得する残りの株式には、それより低い価格を示す買収の提案です。米国の買収の議論などで使われ、株主を「早く売らないと不利になる」と急がせる問題があります。
買収条件を読み、後から売る株主が不利になる先取り二段階オファーに当たらないか確認する。
間違えやすい点公開買付けの後に残りの株式を取得する取引が、すべてこの方法になるわけではありません。二段階で行うこと自体より、前後の価格差などが売却を急がせる点に注目します。
サクセッションプラン
さくせっしょんぷらん
次の経営者や重要な役職を担う人を、早くから見つけて育てる計画です。どのような能力が必要かを決め、候補者に経験を積んでもらい、評価と見直しを重ねて、将来の交代に備えます。
サクセッションプランに沿って、次の社長候補に複数部門の経営を経験してもらう。
間違えやすい点退任直前に後任の名前を決めることだけではありません。また、株の引継ぎや資金、税金まで扱う事業承継計画とは範囲が異なり、後継者となる人の選抜・育成に重点があります。
出典
東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2021年6月11日)」 ↗
補充原則4-1③ 最高経営責任者等の後継者計画と育成の監督
りそなアセットマネジメント「サクセッション・プランについて」 ↗
社長から新任役員候補者までの計画的な選抜・育成に関する自社方針
サタデーナイトスペシャル
さたでーないとすぺしゃる
かつて米国で使われた、週末などに突然買収を持ちかけ、ごく短い期間に株式を集めようとする戦術の呼び名です。株主や対象会社が十分に検討できないうちに取引を進める点が問題となった、歴史的な市場用語です。
昔の米国の買収事例を読み、サタデーナイトスペシャルが株主の判断時間をどう狭めたかを整理する。
間違えやすい点土曜日に買収を公表すれば、この方法に当たるわけではありません。現在の日本の公開買付けは開示や期間などの規制に従うため、昔の米国の戦術をそのまま当てはめません。
出典
ニデック「牧野フライス製作所特別委員会への回答」〔当事者の説明資料〕 ↗
2025年1月17日・1(1)サタデー・ナイト・スペシャルの歴史的意味
東京大学 UT Soft Law Review No.2 ↗
Williams Act導入前のSaturday night specialの記述
サルベージ・レシオ
さるべーじれしお
別名・英字:サルベージレシオ
会社を売る、または事業をやめて財産を売り借金などを払うときに、残ると見込む価値が、株式全体の市場価格の何倍かを見る指標です。ブランドの価値や事業整理の費用なども見積りに加える使い方があります。
サルベージ・レシオを見る際に、ブランド価値と整理費用をどう見積もったか確認する。
間違えやすい点帳簿の純資産をそのまま時価総額で割る指標とは区別します。資料によって価値の調整方法が異なるため、式の前提を確認します。数値が高くても、その金額で実際に資産を売却・回収できる保証はありません。
出典
明治安田アセットマネジメント「雷 月次運用レポート」2020年3月末 ↗
「サルベージ・レシオとM&Aレシオ」:調整純資産/株式時価総額の式と説明
三角合併
さんかくがっぺい
合併で消滅する対象会社の株主に、存続会社自身の株式ではなく、その親会社の株式を渡す形の合併です。買い手の親会社、その子会社、対象会社の三つが登場し、子会社が対象会社を吸収する形が典型です。
買い手の子会社が対象会社を吸収合併し、対象会社の元株主へ親会社の株式を渡す。
間違えやすい点日本の会社法上の「三角合併」は、親会社の株式を使う吸収合併の呼び名です。対象会社を残す逆三角合併と同じ構成だと思わないようにします。
産業活力再生特別措置法
さんぎょうかつりょくさいせいとくべつそちほう
別名・英字:産業再生法/産業活力再生特別措置法(産業再生法)
事業の立て直しや再編などを後押しするために設けられた、現在は廃止されている法律の旧称です。「産業再生法」「産活法」と呼ばれることもあります。古いM&A資料を読む際に出てくる制度名として理解します。
過去の再編事例に出てくる産業再生法と、現在利用する支援制度を区別して調べる。
間違えやすい点改正後の名称は「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」で、産業競争力強化法の施行に伴い廃止されました。旧法の認定や特例を、現在も新規利用できる制度と考えないことが大切です。
出典
e-Gov法令検索「産業競争力強化法」 ↗
制定時附則4条:旧産活法の廃止、附則5条以下:経過措置
衆議院・第186回国会総務委員会第23号(2014年5月22日) ↗
旧産活法の廃止と産業競争力強化法への承継に関する政府答弁
サンクコスト
さんくこすと
すでに使ってしまい、これから何を選んでも取り戻せない費用です。埋没費用ともいいます。M&Aで支出済みの調査費用などが当てはまる場合があります。今後も進めるかを考えるとき、過去の支出とこれから増える費用・利益を分けるために使う考え方です。
調査に費用をかけたことだけを理由にせず、買収を続ける価値を検討します。
間違えやすい点過去の支出すべてが、必ず回収不能というわけではありません。売却や返金で戻る分は分けて考えます。また、過去の費用を会計から消す話ではなく、これからの意思決定でどう扱うかの話です。
サンセット条項
さんせっとじょうこう
決めた期限が来たら、制度や契約上の取決めの効力が終わるようにする条項です。買収防衛策では、いったん導入した仕組みが見直されないまま残り続けることを防ぐため、あらかじめ有効期間を設ける場面で使われます。
買収防衛策のサンセット条項を読み、期限と更新に必要な手続を確認する。
間違えやすい点買収の提案が終われば自動的に消える、という意味ではありません。期限が来た場合の扱い、延長や再導入の可否は、各条項の内容を読んで区別します。
残存価値
ざんぞんかち
企業価値評価では、細かい事業計画を作った期間が終わった後の事業の価値を、まとめて見積もったものを指します。ターミナルバリューとも呼びます。計画期間以降も事業が続く場合、そこで生み出すお金の価値を評価に反映するために使います。
計画期間の後も事業が続くため、残存価値を含めて買収対象を評価します。
間違えやすい点将来必ず受け取れる現金や、処分時の売値が確定しているという意味ではありません。会計では設備の使用終了時の価値を指す場合もあります。企業評価で使うときは、どの時点の価値かと成長率などの前提を確認します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「DCF法」 ↗
計画期間以降の継続価値(ターミナルバリュー)の説明
COC条項
しーおーしーじょうこう
別名・英字:Change of Control/チェンジオブコントロール条項
契約を結んだ会社の株主や支配関係が変わったときに、相手への通知、同意の取得、契約の解除などを定める条項です。株式を売って会社の法人格が変わらない場合でも、取引先や銀行との契約に影響することがあります。
株式譲渡の実行前に、主要取引先との契約にCOC条項がないか調べる。
間違えやすい点支配権が変われば必ず契約が終了するという意味ではありません。何が条件となり、通知・同意など何が必要かは、個々の契約で確認します。
出典
中小企業庁「中小PMIガイドライン(詳細版)」 ↗
印刷ページ116/チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項への対応
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
用語集/チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項
シェルカンパニー
しぇるかんぱにー
会社という法的な形はあるものの、事業活動の実体がないか、ごく小さい会社を指す呼び名です。米国の証券規制では資産の内容なども含めて定義され、合併や上場をめぐる取引を調べるときにも登場します。
海外の買収対象がシェルカンパニーに該当するか、実際の事業と保有資産を調べる。
間違えやすい点名前だけで、違法な会社や脱税用の会社だと決めつける言葉ではありません。また、資金調達など特定の目的で作る会社が、すべて同じ法的分類になるわけでもありません。
出典
米国SEC「Use of Form S-8, Form 8-K, and Form 20-F by Shell Companies」 ↗
2005年最終規則・Rule 405及びExchange Act Rule 12b-2のshell company定義
支援機関登録制度
しえんきかんとうろくせいど
売り手と買い手の間を取り持つ仲介会社や、一方に助言するFAを登録し、情報を公開する国の制度です。正式名称はM&A支援機関登録制度です。一定の補助金で仲介やFAの費用を申請する際、依頼先が登録されているかを確認します。
仲介会社へ依頼する前に、支援機関登録制度の登録状況と公開されている業務内容を確認する。
間違えやすい点登録は、国が支援の品質やM&Aの成功を保証することではありません。また、登録がないと仲介・FA業務を行えないという許認可制度でもありません。認定経営革新等支援機関とは別の制度です。
出典
M&A支援機関登録制度「よくあるご質問」 ↗
Q2:登録と補助対象費用、Q3:許認可制度ではない旨
中小企業庁「M&A支援機関登録制度について」(2026年3月・検討会資料) ↗
登録制度の対象・主な登録要件と遵守事項・情報提供受付窓口・登録取消し等
時価純資産
じかじゅんしさん
会社の資産と負債を評価時点の価値で見直し、資産から負債を差し引いた金額です。買った時期の古い土地や、回収が難しい売掛金などを調整します。M&Aでは、帳簿に載る純資産と実際の財産状況の違いを確認するために使います。
土地の含み益と回収できない売掛金を反映し、時価純資産を計算します。
間違えやすい点会社が持つ現金の残高ではありません。評価する税金や将来の支払義務など、どこまで調整したかも確認します。また、人材や顧客との関係による稼ぐ力を、これだけで十分に表せるとは限りません。
出典
IPEV Board「International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines, December 2022」 ↗
Section I 3.9 Net Assets:資産・負債を公正価値で評価する方法
時価純資産法
じかじゅんしさんほう
会社が持つ資産と負債をいまの価値に見直し、その差額を基に株式の価値を考える方法です。たとえば土地の値上がりや売掛金の回収不能を反映します。資産を多く持つ会社などで、価格の目安を検討するときに使います。
不動産を多く持つ会社なので、時価純資産法でも価格の目安を確認します。
間違えやすい点算出した金額が必ず売買価格になるわけではありません。将来の成長や帳簿に表れない強みも別に検討します。相続税・贈与税に使う純資産価額方式とは、評価の目的や具体的な計算ルールが異なります。
出典
IPEV Board「International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines, December 2022」 ↗
Section I 3.9 Net Assets:資産に価値の源泉がある事業の評価
国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」 ↗
純資産価額方式との目的の違い
時価総額
じかそうがく
株式市場での株価に、発行されている株式数を掛けた金額です。1株の値段では分からない、会社の株式全体に対する市場の評価を見ます。大きさの違う上場会社を比べたり、M&Aで株式の価格水準を考えたりするときに使います。
1株の値段だけで比べず、時価総額も確認して会社の規模を見ます。
間違えやすい点会社が持つ財産の合計や、会社全体を実際に買うための確定額ではありません。借入金を含む事業の価値とも区別します。株価で日々変わるほか、どの時点の株価・株式数を使ったかをそろえて比較します。
出典
時価評価
じかひょうか
資産や負債を、昔の取得額だけでなく、評価する時点の取引価格や合理的な見積額で評価することです。相場があるものはその情報を使い、相場がない場合は別の方法で見積もります。M&Aでは、帳簿の数字と現在の価値の差を把握するために行います。
保有する土地を時価評価し、帳簿の金額との差を確認します。
間違えやすい点買い手や売り手が希望する価格を、そのまま時価とするわけではありません。会計や税務など目的によって具体的なルールが違うため、評価日・対象・方法を確認します。すべての資産を毎期必ず時価に直すという意味でもありません。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準第30号 時価の算定に関する会計基準」 ↗
第3〜5項及び第8項:適用範囲・時価・評価技法
企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第10号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」 ↗
第53項:識別可能資産・負債の時価
時間的価値
じかんてきかち
オプションの価格のうち、いま権利を使った場合に得られる差額である「本源的価値」を差し引いた部分です。期限までの値動きの可能性などが価格にどう反映されているかを見るときに使います。ここでは株式などを買う・売る権利の評価の話です。
オプションの価格を、本源的価値と時間的価値に分けて確認します。
間違えやすい点将来のお金を今の価値に直す「貨幣の時間価値」とは別の用語です。残りの期間だけでオプション価格が決まるわけではなく、値動きの大きさ、金利、配当などにも影響されます。
事業拡大
じぎょうかくだい
顧客、販売地域、店舗、生産量、扱う商品などを増やし、事業の活動規模を広げることです。自社で人や設備を増やすほか、他社と協力したり、すでにある会社や事業を買って広げたりする方法があります。
新たな地域での事業拡大に向け、店舗を自社で開く方法と買収する方法を比べる。
間違えやすい点新しい種類の事業を始めることだけではなく、今の事業を広げる場合も含みます。また、売上や店舗数が増えても利益が増えるとは限らず、必要な費用や運営できる体制も考えます。
出典
中小企業庁「2024年版 中小企業白書」 ↗
第2部第3章第2節・中小企業の成長に向けた取組、成長戦略としてのM&A
日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資の活用法」 ↗
小規模事業者を対象とするM&A、株式・事業譲渡、取得後の資金に関する説明。2019〜2022年度の実績に基づく記事
事業価値
じぎょうかち
会社が営む事業そのものが、将来どれほどお金を生むかなどを基に評価した価値です。使っていない土地や余分な現金など、事業外の財産とは分けて考えます。M&Aでは、買いたい事業の稼ぐ力を価格にどう反映するか検討するときに使います。
事業価値と、事業に使わない土地の価値を分けて説明します。
間違えやすい点株主が受け取る株式の売却代金と同じではありません。会社全体や株式の価値を求めるには、事業外の資産や借入金などの調整が必要になります。EVを事業価値・企業価値のどちらの意味で使うかも資料ごとに確認します。
事業再生
じぎょうさいせい
経営や資金繰りが苦しくなった会社の事業を見直し、続けられる状態に立て直すことです。採算の改善、借金の返し方の調整、支援する買い手への事業譲渡などを組み合わせます。残せる事業の価値を見極めることが重要です。
売上はあるが借金の返済が重い会社について、事業再生の計画を作る。
間違えやすい点単に借金を減らすことや、必ず会社を倒産させることを意味しません。裁判所を利用する方法と、関係者との合意で進める方法などがあります。
事業再生ADR
じぎょうさいせいえーでぃーあーる
経営が苦しい会社と銀行などの間に、公正・中立な専門家が入り、借金の返し方などを話し合って事業再生を目指す制度です。裁判所の民事再生手続によらず、認証・認定を受けた機関の関与の下で合意を目指します。
複数の銀行との返済条件の調整に向け、事業再生ADRの利用を検討する。
間違えやすい点会社だけで返済を減らせる制度ではありません。2026年3月31日基準では、計画の成立に対象債権者全員の同意が必要で、裁判所が認可する民事再生とは仕組みが異なります。
事業再生ファンド
じぎょうさいせいふぁんど
別名・英字:再生ファンド
業績の悪化や借金の負担で苦しくなった会社に投資し、事業の立て直しを支える仕組みです。投資家から集めたお金を使い、株の取得や、貸したお金を返してもらう権利の買取りなどを通じて支援します。
事業再生ファンドによる支援を検討し、返済負担と事業の改善策をまとめる。
間違えやすい点投資して終わりではなく、経営改善に関わるものがあります。後継者への引継ぎを主眼とする事業承継ファンドと目的が異なりますが、承継と立て直しを同時に支援する案件もあります。
出典
中小機構「総合ハンドブック 令和6年度」 ↗
中小企業再生ファンド出資事業・投資と経営支援による事業再生
中小機構 J-Net21「地域中小企業再生ファンドについて教えてください」 ↗
金銭債権の買取り、株式出資等の投資と再生支援
事業承継
じぎょうしょうけい
関連する表記:事業承継問題/事業継承
今の経営者から次の担い手へ、事業を引き継ぐことです。社長の交代や株式の移転だけでなく、設備、お金、従業員の技術、取引先からの信用など、事業を続けるために必要なものを引き継ぐ取組です。
後継者を育てながら、経営権や事業用資産を計画的に引き継ぐ。
間違えやすい点子どもなどの親族への引継ぎだけではありません。従業員への承継や、M&Aで社外の人・会社へ引き継ぐ方法も含まれます。
出典
中小企業庁「事業承継を知る」 ↗
事業承継の種類/事業承継の構成要素
事業承継M&A
じぎょうしょうけいえむあんどえー
事業を次の担い手へ引き継ぐために行うM&Aのことです。後継者がいない会社などが、他社や個人へ株式・事業を譲り、事業を続けてもらう方法として用います。事業を残すための選択肢であり、引継ぎ後の経営や従業員の処遇も重要な検討事項です。
親族や社内に後継者がいないため、事業承継M&Aによる引継ぎ先を探す。
間違えやすい点社長が交代するだけの親族内承継などを、すべてM&Aと呼ぶわけではありません。また、買い手が見つかれば従業員の雇用や取引条件が自動的に守られるものでもなく、合意内容と実行方法の確認が必要です。
出典
中小企業庁「事業承継ガイドライン 第3版」 ↗
事業承継の類型:親族内承継・従業員承継・社外への引継ぎ(M&A)
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
中小M&Aの意義・第三者への円滑な事業引継ぎ
事業承継・M&A補助金
じぎょうしょうけいえむあんどえーほじょきん
別名・英字:事業承継補助金
中小企業などの事業承継やM&Aによる引継ぎを後押しする補助制度です。承継に伴う設備投資、M&Aの仲介や調査などの専門家費用、買収後の統合にかかる費用など、取り組みに応じた枠があります。利用条件は公募要領で確認します。
M&Aの調査を依頼する前に、事業承継・M&A補助金の対象経費と契約・支払時期を確認する。
間違えやすい点M&Aをすれば必ず受け取れる給付ではありません。申請・審査があり、採択だけで直ちに入金されるわけでもありません。募集時期、対象経費、実施期間等は公募ごとに違うため、過去の条件をそのまま使えません。
出典
中小企業庁「事業承継・M&A補助金 十一次公募の公募要領」(2025年3月31日) ↗
制度の趣旨・専門家活用枠
厚生労働省掲載・中小企業庁「事業承継・M&A補助金」令和7年3月時点版 ↗
事業承継促進・専門家活用・PMI推進・廃業再チャレンジの支援概要
事業承継ガイドライン
じぎょうしょうけいがいどらいん
中小企業の事業を次の経営者へ円滑に引き継ぐため、準備や進め方を整理した中小企業庁の資料です。後継者探し、会社の課題の整理、引継ぎ計画、人や資産の承継、支援機関の役割などを扱い、経営者と支援者が取り組みを考える手掛かりになります。
事業承継ガイドラインを使い、後継者の育成と自社株の引継ぎに向けた準備項目を整理する。
間違えやすい点中小M&Aガイドラインと同じ資料ではありません。事業承継ガイドラインは親族や従業員への承継も含む全体を扱い、中小M&Aガイドラインは第三者への引継ぎや仲介・FA支援などを詳しく扱います。
事業承継計画
じぎょうしょうけいけいかく
誰に、いつ、何を、どのように引き継ぐかを決め、準備を進めるための計画です。後継者の育成、社長の交代、株式や事業用財産の移転、資金の準備などを時間の流れに沿って整理し、現経営者と後継者が認識を合わせます。
事業承継計画に、後継者が各部門を経験する時期と代表者を交代する予定を記載する。
間違えやすい点税制の利用のために提出する特例承継計画などと、常に同じ書類を意味するわけではありません。一般の事業承継計画は引継ぎ全体の工程を扱い、税制や補助金の申請には別途の様式・条件があります。
事業承継コンサルティング
じぎょうしょうけいこんさるてぃんぐ
会社や個人事業を次の経営者へ引き継ぐため、課題を整理し、準備や実行を助ける助言サービスです。後継者の育成、株式・財産の引継ぎ、組織づくり、資金や税金への対応などを検討し、必要に応じて各分野の専門家と連携します。
事業承継コンサルティングを依頼し、後継者教育と株式の引継ぎを一つの計画にまとめる。
間違えやすい点節税の相談だけ、あるいはM&Aの買い手探しだけを指す言葉ではありません。提供範囲は依頼先ごとに異なり、税務相談や法的手続の代理などは、その業務に必要な資格と役割を確認します。
出典
中小企業庁「事業承継ガイドライン 第3版」 ↗
事業承継支援の体制・士業等専門家や金融機関等の役割
事業承継センター「事業承継の支援者・コンサルタントの方へ」 ↗
支援業務の分野と専門家向け研修の説明。個別提供事業者の用例
事業承継士
じぎょうしょうけいし
事業承継に関する幅広い知識を学び、会社の引継ぎを総合的に支援するための民間資格です。一般社団法人事業承継協会の認定制度として案内されています。後継者の育成や計画づくり、各分野の専門家との連携などを学ぶ資格です。
事業承継士に相談する際、資格の有無に加え、担当する支援の範囲と実務経験を確認する。
間違えやすい点国家資格や事業運営の許認可ではありません。この称号だけで税理士の税務相談や弁護士の法律事務などが行えるようになるわけでもありません。中小企業M&A実務能力・倫理検定試験とも別制度です。
出典
一般社団法人事業承継協会「資格取得講座」 ↗
事業承継士資格取得講座・資格の位置付け
事業承継センター「事業承継の支援者・コンサルタントの方へ」 ↗
事業承継士資格取得講座の特徴:任意による民間資格との明記
事業承継信託
じぎょうしょうけいしんたく
経営者が自社株式などを管理者に託し、契約で決めた方法で管理や後継者への引継ぎを進める仕組みです。誰が議決権を行使するか、誰が配当を受け取るかなどを設計し、判断能力の低下や相続に備えるためにも使います。
経営者の判断能力が低下した場合にも備え、事業承継信託で自社株の管理方法を決める。
間違えやすい点株式を後継者へその場で贈与することとは異なります。信託の種類・契約により権利や税金の扱いが変わり、信託にすれば贈与税や相続の問題がすべてなくなるわけではありません。
出典
信託協会「事業承継信託」 ↗
概要/事業承継における具体的な信託の活用方法/認知判断能力低下への対応
事業承継税制
じぎょうしょうけいぜいせい
後継者が贈与や相続で引き継いだ一定の株式・事業用資産について、条件を満たすと贈与税や相続税の支払を猶予する制度です。会社の株式等を対象とする法人版と、個人事業の事業用資産を対象とする個人版があり、その後に免除される場合もあります。
後継者へ自社株を贈与する前に、事業承継税制の認定と申告、継続要件を確認する。
間違えやすい点事業を継いだ人の税金が自動的にすべて免除される制度ではありません。支払を待ってもらう猶予と、支払義務がなくなる免除は別です。認定・申告後も、事業や株式の保有状況などに応じた手続が必要です。
事業承継特別保証制度
じぎょうしょうけいとくべつほしょうせいど
事業承継の際に、一定の要件を満たす中小企業が、経営者個人の保証を付けずに借入れを行うための信用保証制度です。信用保証協会が保証する仕組みを使い、後継者が個人保証の負担を理由に引継ぎをためらう問題などに対応します。
後継者に個人保証を負わせず承継を進めるため、金融機関へ事業承継特別保証制度の利用条件を確認する。
間違えやすい点会社の借金そのものを免除する制度ではありません。経営者個人の保証と、会社が返済する義務は別です。また、承継すれば無条件で利用できるわけではなく、財務状況などの要件や審査があります。
出典
中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた専門家による支援業務および事業承継特別保証制度の取扱いを開始しました」 ↗
事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度
神奈川県信用保証協会「経営者保証を不要とする保証の取扱い」 ↗
事業承継時の取扱い・事業承継特別保証の案内
事業承継ファンド
じぎょうしょうけいふぁんど
後継者への引継ぎなどに課題がある会社へ投資し、事業を次の担い手につなぐ仕組みです。投資家から集めたお金で株を取得するなどして、経営体制づくりや引継ぎ後の成長も支援します。
事業承継ファンドへの譲渡を検討し、次の経営体制と将来の株の引継ぎ方を確認する。
間違えやすい点後継者を紹介するだけのサービスや、補助金とは異なります。多くのファンドは支援後に株を譲渡するなどして資金を回収するため、誰がいつ経営を引き継ぐ計画なのかも確認します。
出典
中小機構「総合ハンドブック 令和6年度」 ↗
事業承継ファンド出資事業・株式取得等による投資、経営支援、後継者への株式譲渡等を通じた投資回収
地域経済活性化支援機構「ファンド出資業務(特定組合出資)」 ↗
事業承継ファンド・事業承継に課題を抱える中堅・中小企業への投資
事業譲渡
じぎょうじょうと
会社が営む事業の全部または一部を、別の人や会社へ譲り渡す取引です。店舗、設備、取引先との契約など、何を引き継ぐかを決めます。売り手の会社を残し、特定の事業だけを渡すこともできます。
飲食店事業を事業譲渡し、別の会社で続けている製造事業は残す。
間違えやすい点株式譲渡は株主が変わる取引です。事業譲渡では、契約や従業員の引継ぎ、許認可などに個別の承諾・手続が必要になる場合があります。
事業譲渡契約書
じぎょうじょうとけいやくしょ
別名・英字:BTA
事業を譲る会社と受け取る相手が、譲渡の条件を書いて合意する書面です。どの店舗・設備・契約などを渡すか、代金、実行日、問題が分かった場合の責任などを決めます。株式を売る契約とは、対象が異なります。
事業譲渡契約書の別紙に、引き継ぐ設備と取引先との契約を一覧で記載する。
間違えやすい点契約書に事業を渡すと書くだけで、すべての契約や従業員が自動的に移るわけではありません。必要な承諾、許認可、会社の承認なども確認します。
事業譲渡類似株式
じぎょうじょうとるいじかぶしき
海外を生活の拠点とする人や海外の法人などが、日本の会社の株式を一定規模で売ったとき、日本で課税する所得になるかを考えるための区分です。株式を保有していた割合や売却の規模など、税法上の条件で判定します。
海外へ転居した株主が日本企業の株式を売るため、事業譲渡類似株式の課税関係を確認する。
間違えやすい点株式の種類や、事業を直接売る取引の名前ではありません。海外に住んでいても日本の税法上の居住区分は確認が必要で、国同士の税金の取決めである租税条約の適用も確かめます。
出典
国税庁「No.1936 海外勤務中に株式を譲渡した場合」 ↗
申告の対象となる国内源泉所得2「事業譲渡類似の株式等の譲渡による所得」/租税条約の留意点
所得税法施行令 ↗
第281条(国内にある資産の譲渡により生ずる所得)
事業戦略
じぎょうせんりゃく
ある事業で、誰にどんな価値を届け、他社とどう競い、利益を生み出すかを決める方針です。顧客の困りごと、自社の得意なこと、競合の動きなどを整理し、商品、価格、販売先、人材の使い方を考えます。
低価格より専門性で選ばれるという事業戦略に沿って、買収先の技術を評価する。
間違えやすい点会社全体でどの事業に力を入れるかを決める戦略に対し、個々の事業でどう成果を出すかに重点があります。売上目標や日々の作業一覧だけでは、競争の方針までは示せません。
出典
中小企業庁「2023年版 中小企業白書」 ↗
第2部第1章第1節 成長に向けた戦略・ターゲット市場と自社の経営資源の分析
情報通信研究機構「ビジネスプラン作成ガイダンス」 ↗
10.事業戦略のまとめ、ターゲット市場での競争
事業提携
じぎょうていけい
複数の会社が、販売、製造、研究開発などの事業で協力することです。互いに足りない技術や販売先を補うなど、単独では難しい成果を目指し、担当する仕事や費用、成果の分け方を取り決めます。
製品の共同開発に向け、事業提携で使う技術と開発費の負担を協議する。
間違えやすい点業務提携やアライアンスと近い意味で使われ、株を持ち合うとは限りません。出資も行う場合は資本提携と重なるため、事業上の協力と株の保有関係を分けて確認します。
出典
中小機構 J-Net21「中小企業にも有効な企業連携の考え方について教えてください」 ↗
企業連携の方法・契約による提携、資本を伴う提携。出資比率の目安は本文へ転用しない
事業売却
じぎょうばいきゃく
営んでいる事業の全部や一部を、代金などを受け取って他の会社などに引き継ぐことです。売り手側から見た呼び方で、主力事業に力を入れるための整理や、後継者がいない事業を残すために行う場合があります。
主力の製造事業に人材を振り向けるため、販売事業の事業売却を検討する。
間違えやすい点事業買収は同じ取引を買い手側から見た言葉です。「事業売却」という呼び名だけでは手法は決まらず、事業そのものを譲るのか、その事業を持つ会社の株を売るのかを確認します。
事業買収
じぎょうばいしゅう
他の会社などが営む事業を、代金を支払うなどして自社側に取り込むことです。買い手側から見た呼び方で、顧客、技術、人材、店舗などを引き継ぎ、事業を広げたり必要な力を補ったりするために行います。
事業買収で必要な技術を取り込むため、権利と技術者の引継ぎ条件を確認する。
間違えやすい点事業売却は同じ取引を売り手側から見た言葉です。法律上の事業譲渡だけを指すとは限らず、会社の株を買って事業を取り込む形もあるため、何を誰から買うのかを確かめます。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
2024年8月・第1章 中小M&Aの手法と手続
日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資の活用法」 ↗
小規模事業者を対象とするM&A、株式・事業譲渡、取得後の資金に関する説明。2019〜2022年度の実績に基づく記事
資金調達
しきんちょうたつ
事業に必要なお金を用意することです。銀行から借りる、株式を発行して出資を受ける、事業で蓄えた資金を使うなど、複数の方法があります。M&Aでは買収代金だけでなく、その後に必要な運転資金や設備資金も含めて考えます。
買収代金と買収後の運転資金を含め、資金調達の計画を立てます。
間違えやすい点お金が入れば、どの方法も同じというわけではありません。借入れには返済・利息、株式発行には持株割合などへの影響があります。金額だけでなく、使途や返済時期、経営に関わる権利を合わせて検討します。
自己株式
じこかぶしき
会社が自分で発行した株式を、買い戻すなどして自分で持っているものです。「金庫株」と呼ばれることもあります。第三者が持つ株式とは異なり、会社がその株式を使って自分の株主総会で投票することはできません。
買収する株数を調べる際、発行済株式に自己株式が含まれていないか確認する。
間違えやすい点会社が自分の株式を持つことが一律に禁止されているわけではありません。取得や処分には法律上の手続、使える財産の制限などがあります。
自己資本利益率
じこしほんりえきりつ
別名・英字:ROE
株主側の元手である自己資本に対して、会社がどれほど最終的な利益を稼いだかを見る割合です。ROEとも呼びます。一般に当期純利益を、期首と期末の自己資本の平均で割って計算し、元手の使い方を確認する材料にします。
自己資本利益率の改善が、利益の増加によるものか確認します。
間違えやすい点数値が高ければ無条件によい、というものではありません。自己資本が小さいと高く出る場合もあるため、利益の内容や借入金も見ます。資産全体に対する利益を見る総資産利益率とは、計算の分母が違います。
出典
資産移転
しさんいてん
土地・設備・権利などの資産を、ある人や会社から別の人や会社へ移すことを広く表す言葉です。売却のほか、資産を出資して株式を受け取る現物出資、会社分割などでも行われます。M&Aでは、何が誰から誰へ移るかを具体的に確かめます。
資産移転の方法を選ぶ前に、移す設備と権利の範囲を整理します。
間違えやすい点資産移転という名前の一つの決まった手続があるわけではありません。方法によって契約や税務が違います。また、会社の株式が売られても、通常、その会社が持つ土地や設備の持ち主自体が変わるわけではありません。
出典
国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」 ↗
「資産の譲渡とは」:売買・交換・現物出資などによる移転
国税庁税務大学校論叢「組織再編税制における移転資産に対する支配の継続性等に関する一考察」 ↗
会社分割・現物出資等と資産移転の関係(制度の沿革・概念のみ参照)
資産査定
しさんさてい
会社が持つ資産について、実在するか、いくらの価値があるか、きちんと回収・利用できるかなどを確かめる作業です。売掛金なら回収の見込み、在庫なら売れる見込みを調べます。M&Aでは、帳簿に載る金額をそのまま信用してよいか判断する材料になります。
資産査定で、長期間回収できていない売掛金を重点的に確認します。
間違えやすい点資産の一覧を作るだけの作業ではありません。評価する目的や時点によって、見る価値も変わります。銀行の融資管理でいう資産査定など、別の文脈でも使う言葉なので、調査対象と目的を確認します。
資産除去債務
しさんじょきょさいむ
設備や建物などを使い終えたときの撤去・原状回復について、法令や契約などにより負っている義務です。たとえば借りた土地に建てた工場を、契約上取り壊して返す義務が当たります。M&Aでは将来必要になる支出を見落とさないために確認します。
工場の賃貸借契約を読み、原状回復に関する資産除去債務を確認します。
間違えやすい点単に修繕したい、将来建て替えたいという自主的な計画のすべてが対象になるわけではありません。また、負債に計上していても同額の現金を積み立てたという意味ではなく、義務の範囲と支出の見積りを確認します。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準」 ↗
第3〜6項:定義・負債計上・見積り、第28項:法律上の義務に準ずるものと自主的な計画との区別
資産買収
しさんばいしゅう
会社の株を買う代わりに、設備、土地、在庫、技術に関する権利など、必要な財産を選んで買う方法です。M&Aでは事業を構成する資産などをまとめて引き継ぐ場合にも使われ、何を買うかを契約で定めます。
工場の資産買収に当たり、土地・設備・在庫のどこまでを取得するかを確認する。
間違えやすい点株式を買って会社の経営権を得る株式買収と異なります。財産だけの売買と事業譲渡が同じ扱いになるとは限らず、契約、雇用、許認可が自動的にすべて移るわけではありません。
出典
JOGMEC「出資・債務保証(石油・天然ガス)」 ↗
資産買収(油田・ガス田の購入)と企業買収の区別
東京都事業承継・引継ぎ支援センター「M&A基礎知識」 ↗
M&Aの主な手法・株式譲渡と事業譲渡の説明
自社株買い
じしゃかぶがい
会社が、自分で発行した株式を株主から買い戻すことです。売った株主は会社から代金を受け取り、買い戻した株式は会社が保有する自己株式になります。株主への利益還元や、事業承継に伴う株主の整理などで使われます。
退任する創業者が持つ株式について、会社による自社株買いが可能か検討する。
間違えやすい点買い手が別の会社となる株式譲渡とは、お金を払う主体が異なります。買い戻しても株式が自動的に消えるわけではなく、取得の手続や使える財産の限度にもルールがあります。
自社株贈与
じしゃかぶぞうよ
事業承継の場面では、経営者などが持つ自社の株式を、後継者などへ無償で渡すことを指します。受け取った人が株主になり、その株式に応じた権利を持ちます。株式の価値や贈与税、会社の譲渡承認の要否を確認します。
経営者から後継者への自社株贈与について、渡す時期と株式の評価を相談する。
間違えやすい点代金を払う売買や、死亡によって財産を受け取る相続とは異なります。家族間で無償で渡しても税金が必ずゼロになるわけではなく、特例にも条件があります。
システムデューデリジェンス
しすてむでゅーでりじぇんす
別名・英字:IT DD/ITデューデリジェンス/システムDD
買収先の業務システムや情報管理を調べ、買収後に仕事を続けられるか、追加費用が必要かを確かめる調査です。機器やソフトの古さ、利用契約、情報漏えいへの備え、他社から切り離す際の影響などを確認します。IT DDとも呼ばれます。
システムデューデリジェンスで、親会社の販売システムを使えなくなる場合の移行費用を調べる。
間違えやすい点ITデューデリジェンスとほぼ同じ意味で使われる呼び方です。システムが今動くかだけでなく、買収後の更新・分離・統合に必要な費用や体制も検討します。調査範囲は案件に合わせて決めます。
出典
PwC Japan「ITデューデリジェンス」 ↗
ITデューデリジェンスの必要性・想定外の投資費用と事業継続の懸念
KPMG「ITディールアドバイザリー」 ↗
IT環境の調査から買収後の統合ITオペレーション戦略までの支援
事前警告型ライツプラン
じぜんけいこくがたらいつぷらん
株式の大量取得に備え、買い手から受け取る情報や検討に必要な時間、対応方法を会社が事前に公表しておく仕組みです。所定の場合には、買収者以外の株主が株式を取得できる権利などを使い、買収者の持株割合を下げる対応を予定します。
事前警告型ライツプランを読み、情報提供の手順と、防衛策を実行する条件を確かめる。
間違えやすい点公表しただけで、直ちに新しい株式や権利が発行されるわけではありません。あらかじめ権利を信託する方式とは準備方法が異なり、導入と実際の発動を分けて考えます。
出典
RIETI・鶴光太郎「買収防衛策の再検討」 ↗
(2)事前警告型と信託型の違い
日本取引所グループ「買収への対応方針に関する用語の定義」 ↗
買収への対応方針、対抗措置、導入、発動、ライツプランの区別
実査
じっさ
現金、在庫、設備などの現物を、調査する人が直接見たり数えたりして確かめる手続です。帳簿に載る資産が実際にあるか、数量や状態はどうかを調べます。M&Aでも、資料だけでは分からない資産の実態を確認するために使います。
現金を実査し、実際に数えた金額と現金出納帳の残高を照合する。
間違えやすい点会社が在庫を数える作業に立ち会って確かめる「棚卸立会」とは、調べる人の関わり方が異なります。また、物が存在しても、その会社の所有物か、売れる価値があるかは、別の資料などでも確認します。
出典
日本公認会計士協会「会計・監査用語かんたん解説集:実査」 ↗
資産の現物の実在性を直接確かめる監査手続の説明
日本公認会計士協会「監査業務の1年」 ↗
「実査・棚卸立会」:現金等の実査と棚卸の観察・テストカウントの区別
実質破綻先
じっしつはたんさき
破産などの法的手続に入っていなくても、深刻な経営難で再建の見通しがなく、実態として経営が行き詰まった借り手を指します。金融機関が借り手の返済能力を判断する際の区分で、旧金融検査マニュアルにも定義されていました。
形式上は営業を続けていても、返済能力と再建の見通しから実質破綻先と判断されることがある。
間違えやすい点赤字や債務超過になっただけで、自動的にこの区分になるわけではありません。旧マニュアル自体は2019年に廃止されており、古い検査基準が現在もそのまま一律に義務付けられているとは読みません。
シティ・コード
してぃこーど
英国などで、適用対象となる会社の買収を進める際に守るルールです。正式にはCity Code on Takeovers and Mergersといい、株主を公平に扱い、買収が秩序立って行われるように、情報提供や買付けの進め方などを定めています。
英国企業の買収を検討する際、シティ・コードの適用対象と必要な対応を確認する。
間違えやすい点日本の会社法や公開買付規制の別名ではありません。英国の会社なら必ずすべて適用される、とも限らず、会社や取引が適用範囲に入るかを確かめます。
出典
英国Takeover Panel「The Takeover Code」 ↗
Introduction 1 Overview、2 The Code、3適用範囲
私的再生
してきさいせい
裁判所の再生手続によらず、会社と銀行などの関係者が話し合い、合意によって事業の立て直しを進めることです。借金の返済条件の見直しや事業の改善などを行います。私的整理による再生という意味で使われます。
主要銀行と返済期間の延長を相談し、事業改善を含む私的再生を目指す。
間違えやすい点私的とは、経営者が一人で自由に決められるという意味ではありません。裁判所を使う法的整理とは区別され、事業再生ADRは一定のルールに沿って進める方法の一つです。
シナジー効果
しなじーこうか
別名・英字:シナジー
会社や事業を組み合わせたことで、それぞれが別々に活動するより大きな成果が生まれることです。相手の販売先に自社の商品を届ける、材料を共同で買って費用を減らす、といった効果があります。
両社の営業網を使った売上増加を、買収後のシナジー効果として見込む。
間違えやすい点売上や人数を単純に足しただけでは、追加の効果は示せません。統合にかかる費用や顧客が離れる可能性も考え、いつ、何によって成果が増えるのかを確かめます。
出典
野村総合研究所「シナジー/アナジー」 ↗
シナジー/アナジーとは、シナジーを考慮した事業展開・多角化
シナジーバイヤー
しなじーばいやー
買収先と自社の技術、商品、販売先などを組み合わせ、別々の会社のままより大きな成果を狙う買い手です。例えば、良い商品を持つ会社を買い、自社の販売網で顧客を広げる、といった狙いがあります。
製品と販売網を組み合わせられるシナジーバイヤーを、譲渡先候補として探す。
間違えやすい点ストラテジックバイヤーと近い意味で使われる呼び方です。追加の効果を期待していても実現する保証はなく、法令で定められた別種の買い手の資格ではありません。
出典
タナベコンサルティング「フィナンシャルバイヤー」 ↗
用語本文・シナジーバイヤー/ストラテジックバイヤーという呼称の説明のみ参照
東海東京証券「ストラテジック・バイヤー」 ↗
用語本文・自社の事業戦略に基づく買収者の説明
シニアローン
しにあろーん
借り手が返済できなくなったとき、返済順位を低くした借入れなどより先に支払いを受ける立場の融資です。M&Aで買収資金を借りる場合にも使われます。名前の「シニア」は、借り手の年齢ではなく、返済順位の高さを表しています。
買収資金のシニアローンについて、返済順位、担保、金利、返済期限を確認する。
間違えやすい点優先して返してもらえることと、全額返ってくることは別です。財産が足りなければ損失も生じます。「必ず担保付き」「すべての債権より優先」とも限らず、契約内容を確認します。
出典
三井住友銀行掲載「投資信託説明書」 ↗
シニアローン・劣後債権者より上位の権利、担保と回収リスク
支配権プレミアム
しはいけんぷれみあむ
会社の経営方針を決める力を得られることに対し、株式の価値に上乗せして考える部分です。少しの株式を持つ場合と、経営者の選任などを左右できるまとまった株式を持つ場合とでは、買い手にとっての価値が違うことがあります。
経営を支配できる株式を取得するため、支配権プレミアムを含む評価かどうか確認する。
間違えやすい点上乗せ率が法律で一律に決まっているわけではありません。買収価格が市場株価より高い理由には事業を組み合わせる効果などもあり、差額のすべてを支配権だけで説明しません。
出典
経済産業省「企業買収における行動指針」 ↗
4.1.1.2 事前取得・支配権プレミアム、2.2.1 買収の経済的意義
ストライク「支配権プレミアム」〔用語の用例〕 ↗
経営支配・影響に対応する価格の上乗せ
資本
しほん
会社が事業を行うための元手を指す言葉です。財務では、借入金などの他人資本と、出資や蓄積した利益からなる自己資本に分けて考える場合があります。M&Aでは、買収資金をどう用意するか、対象会社の元手がどう構成されているかを確認します。
買収に使う資本を、借入れと出資でどのように組み合わせるか検討します。
間違えやすい点登記や決算書に載る「資本金」だけを意味するとは限りません。会計の文脈では株主資本などを指して使うこともあります。資産が何に使われているかという話と、その元手を誰が出したかという話を分けて読みます。
資本業務提携
しほんぎょうむていけい
株式を持つなどのお金のつながりと、販売・開発など仕事上の協力を組み合わせる提携です。例えば、相手に出資して株主になるとともに、一緒に商品を開発します。何に協力するか、どの程度の株式を持つかを決めます。
製造会社が販売会社へ出資し、共同販売を行う資本業務提携を結ぶ。
間違えやすい点業務提携だけなら株式の保有を伴わないこともあります。資本業務提携でも、相手を子会社にしたり、会社を合併したりするとは限りません。
出典
公正取引委員会・経済産業省「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」 ↗
第2(事業連携に関する契約)/第3(出資に関する契約)
東急不動産「東急不動産HDとチューリングで資本業務提携」 ↗
2025年11月17日発表/冒頭の契約締結・出資・共同実証の説明
資本コスト
しほんこすと
会社がお金を使うに当たり、資金を出す人から求められる収益の水準です。借入金のコストだけでなく、株主が期待する利益も考慮します。買収や設備投資が、その資金を使うだけの収益を生むか検討するときに使います。
買収後に期待する収益が、資本コストに見合うかを検討します。
間違えやすい点決算書に費用として載る利息だけを指す言葉ではありません。株主の期待は、支払額が決まった請求書とも異なります。会社全体の資金を見る場合は、借入れと出資の割合を踏まえた加重平均資本コストなどを使います。
資本参加
しほんさんか
会社の株式などを取得し、出資者としてその会社に関わることです。新しく発行する株式を引き受ける場合も、既存株主から株式を買う場合もあります。M&Aや提携では、株主としての関係を持つことで協力を深めるときなどに使われます。
取引先の株式の一部を取得し、資本参加を通じて連携を強めます。
間違えやすい点必ず相手会社を子会社にする、という意味ではありません。持株割合や議決権、契約内容で関わり方が変わります。また、既存株主から株式を買うだけなら、通常、代金はその株主に入り、相手会社の資金が直接増えるわけではありません。
出典
日本取引所グループ「BOOSTRYへの資本参加に関する契約締結のお知らせ」 ↗
2023年3月30日:既存株主からの株式一部譲渡による資本参加の実例
資本資産評価モデル
しほんしさんひょうかもでる
別名・英字:CAPM
株式などのリスクに対して、投資家がどれほどの収益率を求めるかを考える理論です。CAPM(キャップエム)ともいいます。市場全体の値動きとの連動の強さなどを使い、M&Aでは株主の資金コストを見積もる材料になります。
資本資産評価モデルを使い、株主が求める収益率を見積もります。
間違えやすい点将来の株価や実際の利益を当てる計算式ではありません。幅広く分けて投資するなどの前提を置き、市場全体と連動するリスクを扱います。会社固有のリスクをすべて一つの数字で解決できるわけではありません。
資本性ローン
しほんせいろーん
別名・英字:資本性劣後ローン
通常の借入れより返済順位が低いなど、出資に近い性質を持つ借入金です。一定の条件の下で、金融機関が会社の財務状態を評価するときに自己資本に近い扱いをするものがあります。事業の成長や再生を支える資金調達の選択肢になります。
資本性ローンの返済条件と、金融機関の評価上の扱いを確認します。
間違えやすい点株式による出資ではなく、会計上は借入金などの負債です。返済義務がなくなるわけでもありません。公庫の制度には期限一括返済などの特徴がありますが、条件や資本とみなす範囲は制度・契約ごとに確認します。
出典
日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」 ↗
「その他」及び「資本性ローンの特徴」:資産査定上の扱い、劣後性、期限一括返済
日本政策金融公庫「資本性ローンご契約にあたって 重要事項のご説明」 ↗
契約・返済条件及び利率の判定(2025年4月版)
締め出し合併
しめだしがっぺい
合併の際、対象となる株主に合併後の会社の株式ではなく、現金などを渡し、その人たちが株主として残らないようにする方法です。英語ではスクイーズアウト・マージャーと呼ばれ、少数株主を整理する取引の説明に登場します。
締め出し合併で株主に渡す金額と、合併後に誰が株主として残るかを確認する。
間違えやすい点スクイーズアウトは、少数株主を株主でなくする手続の広い呼び名で、合併以外の方法もあります。締め出し合併は、そのうち合併を利用する場合に着目した言葉です。
シャークリペラント
しゃーくりぺらんと
別名・英字:シャーク・リペラント
望まない買収を難しくするため、会社の基本ルールなどにあらかじめ設ける仕組みを指す米国由来の呼び名です。取締役を一度に入れ替えにくくしたり、重要な決定に多くの賛成を必要としたりする方法が例として挙げられます。
米国企業の買収防衛策を調べ、シャークリペラントとしてどの規定が設けられているかを読む。
間違えやすい点一つの決まった法律上の手続名ではなく、複数の防衛策をまとめて呼ぶ言葉です。経営陣を守ることと株主の利益を守ることが一致するか、各仕組みの内容で判断します。
出典
Duke大学 Campbell R. Harvey「Hypertextual Finance Glossary」 ↗
Shark repellant・企業の基本ルールを用いる買収対抗策
借地権譲渡
しゃくちけんじょうと
建物を持つために他人の土地を使う権利を、別の人や会社へ移すことです。事業を売る際、借りた土地の上に工場や店舗があれば、その土地を買い手も使い続けられるかを確認します。土地そのものを売ることとは異なります。
工場の事業譲渡に伴い、建物と借地権を買い手へ渡す条件を地主と相談する。
間違えやすい点土地の賃借権を譲る場合は、原則として地主の承諾が必要です。借地権の種類によって扱いが異なり、一定の場合には裁判所へ承諾に代わる許可を求める制度もあります。
社長
しゃちょう
会社の最高責任者などに使われる社内の肩書です。会社法で定める代表取締役とは別のもので、社長と代表取締役を同じ人が務める会社もあります。会社を代表して契約する権限は、肩書だけでなく実際の選定や登記を確認します。
M&Aの契約を結ぶ前に、社長が会社の代表者として登記されているか確認する。
間違えやすい点社長だから必ず代表取締役とは限りません。一方、相手方を保護する法律の規定もあるため、肩書だけを見て契約が有効か無効かまで決めつけることもできません。
出典
会社法 ↗
第349条(株式会社の代表)/第354条(表見代表取締役)
ジューイッシュ・デンティスト
じゅーいっしゅでんてぃすと
古い買収防衛の用語集で、買収を提案した側に不利な情報を報道機関などへ伝え、その信用や買収提案への支持を下げようとする広報戦術を指す呼称です。正式な制度名ではなく、過去の市場用語を読むために掲載しています。
古いM&A資料のジューイッシュ・デンティストという記述を、買収をめぐる広報戦術の呼称として読む。
間違えやすい点民族や宗教の特徴を表す言葉として扱いません。事実に基づく問題提起と、根拠のない情報の拡散や中傷は別であり、この呼称は後者を認める意味ではありません。
出典
ストライク「ジューイッシュ・デンティスト」〔旧呼称の用例〕 ↗
用語本文・買収者の信用へ働きかける広報戦術。由来説は採用しない
近畿大学中央図書館「ジューイッシュ・デンティストについて知りたい」〔国立国会図書館レファレンス協同DB〕 ↗
2012年の用語照会記録。語源の事実確認資料とは扱わない
収益拡大
しゅうえきかくだい
経営の説明で、売上や事業から得る利益を増やすことを広く指す表現です。M&Aでは、相手の販売先で自社商品を売るなどの効果が考えられます。計画を読む際は、何の金額を増やす話なのか確認します。
買収後の収益拡大策として、新しい販売先から得る売上と必要な費用を見積もる。
間違えやすい点会計上の収益は売上などを指し、そこから費用を差し引いた利益とは異なります。「収益拡大」が売上増の話なのか利益増の話なのかを分け、手元のお金が増える時期も別に確認します。
出典
中小企業庁「中小企業の会計31問31答」問5 ↗
損益計算書:収益と費用、その差額としての利益
中小機構 J-Net21「資金繰りとは」 ↗
利益と資金、収入と収益の違い
中小企業庁「2024年版 中小企業白書」 ↗
第2部第3章第2節・中小企業の成長に向けた取組、成長戦略としてのM&A
収益還元法
しゅうえきかんげんほう
事業や資産が将来生むと見込む利益・収入を基に、いまの価値を見積もる方法です。安定した利益を一定の率で割って評価する方法などがあります。資産をいくら持つかだけでなく、どれほど稼げるかを価格に反映したいときに使います。
安定して見込める利益と事業のリスクを基に、収益還元法で評価します。
間違えやすい点売上高をそのまま足す方法ではありません。使う収益の範囲や将来の続き方、計算に使う率を確認します。毎年の収支を細かく予測するDCF法を含めて広く呼ぶ場面もあり、具体的な算式を確かめる必要があります。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第10号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」 ↗
第362項(3):収益還元法等のインカム・アプローチ
国土交通省「不動産鑑定評価基準」 ↗
IV 収益還元法:直接還元法・DCF法(不動産分野での用法)
従業員承継
じゅうぎょういんしょうけい
会社の役員や従業員が後継者となって、事業を引き継ぐことです。会社の仕事や顧客を知っている人に託せる一方、経営者としての育成や、株式を買い取る資金などの準備が必要になります。親族以外の社内の人へ引き継ぐ場合に使う呼び方です。
長年働いている営業部長への従業員承継を検討し、後継者教育と株式取得の資金計画を立てる。
間違えやすい点単に従業員の雇用を買い手企業が続けることとは違います。従業員が経営を担う後継者になるという意味です。また、社長の役職を引き継ぐことと、会社の株式を取得することは、それぞれ検討します。
従業員リテンション
じゅうぎょういんりてんしょん
従業員に働き続けてもらうための取り組みです。M&Aでは、会社の変化への不安や処遇の見直しによって重要な人材が辞めないよう、説明や面談、役割・評価・報酬の整備などを行います。事業の知識や顧客との関係を維持するためにも重要です。
買収後の方針を従業員へ説明し、面談と処遇の確認を通じて従業員リテンションを進める。
間違えやすい点報酬を上げることだけではありません。将来の役割や働き方を共有し、不安を解消する工夫も含みます。退職を一方的に禁止する意味ではなく、従業員が継続して働く理由や環境を整えることが中心です。
出典
アビームコンサルティング「PMIにおける従業員リテンション」(2025年2月25日) ↗
3 従業員リテンション施策例と特徴:心理的施策と金銭的施策
PwC Japan「M&Aにおける人事デューデリジェンスの重要性」 ↗
経営者や主要人材の離職リスク・統合後の人事課題
取得原価の配分
しゅとくげんかのはいぶん
別名・英字:PPA/取得原価配分
買収で取得した事業などの金額を、受け入れた土地・設備・権利などの資産と、引き受けた負債へ割り当てる会計上の作業です。PPA(ピー・ピー・エー)とも呼びます。何にいくらの価値があるかを整理し、買収後の決算に反映するために行います。
取得原価の配分で、設備と顧客関連の権利などを区別して評価します。
間違えやすい点代金を売り手の株主へ分ける話ではありません。原則として買収時点の価値で資産と負債を評価し、資産から負債を引いた評価額と会計上の取得額との差を、のれんなどとして扱います。配分は買収後の費用や利益にも影響します。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準」 ↗
第28〜32項:取得原価の配分・識別可能資産及び負債・のれん
企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第10号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」 ↗
第51〜53項:配分方法の概要
取得条項付株式
しゅとくじょうこうつきかぶしき
あらかじめ決めた出来事が起きたとき、会社が株主の同意なしに取得できる条件の付いた株式です。取得する条件や、引換えに渡すお金・別の種類の株式などを定款で決めておきます。
取得条項付株式について、会社が取得できる条件と、その際に株主へ渡すものを調べる。
間違えやすい点株主が会社に取得を求める取得請求権付株式とは、きっかけを作る側が違います。会社がいつでも無条件に取り上げられるという意味ではありません。
取得請求権付株式
しゅとくせいきゅうけんつきかぶしき
株主が会社に対し、自分の株式を取得してほしいと請求できる条件の付いた株式です。いつ請求できるか、会社が引換えに何を渡すかなどを定款で決めます。出資した人が資金を回収する方法として設計する場合があります。
取得請求権付株式を持つ株主が、定款の条件に従って会社へ取得を請求する。
間違えやすい点会社側の条件で取得する取得条項付株式とは異なります。請求権があっても、請求期間や会社が支払える財産の制限などを無視できるわけではありません。
守秘義務契約
しゅひぎむけいやく
別名・英字:CA/NDA/秘密保持契約
交渉相手から受け取る会社情報などを、決めた目的以外に使わず、外部へ漏らさないと約束する契約です。秘密保持契約、NDA、CAとも呼ばれます。M&Aでは社名、決算、顧客情報などを詳しく見せる前に、情報の扱いを取り決めます。
詳しい決算資料を渡す前に守秘義務契約を結び、共有できる担当者や専門家の範囲を確認する。
間違えやすい点売買そのものを約束する契約ではありません。何が秘密情報か、誰に共有できるか、交渉終了後の返却・削除をどうするかなどを定めます。契約があっても、必要以上の情報を無制限に開示してよいわけではありません。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
用語集「秘密保持契約」・企業概要書開示前の秘密保持契約
日本公認会計士協会「事業承継支援マニュアル」 ↗
第2章Ⅲ1(5)「対象会社の情報開示」170頁:情報開示前の秘密保持契約
主要株主
しゅようかぶぬし
大きな持分を持つ株主を指す言葉です。法律や開示制度では具体的な基準があり、例えば金融商品取引法163条では、原則として総議決権の10%以上を持つ株主を指します。資料を読むときは、どの制度の定義かも確認します。
買収で議決権の保有割合が変わり、主要株主の異動に当たるかを確認する。
間違えやすい点最も多く株式を持つ「筆頭株主」や、会社を支配する株主と必ず一致するわけではありません。また、株数の割合と議決権の割合が異なる場合もあるため、単純に発行株式数だけで判定しないようにします。
出典
日本取引所グループ「用語集 主要株主」 ↗
上場規程402条・金融商品取引法163条1項の定義
種類株式
しゅるいかぶしき
配当の受け取り方、株主総会で投票できる事項などについて、内容の違う複数の種類を設けた株式です。例えば、配当を優先して受ける代わりに投票権を制限するなど、お金の権利と経営に関わる権利を組み合わせます。
買収対象の会社に種類株式があるため、種類ごとの権利と保有者を確認する。
間違えやすい点同じ1株でも、種類が違えば権利の内容が同じとは限りません。株数の割合だけで、受け取る配当や経営を決める力を判断しないことが大切です。
出典
会社法 ↗
第108条(異なる種類の株式)
純資産
じゅんしさん
貸借対照表という会社の財産の一覧で、資産の総額から負債の総額を引いた部分です。出資を受けたお金や、事業で蓄えた利益などが含まれます。会社の財務状態を把握するとき、借入金などの負債と合わせて確認する基本の数字です。
総資産から負債を差し引き、純資産がどのくらい残るか確認します。
間違えやすい点使える現金がその金額だけある、という意味ではありません。また、帳簿上の純資産と会社を売る価格は別です。連結決算や指標の計算では、非支配株主の持分などを含むかによって対象が違うこともあります。
出典
純資産価額法
じゅんしさんかがくほう
相続税や贈与税で非上場株式を評価する「純資産価額方式」を指す呼び方です。会社の資産・負債を原則として相続税評価のルールで見直し、評価差額に対応する法人税等の調整も行います。自社株を相続・贈与する際の税額計算に関わります。
自社株を相続するので、純資産価額法が適用されるか確認します。
間違えやすい点M&Aの時価純資産法と、名前が似ていても同じ計算とは限りません。帳簿の純資産を株数で割るだけでもありません。会社の規模や株主の区分などにより適用する方式が変わり、非上場株式すべてに一律適用するわけではありません。
出典
国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」 ↗
対象税目・原則的評価方式(2)小会社及び特例的評価方式
純資産法
じゅんしさんほう
会社の資産から負債を差し引いた純資産に着目し、株式などの価値を考える評価方法です。帳簿の金額を基にする方法や、資産・負債をいまの価値に見直す方法があります。会社の財産を土台に、M&Aの価格の目安を検討します。
純資産法の計算が、帳簿ベースか時価ベースかを確認します。
間違えやすい点純資産の金額を一つ出せば価格が決まる、という方法ではありません。価値の範囲や資産・負債の評価方法を明確にします。将来の収益を基にする方法と併せ、会社の強みを見落としていないか検討します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「コスト・アプローチ」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
IPEV Board「International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines, December 2022」 ↗
Section I 3.9 Net Assets
純有利子負債
じゅんゆうりしふさい
別名・英字:Net Debt/ネットデット
利息を支払う借入金や社債などの合計から、現預金などを差し引いた金額です。ネットデットとも呼びます。手元のお金を考慮すると、実質的にどれほど借入れが残るかを捉え、M&Aで事業の評価額と株式の価格をつなぐ調整などに使います。
事業の評価額から株式価格を考えるため、純有利子負債の内容を確認します。
間違えやすい点すべての負債を合計した金額ではありません。また、差し引く現預金や、借入れ同様に扱う項目の範囲は資料・契約で違います。使途に制限のある預金などを自由に返済へ使えると考えず、計算の定義を確かめます。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「企業価値」 ↗
純有利子負債と現預金、企業価値と株式価値の関係
ジョイントベンチャー
じょいんとべんちゃー
複数の会社が、お金や技術、人材などを持ち寄って共同で事業を行う仕組みです。JVとも略されます。M&Aや提携の説明では、共同出資で合弁会社を作り、一緒に運営する形を指すことがよくあります。
海外での販売を共同で進めるため、ジョイントベンチャーの役割分担と出資比率を協議する。
間違えやすい点会社同士が一つになる合併とは異なります。また、建設分野には新会社を作らず工事を共同で行うJVもあり、名称だけで会社の設立があるとは判断せず、契約や組織の形を確かめます。
出典
公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」 ↗
2019年12月改定版・第1の1(1)ウ 共同出資会社の説明
国土交通省「共同企業体制度(JV)」 ↗
建設工事を共同で受注・施工する事業組織体という用法
小企業プレミアム
しょうきぎょうぷれみあむ
規模の小さな会社への投資で、追加的なリスクがあると考えて、投資家が求める収益率に上乗せする部分です。企業の価値を見積もる際、資金のコストを調整する方法の一つとして使われます。規模に関するリスクをどう評価したか確認するための言葉です。
評価に加えた小企業プレミアムについて、根拠と他のリスク調整との重複を確認します。
間違えやすい点小さい会社だから買収価格を上乗せする、という意味ではありません。高い収益率を求めると、同じ将来収入でも評価額は低くなります。上乗せの必要性や大きさには議論があり、どの会社にも決まった率を機械的に加えるものではありません。
出典
Aswath Damodaran(NYU Stern)「Private Company Valuations」 ↗
スライド8「Small Cap Premium」・13「Build-up Approach」:追加プレミアムと二重計上への批判的検討
条件交渉
じょうけんこうしょう
売り手と買い手が、それぞれの希望や調査結果を踏まえ、取引の内容を話し合って調整することです。M&Aでは価格だけでなく、代金の支払方法、従業員の処遇、経営者保証、引継ぎ時期や契約違反時の責任なども交渉の対象になります。
条件交渉で、売却価格とともに、社長の保証を解除する方法と従業員の雇用方針を確認する。
間違えやすい点価格の値上げ・値下げだけを意味するわけではありません。支払時期や負担する責任が違えば、同じ価格でも取引の意味は変わります。口頭の了解と契約書の記載が食い違わないよう、合意事項を整理します。
出典
日本公認会計士協会「事業承継支援マニュアル」 ↗
第2章Ⅲ:第三者売却のプロセス・売却価格の決定・譲渡契約書
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
基本合意・最終契約の調整、経営者保証の取扱い
証券取引等監視委員会
しょうけんとりひきとうかんしいいんかい
証券市場で不公正な取引や虚偽の開示などがないかを監視・調査する、金融庁に置かれた機関です。インサイダー取引などを調べ、必要に応じて行政処分や課徴金を求める勧告、刑事事件の告発などを行います。
上場会社の買収情報を使った不公正な売買は、証券取引等監視委員会の調査対象になり得る。
間違えやすい点委員会が裁判所のように有罪判決を出すわけではありません。調査、勧告、告発と、金融庁による処分や裁判の役割を分けて覚えます。M&Aの契約条件を当事者に代わって決める機関でもありません。
出典
証券取引等監視委員会「組織及び事務概要」 ↗
「3)事務概要」市場監視・取引調査・開示検査・犯則調査・勧告等
詳細情報
しょうさいじょうほう
M&Aの資料では、売却を考えている会社の名前、事業、売上や利益、財産や借入れなど、具体的な中身を伝える情報を指すことがあります。相手と秘密を守る約束をした後に開示する、企業概要書などの説明で使われる呼び方です。
秘密保持契約を結んだ後、会社名や財務内容を含む詳細情報を受け取り、買収の検討を進める。
間違えやすい点法律で統一された書式や書類名ではなく、文脈によって指す情報が変わります。社名を伏せた初期資料と、名前や決算内容まで開示する資料とを区別して読みます。
出典
ストライク「詳細情報」〔用語の用例〕 ↗
企業名・事業内容・財務情報と秘密保持契約後の開示
上場
じょうじょう
会社の株式などが、証券取引所で売買できるものとして認められることです。企業には審査があり、上場後も業績や重要な会社情報を公表するなどのルールが求められます。未上場の会社が初めて株式を公開する場面では、IPOという言葉も使います。
上場を目指す方針について、資金調達の方法と情報開示の体制を検討する。
間違えやすい点上場しただけで、株主が持つ全株式が売れたり、売却代金が会社へ入ったりするわけではありません。また、会社法上の「公開会社」は株式の譲渡制限に関する区分で、上場会社と同じ意味ではありません。
出典
金融経済教育推進機構掲載・日本証券業協会「上場制度」 ↗
上場の定義・上場審査基準
SMBC日興証券「IPO/新規公開株式」 ↗
株式公開と上場後の法定開示・適時開示
会社法 ↗
第2条第5号:公開会社の定義
ショウストッパー
しょうすとっぱー
買収を進められなくする法的な障害や、それを利用した対抗策を指す呼び名です。買収防衛の文脈では、法令違反の問題を裁判で争い、買収の差止めを求める場合などがあります。資料によっては、取引を止める重大な問題を広く指します。
買収条件の検討でショウストッパーとなり得る規制上の問題がないか、専門家に確認する。
間違えやすい点単に交渉が少し遅れることとは区別します。また、裁判を起こせば必ず買収が止まるという意味ではありません。法的な対抗策を指すのか、取引全般の重大障害を指すのか文脈を見ます。
出典
Latham & Watkins「Global M&A Book of Jargon」 ↗
冊子201頁Show Stopper
CMS「Glossary of Key M&A and Corporate Terms」 ↗
100頁 Show Stopper=Deal Breaker
焦土作戦
しょうどさくせん
別名・英字:スコーチドアースディフェンス
買収される側が、大切な事業や資産を売る、多額の借入れを抱えるなどして、自社を買う魅力を下げようとする防衛策の呼び名です。買収を難しくする代わりに、自社の稼ぐ力や財務状態も傷つけるおそれがある点に特徴があります。
過去の買収事例で、主力事業の売却が経営改善なのか、焦土作戦としての対応なのかを検討する。
間違えやすい点業績を良くするための通常の事業売却とは、狙いが異なります。買収を防げれば成功と評価するものでもなく、株主や取引先への影響、経営者の責任が問題になります。
出典
Latham & Watkins「Global M&A Book of Jargon」 ↗
冊子190頁Scorched Earth
譲渡承認取締役会
じょうとしょうにんとりしまりやくかい
譲渡制限株式について、買い手が株式を取得することを会社として認めるか、取締役会で決める場面を指す言い方です。誰が何株を誰へ渡すかを確認し、その承認の有無を記録します。独立した法律上の機関名ではありません。
株式の売買を実行する前に、譲渡承認取締役会の決議と議事録を確認する。
間違えやすい点すべての会社で取締役会の承認が必要なわけではありません。取締役会を置かない会社では原則として株主総会が決め、定款に別の定めがある場合もあります。
出典
会社法 ↗
第136条〜第139条。第139条第1項は定款の別段の定めを認める。
譲渡所得税
じょうとしょとくぜい
個人が株式や土地などの資産を売って得た所得にかかる税金を指す、一般的な呼び方です。M&Aでオーナー個人が自社株を売る場合は、売却代金から取得費や認められる手数料などを差し引いて所得を計算し、それに対する税金を検討します。
株式売却後の手取りを見積もるため、取得費と売却にかかった費用を整理して譲渡所得税を確認する。
間違えやすい点売却代金の全額にそのまま税率を掛けるわけではありません。株式、土地建物、その他の資産では課税方法が異なります。また、会社が事業や資産を売る場合は、個人の譲渡所得ではなく法人税等の検討になります。
出典
国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」 ↗
概要・上場株式等/一般株式等に係る譲渡所得等の計算方法
国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」 ↗
譲渡所得の定義、土地建物・株式等とその他の資産に関する課税方法の区分
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」参考資料 ↗
事業譲渡の税務:譲渡対価の法人への帰属、法人税等の課税
譲渡制限会社
じょうとせいげんがいしゃ
発行するすべての株式について、譲渡による取得に会社の承認を要する会社を指す呼び名です。会社法上は「公開会社ではない株式会社」、一般には非公開会社と呼ばれます。株主の顔ぶれを管理したい会社で用いられます。
対象会社が譲渡制限会社かを、定款と登記で確認する。
間違えやすい点上場していない会社すべてが、この意味での非公開会社とは限りません。一部の株式に譲渡制限がない会社は、会社法上の公開会社に当たる場合があります。
出典
会社法 ↗
第2条第5号(公開会社)・第17号(譲渡制限株式)
譲渡制限株式
じょうとせいげんかぶしき
他の人へ譲り渡すなどして取得する際に、会社の承認が必要となる株式です。会社が、望ましくない相手が株主になることを防ぐために設ける仕組みです。制限の内容は、会社の基本ルールである定款に書かれています。
対象株式が譲渡制限株式なので、売買の実行前に会社の承認手続を確認する。
間違えやすい点売買が一切できない株式という意味ではありません。承認を誰が決めるかは会社の機関構成や定款によって異なり、必ず取締役会が行うとは限りません。
出典
会社法 ↗
第2条第17号/第136条・第139条
消費税
しょうひぜい
商品やサービスの消費に広く負担を求める税金です。商品等の価格に含まれ、原則として事業者が売上にかかる税額から仕入れ等にかかる税額を差し引いて納めます。M&Aでは、何を売買するかによって、課税されるものとされないものが分かれます。
事業譲渡の価格を決める際、設備、土地、営業権などを分けて消費税の取扱いを確認する。
間違えやすい点M&Aの代金すべてに同じようにかかる税ではありません。株式や土地の譲渡は原則として非課税ですが、事業譲渡に含まれる設備や営業権などは課税対象となり得るため、資産ごとの区分が必要です。
出典
国税庁「No.6101 消費税の基本的なしくみ」 ↗
消費税の負担者・課税のしくみ。基準日後の税率等の記載は本文に採用しない
国税庁「No.6201 非課税となる取引」 ↗
土地の譲渡・有価証券等の譲渡
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」参考資料 ↗
事業譲渡の税務:減価償却資産等に対する消費税
商標権譲渡
しょうひょうけんじょうと
別名・英字:商標権の譲渡
登録された商品名やロゴなどを、指定された商品・サービスについて独占的に使える権利を、別の人や会社へ移すことです。事業と一緒にブランドを引き継ぐ場合などに使います。どの登録商標を移すかを確認します。
食品事業の買収に合わせ、主力商品の商標権譲渡と移転登録の手続を進める。
間違えやすい点使用を許すライセンス契約とは違い、権利者自体が変わります。通常の譲渡は、契約を結ぶだけでなく移転の登録が必要で、商標の種類による制約も確認します。
商法
しょうほう
商売をする人や商取引について、基本的なルールを定める法律です。商号、営業の譲渡、商人同士の売買などを扱います。M&Aでは会社法や民法なども関係するため、商法だけで必要なルールがすべて分かるわけではありません。
個人事業の営業を譲る契約について、商法に定められたルールを確認する。
間違えやすい点現在、会社の設立・運営・合併などの中心となる法律は会社法です。昔の資料では会社のルールも商法に書かれているため、資料の時点と現行法の区別が必要です。
情報開示
じょうほうかいじ
会社の経営や財務、取引に関する情報を、必要な相手へ伝えることです。M&Aでは売り手が買い手候補へ資料を見せる場面などを指し、会社名、決算書、契約内容などを、検討段階に応じて共有します。
秘密保持の約束と売り手の同意を確認してから、買い手候補への情報開示を進める。
間違えやすい点全員に公開することだけを意味しません。M&Aの候補先への限定的な共有と、上場会社が投資家向けに行う法令・取引所規則に基づく開示では、対象、内容、時期のルールが異なります。
出典
東京都事業承継・引継ぎ支援センター「M&A基礎知識」 ↗
M&A一般用語・ノンネーム、秘密保持契約
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
2024年8月・ネームクリア時の同意、情報の取扱い
東京証券取引所「2021年改訂コーポレートガバナンス・コード」 ↗
2021年版・基本原則3 適切な情報開示と透明性の確保
情報漏洩対策
じょうほうろうえいたいさく
社名、顧客情報、決算資料などが、許可のない相手へ伝わることを防ぐ取り組みです。M&Aでは、閲覧できる人や資料を限定し、秘密保持の約束、送付先確認、閲覧権限の管理などを組み合わせます。交渉終了後の返却・削除も検討します。
買い手候補へ資料を渡す前に、送付先と閲覧できる人を確認して情報漏洩対策を徹底する。
間違えやすい点秘密保持契約を結ぶだけで、漏洩を防げるわけではありません。技術的な防御に加え、誰が何の目的で情報を扱うかというルールと運用が必要です。誤送信や社内での不用意な共有にも対応します。
出典
IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(2026年3月27日公表) ↗
情報資産の把握・アクセス制御・組織的な対策
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
秘密保持・情報の段階的な開示・ネームクリア
正味現在価値
しょうみげんざいかち
別名・英字:NPV
将来回収すると見込むお金を今の価値に換算し、投資で支払うお金の今の価値を引いた金額です。NPVとも呼びます。お金を回収するまでの時間やリスクを考慮して、買収や設備投資に取り組む価値があるか検討するときに使います。
買収代金と将来の収支予測から、正味現在価値がプラスになるか確認します。
間違えやすい点将来の入金を、そのまま合計した金額ではありません。プラスなら確実に利益が出るという保証でもなく、予測や換算に使う率によって変わります。回収額の価値と投資額を、同じ時点にそろえて比べることが大切です。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「NPV」 ↗
「回答」及び「さらに詳しく」
ショートリスト
しょーとりすと
別名・英字:ショート・リスト
M&Aの相手候補を広く集めた一覧から、条件に合う相手を絞り込んだ一覧です。事業の相性、希望する地域、資金の用意ができるかなどを比べ、詳しく検討したり話を持ちかけたりする候補を選びます。
事業の相性と買収資金を確認し、候補先のショートリストを更新する。
間違えやすい点広く候補を集めるロングリストより、検討対象を絞った段階です。載っていても成約が決まったわけではなく、候補数や作成・接触の順序も案件によって異なります。
出典
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ロングリスト」 ↗
ロングリストから一定条件で候補を絞り込むショートリストの説明
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
2024年8月・第1章 中小M&Aの手法と手続、参考資料
新株予約権
しんかぶよやくけん
あらかじめ決められた条件で権利を使い、会社から株式を受け取れる権利です。通常は、決められた期間内に所定のお金を払い込むなどして使います。権利を持っている段階と、実際に株主になる段階は区別します。
買収前の調査で、新株予約権が使われた場合に株数と持株割合がどう変わるか確認する。
間違えやすい点株式そのものではなく、将来株式を取得するための権利です。従業員向けの報酬として使うストックオプションは、その利用例の一つです。
出典
会社法 ↗
第2条第21号/第236条(新株予約権の内容)
新規事業M&A
しんきじぎょうえむあんどえー
自社がまだ手がけていない事業へ進むために、会社や事業を買うなどするM&Aです。必要な技術、人材、顧客との関係を引き継ぐことで、一から準備する場合より早く事業を始めることを狙います。
新規事業M&Aの候補を選ぶ前に、参入したい分野と自社に足りない力を整理する。
間違えやすい点正式な法律上の手法名ではなく、M&Aの目的を表す呼び方です。相手が新しい会社とは限らず、既存企業の事業も対象になります。買えば直ちに運営できるとは限らず、引継ぎ後の体制も考えます。
出典
日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資の活用法」 ↗
小規模事業者を対象とするM&A、株式・事業譲渡、取得後の資金に関する説明。2019〜2022年度の実績に基づく記事
中小企業庁「2024年版 中小企業白書」 ↗
第2部第3章第2節・中小企業の成長に向けた取組、成長戦略としてのM&A
人権デューデリジェンス
じんけんでゅーでりじぇんす
別名・英字:人権DD
事業が働く人や地域の人などの権利を傷つけていないかを調べ、問題を防ぎ、改善し、対応を確かめる継続的な取組です。自社だけでなく仕入先なども対象になります。M&Aでも、買収先の労働環境などを確認する視点になります。
買収前の人権デューデリジェンスで、仕入先の児童労働や強制労働のリスクを調べる。
間違えやすい点会社の損失や買収価格だけを見る調査ではありません。影響を受ける人の権利を中心に考え、買収前の一度の点検で終えず、対応や改善を続けます。
出典
経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」 ↗
2022年9月公表/添付ガイドライン4 人権デュー・ディリジェンス、5 救済
人事デューデリジェンス
じんじでゅーでりじぇんす
別名・英字:HR DD/人事DD
買収先の従業員、賃金、雇用契約、人事制度や職場の状況を調べることです。未払い残業代などの問題に加え、重要な人材が辞める可能性や、買収後に制度を合わせる難しさなども確認し、人に関わる費用や運営上の課題を把握します。
人事デューデリジェンスで退職金制度と主要人材の処遇を確認し、買収後の説明計画を立てる。
間違えやすい点社員の人数を数えたり、不正や違法行為を探したりするだけの調査ではありません。人材の強み、組織の文化、制度を変えた場合の影響も対象になります。個人情報を扱う範囲や管理方法にも配慮します。
出典
PwC Japan「M&Aにおける人事デューデリジェンスの重要性」 ↗
人事DDの調査対象・買収価格や契約への反映・買収後の統合
マーサージャパン「M&Aによる企業価値向上(リスク検証・ディール推進)」 ↗
組織・人事DD、経営者の引き留め策、報酬・雇用条件、組織風土
新設合併
しんせつがっぺい
複数の会社を合併し、それまでの会社をすべて消滅させ、新しく設立する会社へ事業や財産、契約上の権利・義務を引き継がせる手続です。既存のどちらかを残すのではなく、新しい法人を受け皿にします。
二つの会社を新設合併し、新会社で両社の事業を続ける。
間違えやすい点吸収合併は既存会社の一つが残ります。新設合併は新しい法人を作るため、社名だけを変える場合とは異なり、許認可や登記などの取扱いも確認が必要です。
出典
会社法 ↗
第2条第28号/第753条以下(新設合併契約等)
新設分割
しんせつぶんかつ
会社の事業に関する財産、契約上の権利、支払う義務などの全部または一部を、新しく作る会社へ引き継がせる手続です。複数の事業を営む会社から、一つの事業を新会社へ切り出す場面などで使われます。
製造部門を新設分割で新会社へ移し、その会社の株式を買い手へ売る。
間違えやすい点既存の会社へ移す吸収分割と違い、新しい受け皿の会社を作ります。元の会社が合併のように自動的に消える手続ではなく、引き継ぐ範囲や必要な保護手続を確認します。
出典
会社法 ↗
第2条第30号/第762条以下(新設分割計画)
親族外承継
しんぞくがいしょうけい
今の経営者の親族ではない人へ事業を引き継ぐことです。社内の役員・従業員に任せる場合も、M&Aで社外の人や会社へ渡す場合もあります。資料によって使う範囲が異なるため、誰への引継ぎを指すかを確認します。
親族に後継者がいないため、従業員や社外への親族外承継を比較する。
間違えやすい点親族外承継を、必ず社外への売却だけと考えないようにします。社内にいる人でも親族でなければ該当し得ます。実際に使う方法は株式の売買、贈与など個別に決めます。
親族間株式譲渡
しんぞくかんかぶしきじょうと
親子やきょうだいなど、親族の間で株式を移すことです。事業承継では、経営者の持つ株式を後継者の親族へ売る場面などで使われます。売買なのか無償の贈与なのかを区別し、価格、支払方法、会社の承認手続を確認します。
父が持つ会社の株式を娘へ売るため、親族間株式譲渡の価格と資金計画を決める。
間違えやすい点親族であっても自由な安値で税金を避けられるとは限りません。個人間で著しく安く売ると、通常の価値との差額について贈与税の対象になる場合があります。
出典
民法 ↗
第549条(贈与)/第555条(売買)
国税庁「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」 ↗
概要/著しく低い価額の対価であるかどうかの判定
会社法 ↗
第136条以下(株主からの承認の請求等)
親族内承継
しんぞくないしょうけい
子どもや配偶者など、今の経営者の親族へ事業を引き継ぐことです。後継者としての能力を育てることと、株式・事業用財産を渡すことの両方を考えます。親族だから自動的に経営を引き継げるわけではありません。
子どもへの親族内承継に向け、経営経験を積ませながら株式の移転を準備する。
間違えやすい点贈与や相続は財産を渡す方法であり、経営の引継ぎそのものとは別です。ほかの相続人や従業員、取引先との調整も必要になります。
信託型ライツプラン
しんたくがたらいつぷらん
将来、株式を取得できる権利をあらかじめ信託銀行などに預け、決めた条件で株主へ渡す買収防衛の仕組みです。買収者だけはその権利を使えない形にし、ほかの株主の株数を増やすことで、買収者が持つ株式の割合を下げることを狙います。
信託型ライツプランの資料で、権利を株主へ渡す条件と、誰が判断するかを確認する。
間違えやすい点信託銀行が会社を買い取って守る仕組みではありません。あらかじめ権利を預けておく点が特徴で、実際に動かす際の株主利益や判断手続も別に確認します。
人的承継
じんてきしょうけい
事業承継のうち、誰が経営を担い、決定する立場を引き継ぐかという「人・経営」の面を指す言葉です。後継者を選び、経験を積ませ、社内外から信頼されるよう準備することなどが関わります。
人的承継として後継者の育成を進め、取引先への紹介や権限移譲を行う。
間違えやすい点株式や設備を渡す資産の承継とは分けて考えます。会社分割の古い用語である「人的分割」とは、言葉は似ていますが別の話です。
出典
中小企業庁「事業承継を知る」 ↗
事業承継の構成要素/人(経営)の承継
人的分割
じんてきぶんかつ
会社の事業を分ける際に、引継ぎ先の会社の株式を、元の会社ではなく元の会社の株主が直接受け取る形を指した旧制度の用語です。古い解説や資料を読むときに出てきます。従業員を分けるという意味ではありません。
古い再編資料の「人的分割」を、現在の会社分割と株式の分配の手続に置き換えて確認する。
間違えやすい点現在の会社法では、会社分割と、株主への財産の分配である剰余金の配当を組み合わせて扱います。税法上の分割型分割という分類とも、制度を分けて読む必要があります。
出典
日本取引所グループ「剰余金の配当」 ↗
いわゆる人的分割は会社分割と剰余金の配当に該当する旨の注記
垂直型M&A
すいちょくがたえむあんどえー
商品ができて顧客に届くまでの、異なる段階を担う会社同士が組むM&Aです。材料の供給会社と製造会社、製造会社と販売会社などの組合せで、調達を安定させたり販売まで一体で進めたりする狙いがあります。
部品の安定調達を目指し、供給会社を買う垂直型M&Aを検討する。
間違えやすい点同じ市場で競争する会社を組み合わせる水平型とは異なります。異業種なら何でも垂直型になるわけではなく、取引の前後のつながりに着目します。他社の取引を妨げる影響にも注意します。
出典
公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」 ↗
2019年12月改定版・第3の2「企業結合の形態と競争の実質的制限」及び第4・第5
水平型M&A
すいへいがたえむあんどえー
同じ市場で顧客を取り合う会社同士が組むM&Aです。同じ種類の商品を売る会社や同業の店舗チェーンの買収などが当たり、顧客を増やしたり、仕入れや設備を共通にして費用を抑えたりする狙いがあります。
同じ地域の同業企業を買う水平型M&Aについて、販路拡大と競争への影響を調べる。
間違えやすい点材料の供給会社と製造会社のように取引の前後をつなぐ垂直型とは異なります。単に業種名が同じかだけでなく、競争する商品・地域も見ます。競争を大きく妨げる場合は問題になります。
出典
公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」 ↗
2019年12月改定版・第3の2「企業結合の形態と競争の実質的制限」及び第4・第5
スーイサイドピル
すーいさいどぴる
別名・英字:スーイサイド・ピル
買収を防ごうとして、自社の財務状態まで大きく傷つけるおそれのある対抗策を指す、米国の市場用語です。買収者にとっての魅力をなくそうとする一方で、負担が重くなりすぎ、会社自身が事業を続けられなくなる危険があります。
過去の買収防衛策がスーイサイドピルと呼ばれた理由を、会社に残る負担から確認する。
間違えやすい点買収者の持株割合を薄める通常のライツプランと同じ意味ではありません。自社の存続さえ危うくし得る点を表す呼称であり、安全で一般的な防衛手段を意味しません。
出典
Nasdaq「Suicide pill」 ↗
対象会社を破壊しかねない買収防衛策・過大な債務の例
ストライク「スーイサイドピル」〔用語の用例〕 ↗
持株比率の変化を契機に財務状態を悪化させる契約等の説明
SWOT分析
すうぉっとぶんせき
会社の状況を、強み・弱み・機会・脅威の四つに分けて整理する方法です。強みと弱みは技術や人材など自社の内側、機会と脅威は顧客の変化や競合の動きなど外側を見て、次に何をするかを考えます。
SWOT分析で自社の技術力と人手不足を整理し、M&Aで補いたい点を明確にする。
間違えやすい点自社の人手不足は「弱み」、市場全体での採用競争の激化は「脅威」というように、内側と外側を分けます。四つの欄を埋めるだけでなく、その組合せから行動につなげることが大切です。
出典
中小機構「マンガでわかるSWOT分析」 ↗
SWOTで事業の現状を分析、クロスSWOT分析
中小機構 J-Net21「SWOT分析をする上で自社の強みの見つけ方を教えてください」 ↗
内部環境と外部環境の整理、多面的な強みの確認
スーパーマジョリティ条項
すーぱーまじょりてぃじょうこう
別名・英字:スーパー・マジョリティ条項
合併などの重要な決定に、通常の過半数を超える、多くの賛成を必要とする条項です。主に米国の買収防衛策の説明で登場し、買収者が過半数の票を持っても、それだけでは対象の決定を通せないようにする働きがあります。
米国企業のスーパーマジョリティ条項を読み、合併に必要な賛成の割合と票数の数え方を確認する。
間違えやすい点必要な割合は条項ごとに異なり、一律の数字ではありません。日本の会社法が特定の決議に求める多数の賛成と、買収防衛のため任意に置く海外の条項とを区別します。
出典
Midas Perpetual Portfolio 米国SEC提出資料 ↗
Proxy Voting Policies・Supermajority Vote Requirements
スキーム
すきーむ
M&Aをどの方法で実行するかという取引の仕組みです。会社の株を買って経営を引き継ぐ株式譲渡、必要な事業を受け取る事業譲渡などから、引き継ぎたいものや税金、手続きを考えて選びます。
売却するのは会社全体か一部の事業かを確認し、適したスキームを比べる。
間違えやすい点ストラクチャーと重なる意味で使われます。スキームは取引手法を、ストラクチャーは誰が何を受け取り、どの順序で進めるかまで含む全体の組立てを指すことがあります。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第2版)」 ↗
2023年9月・具体的なスキーム(株式譲渡・事業譲渡等)の策定
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
2024年8月・第1章 中小M&Aの手法と手続、参考資料
スクイーズアウト
すくいーずあうと
別名・英字:スクイズ・アウト
少数の株式を持つ人に金銭などを渡し、個別の同意がなくても、その人たちが株主ではなくなる状態を作る手続の総称です。会社の株式を一人の所有者や親会社へ集め、経営を一本化する場面などで使われます。
完全子会社にするため、残る少数株主への支払いとスクイーズアウトの手続を検討する。
間違えやすい点株主同士が自由に合意して行う通常の株式売買とは異なります。必要な持株割合や決議は手法ごとに違い、価格を争うなど少数株主を守る仕組みも確認します。
出典
中小機構J-Net21「スクイーズアウトはどのような場合に使うとよいのでしょうか」 ↗
スクイーズアウトの意味・株式売渡請求と株主総会決議による方法
スケールメリット
すけーるめりっと
事業の規模を大きくすることで、商品一つ当たりなどの費用を下げやすくなる効果です。材料をまとめて買う、同じ設備で多くの商品を作るといった方法があり、規模の経済とも呼ばれます。
買収後に両社の仕入れをまとめ、スケールメリットで原材料の単価を抑える。
間違えやすい点会社を組み合わせて得る幅広い相乗効果のうち、規模による費用低下に着目した言葉です。大きくするだけで必ず得られるものではなく、管理の複雑化や設備の余りも検討します。
出典
e-Stat 日英統計用語集「スケール・メリット:ECONOMIES OF SCALE」 ↗
定義:産出規模の増加と単位当たり平均原価の低下
中小企業庁「2024年版 中小企業白書」 ↗
第2部第3章第2節・中小企業の成長に向けた取組、成長戦略としてのM&A
スタートアップM&A
すたーとあっぷえむあんどえー
新しい技術や仕組みで大きな成長を目指す会社、スタートアップが関わるM&Aです。事業会社が技術や人材を取り込むために買収する場合のほか、スタートアップ自身が他社を買う場合もあります。
スタートアップM&Aに向け、技術の強みと事業が継続できる体制を確認する。
間違えやすい点設立から日が浅い会社の売買すべてを指すとは限らず、法律上の統一的な取引分類でもありません。新規事業への進出が目的のM&Aとも重なりますが、既存事業の強化が目的の場合もあります。
出典
経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業報告書(スタートアップM&A関連)」 ↗
大企業等の事業会社とスタートアップのM&A、非財務情報とシナジー等に関する調査
経済産業省「スタートアップ政策について」 ↗
2024年資料・事業会社によるスタートアップM&Aの活用。税制の適用条件・数値は本文へ転用しない
スタッガード・ボード
すたっがーどぼーど
取締役を複数の組に分け、改選する時期をずらす仕組みです。主に米国の会社で説明される制度で、一度の株主の投票では全員を交代できないため、買収者が取締役会を入れ替えるまでに時間がかかることがあります。
米国企業のスタッガード・ボードを調べ、各組の取締役がいつ改選されるかを確認する。
間違えやすい点単に取締役を長い任期にすることではなく、組ごとに改選時期を分ける点が特徴です。日本の役員選任へそのまま当てはめず、設立された国の法律や会社の基本ルールを見ます。
出典
Midas Perpetual Portfolio 米国SEC提出資料 ↗
Proxy Voting Policies・Classified or “Staggered” Board
スタンドアローン価値
すたんどあろーんかち
別名・英字:スタンド・アローン価値
買い手との組合せによって得られる追加の効果を入れず、その会社や事業が単独で生み出す利益などをもとに考えた価値です。買収による効果と、もともと持っている稼ぐ力を分けるために使います。
買い手の販売網を使った売上増は分けて、対象事業のスタンドアローン価値を算定する。
間違えやすい点そのまま実際の売買価格になるわけではありません。また、グループを離れて独立する前提なら、新たに必要となる費用なども検討し、従来の利益をそのまま使わないようにします。
出典
経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業報告書(スタートアップM&A関連)」 ↗
本調査報告書上の用語の定義:スタンドアローン(買収企業とのシナジー等を考慮しない価値)
PwC Japan「カーブアウト」 ↗
スタンドアロン課題と財務影響の把握
スタンドアローン問題
すたんどあろーんもんだい
別名・英字:スタンドアローン・イシュー/スタンドアローン・イシュー(スタンドアローン問題)/スタンド・アローン問題
親会社や同じグループから事業を切り離したとき、それまで頼っていた仕組みが使えなくなる問題です。給与計算、会計システム、仕入れなどを自分で用意する必要が生じ、追加の費用や人員が必要になります。
売却後も給与を遅れずに支払えるよう、スタンドアローン問題を洗い出す。
間違えやすい点会社の価値を単独で見る「スタンドアローン価値」とは別の言葉です。切り離した後の業務が止まらないかを調べ、元の会社による一時的な支援も含めて対応を決めます。
出典
PwC Japan「カーブアウト」 ↗
事業切り出しに伴うスタンドアロン課題の特定、財務影響、契約面での対処
PwC Japan「カーブアウトにおける人事イシュー」 ↗
2024年4月16日・カーブアウトで発生する課題とスタンドアローンイシュー
スタンドスティル条項
すたんどすてぃるじょうこう
M&Aでは、一定期間、相手の承諾なしに株式を買い増したり、買収提案などの行動を起こしたりしないと約束する条項です。交渉のために会社の情報を渡す際などに、相手が一方的な買収へ動くことを制限する目的で使われます。
情報開示に先立ち、スタンドスティル条項の期間と、買い手に禁じる行動を確認する。
間違えやすい点売り手がほかの相手と交渉しない独占交渉の約束とは異なります。ここでは主に買い手側の行動を制限しますが、何を禁止し、どの場面で解除するかは契約ごとに違います。
出典
TXNM Energy・Troy Topco 株式購入契約〔米国SEC提出〕 ↗
2025年5月18日契約・Article VII Section 7.1 Standstill
ステークホルダー
すてーくほるだー
会社の活動から影響を受けたり、会社の活動を支えたりする人や組織です。株を持つ株主だけでなく、従業員、顧客、仕入先、お金を貸す金融機関、地域社会なども含まれ、利害関係者とも呼ばれます。
買収後の雇用や取引への影響を整理し、ステークホルダーへの説明を準備する。
間違えやすい点株主を指すストックホルダーより広い言葉です。関係者全員の希望が一致するとは限らず、誰にどのような影響があるかを具体的に把握する必要があります。
出典
東京証券取引所「2021年改訂コーポレートガバナンス・コード」 ↗
2021年版・基本原則2「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」
ストックオプション
すとっくおぷしょん
別名・英字:SO
役員や従業員などが、あらかじめ決めた価格で自社の株式を取得できる権利です。会社の成長で株式の価値が上がると利益を得られる仕組みを、働く意欲を高める報酬として使います。日本では新株予約権を利用する方法が一般的です。
買収を進める前に、従業員のストックオプションが何個残っているかを調べる。
間違えやすい点権利を受け取った時点で、すでに株式を持っているとは限りません。行使条件や期限もあります。新株予約権は資金調達など別の目的でも発行されるため、すべての新株予約権が従業員報酬とは限りません。
出典
日本取引所グループ「ストックオプション」 ↗
用語定義・新株予約権制度についての説明
ストックオプション会計
すとっくおぷしょんかいけい
会社が従業員などへ、自社株を決めた価格で買える権利を報酬として与えたときの会計処理です。現金を払わない報酬でも、働いてもらう対価を費用などに反映します。権利の価値や、働いてもらう期間に応じて、各期の決算を考えます。
ストックオプション会計による費用が、今期の利益にどう影響するか確認します。
間違えやすい点現金の支払いがないから費用もゼロ、とは限りません。会社が計上する会計上の費用と、従業員個人にかかる税金は別の話です。未上場会社や有償の権利などは取扱いも確かめ、すべて同じ処理とは考えません。
出典
企業会計基準委員会「企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準」 ↗
第4〜7項:サービス取得、費用、公正な評価額及び対象勤務期間・第13項:未公開企業
ストラクチャー
すとらくちゃー
M&Aで、誰が、何を、どの会社へ移すかという取引全体の組立てです。例えば、売りたい事業を別会社へ移してから、その会社の株を売る、といった複数の手続きのつなぎ方も含めて考えます。
事業を切り離してから株式を譲渡するストラクチャーを図にして確認する。
間違えやすい点スキームと明確に使い分けない実務もあります。「スキームは計画、ストラクチャーは法律」といった固定的な区別はせず、その資料がどこまでの仕組みを指すかを確かめます。
出典
Forvis Mazars「エムケー精工グループのホテル事業の譲渡に係るM&Aアドバイザリー業務を提供」 ↗
2025年成約案件・会社分割と株式譲渡を組み合わせたストラクチャー構築の支援実績
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第2版)」 ↗
2023年9月・具体的なスキーム(株式譲渡・事業譲渡等)の策定
ストラテジックバイヤー
すとらてじっくばいやー
別名・英字:ストラティージック・バイヤー
自社の事業を強くしたり、手がける分野を広げたりする目的で会社や事業を買う買い手です。主に事業を営む会社が当たり、相手の技術や販売先と自社の強みを組み合わせ、その後の事業成長を目指します。
自社の商品を届ける販売網を求め、ストラテジックバイヤーとして買収を検討する。
間違えやすい点主に投資資金の回収や運用益を目指すフィナンシャルバイヤーと対比されます。ただし、事業会社なら必ず高値で買う、投資ファンドなら事業を育てない、という意味ではありません。
出典
東海東京証券「ストラテジック・バイヤー」 ↗
用語本文・自社の事業戦略に基づく買収者の説明
SPAC
すぱっく
別名・英字:特別買収目的会社
他の会社や事業を買収するために設立される「特別買収目的会社」です。米国などでは、まずSPAC自体が上場して資金を集め、その後に買収先を探します。一般の事業会社が、自社事業を育ててから上場する流れとは順番が異なります。
海外のスタートアップが、SPACとの統合を通じて上場する仕組みを調べる。
間違えやすい点買収目的の会社すべてがSPACとは限りません。単に買収用の会社を作ることと、SPACの上場・投資家保護の制度は別です。ここでは海外市場の仕組みとして説明し、日本で当然に同じ上場ができるとは扱いません。
出典
日本取引所グループ「SPAC制度の在り方等に関する研究会」 ↗
2021〜2022年の制度検討資料
金融庁「日本取引所グループ金融商品取引法研究会 説明資料」(2021年4月) ↗
2.(6)SPAC(特別買収目的会社)・定義と組成から買収・合併までの流れ
スピンアウト
すぴんあうと
会社や研究組織などから、人や事業が外に出て独立することを指す言葉です。一般的な経営用語では、元の会社と出資関係を持たずに独立する場合を強調することがありますが、使い方は資料によって異なります。
研究チームのスピンアウトに向け、技術を使う権利と元の会社との関係を確認する。
間違えやすい点スピンオフと重なる意味でも使われます。名称だけで元の会社から一切支援を受けない、取引もできないとは判断せず、出資、技術の使用許可、取引の条件を個別に確認します。
出典
SMBC日興証券「スピンオフ」 ↗
用語本文・元企業との資本関係に着目した一般用語としての使い分け
東海東京証券「スピンアウト」 ↗
用語本文・元企業との関係に着目した一般用語としての説明。全契約関係の消滅を意味するものとしては使用しない
スピンオフ
すぴんおふ
会社の一部の事業や子会社を切り離し、独立して運営できるようにすることです。企業再編や税制の説明では、切り離す会社の株を元の会社の株主に配り、事業を分離する仕組みを指すことがあります。
スピンオフの説明資料を読み、独立する会社の株を誰が受け取るのか確認する。
間違えやすい点一般用語では元企業の支援や出資を伴う独立を指す説明もあります。「スピンオフは必ず資本関係が残る」とは覚えず、株主に株を配る再編なのか、独立創業の話なのかを確かめます。
出典
経済産業省「スピンオフの活用に関する手引(制度編・令和7年7月)」 ↗
2025年7月版・スピンオフの基本的な仕組み。2026年5月改訂版の制度要件は不使用
ソニーグループ「金融事業のパーシャル・スピンオフに関するご案内」 ↗
2025年実施分・SFGI株式をソニーの株主に現物配当する仕組み
SMBC日興証券「スピンオフ」 ↗
用語本文・元企業との資本関係に着目した一般用語としての使い分け
スモールM&A
すもーるえむあんどえー
小さな会社や店舗、個人で営む事業などを対象とした、比較的小規模なM&Aの呼び方です。買い手も大企業とは限らず、近隣の同業者や、すでにある事業を引き継いで独立する個人の場合があります。
店舗を引き継ぐスモールM&Aについて、購入代金と開店後に必要な資金を整理する。
間違えやすい点「売買額が何円以下」といった統一基準がある名称ではありません。小額だから調査や契約が不要という意味でもなく、取引の規模と引き継ぐ内容に応じて確認を行います。
出典
日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資の活用法」 ↗
小規模事業者を対象とするM&A、株式・事業譲渡、取得後の資金に関する説明。2019〜2022年度の実績に基づく記事
スリーピングビューティー
すりーぴんぐびゅーてぃー
魅力的な資産などを持ち、買収先として注目され得るのに、まだ具体的な買収の話が持ち込まれていない会社を指す市場用語です。例えば、豊富な現金や、市場で十分に評価されていない不動産などが着目されます。
買収候補の調査で、保有資産の魅力が株価に十分表れていないスリーピングビューティーを探す。
間違えやすい点法律や会計による正式な会社の分類ではなく、投資家などの見方を表す呼び名です。株価が安いだけで該当すると断定せず、実際の資産価値や事業のリスクも調べます。
出典
Nasdaq「Sleeping beauty」 ↗
未接触の買収候補・現金や過小評価された資産の例
スローハンド型買収防衛策
すろーはんどがたばいしゅうぼうえいさく
買収者が経営陣を交代させても、買収防衛策をすぐに廃止しにくくする仕組みの呼び名です。米国の用語では交代後も一定期間の廃止を制限するものがあり、日本語の用語集では、取締役の交代時期をずらして廃止に時間を要する形も説明されます。
スローハンド型買収防衛策の説明を読み、防衛策を誰が、いつ廃止できるかを確認する。
間違えやすい点スタッガード・ボードは取締役を改選する仕組みを指し、こちらは防衛策の廃止が遅れる点に着目した言葉です。国や資料による使い方を確認し、日本で自由に導入できるとは考えません。
出典
野村證券「スローハンド型防衛策」 ↗
期差選任により防衛策廃止に時間を要する類型
Latham & Watkins「Global M&A Book of Jargon」 ↗
冊子201頁Slow Hand Pill
税金
ぜいきん
公共サービスなどを支えるために、法律等に基づいて個人や会社が国・地方公共団体へ納めるお金です。利益や所得、財産、取引などに応じてさまざまな種類があります。M&Aでは、誰が何を売買するかによって関係する税金が変わります。
M&Aの手取りを見積もるため、個人の株式売却と会社の事業売却にかかる税金を分けて確認する。
間違えやすい点会社を売るときにかかる税金が一種類に決まっているわけではありません。株主個人の所得税、会社の法人税、資産によって生じる消費税等を区別します。仲介手数料などの民間サービスの料金とは別の負担です。
成功報酬
せいこうほうしゅう
M&Aの契約成立や代金の決済など、あらかじめ決めた成果に達したときに支援会社へ払う報酬です。何を成功とするか、いつ支払うか、どの金額を基に計算するかは契約で決めます。売却代金の何%かを払う契約などがあります。
仲介契約を結ぶ前に、成功報酬の計算に使う金額と、支払義務が発生する時点を確認する。
間違えやすい点成功報酬なら必ず「代金を受け取った後に払う」とは限りません。契約締結時に発生する場合もあります。着手金や中間金とは別に、最低報酬額や既払金を差し引く扱いも確かめます。
出典
中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
第2章Ⅱ:手数料の算定基準・発生タイミング等の説明、用語集「成功報酬」
M&A支援機関登録制度「よくあるご質問」 ↗
成功報酬の入力:最終契約締結又は最終契約の決済時の報酬の説明
清算
せいさん
通常、会社が解散した後に、残った取引を終え、代金を回収し、借金や未払い金を支払うなどして会社を閉じるための手続です。支払った後に残る財産があれば株主へ分配します。解散を決めただけで会社の後片付けが終わるわけではありません。
事業譲渡後に売り手の会社を解散し、残った売掛金や借入金を清算する。
間違えやすい点解散は清算に入るきっかけで、清算はその後の処理です。通常の清算では借金などを支払う前に残りの財産を株主へ分配できず、払えない場合は別の手続の検討が必要です。
出典
会社法 ↗
第475条(清算の開始原因)/第481条(清算人の職務)/第502条(債務の弁済前における残余財産の分配の制限)
正常収益
せいじょうしゅうえき
一時的な利益や損失などを調整し、通常の事業運営でどれほど稼げるかを捉えるための収益・利益です。たとえば土地の売却で偶然増えた利益を、毎年続く利益から分けます。M&Aでは、過去の決算だけでは分からない普段の収益力を確認します。
一度だけ発生した土地の売却益を分けて、正常収益を確認します。
間違えやすい点会社に都合の悪い費用を自由に消してよい、という意味ではありません。通常必要な人件費などは考慮します。何を調整したかの根拠と、買収後に新たに必要になる費用も確認し、予測利益とは分けて説明します。
出典
中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた検討会 第2回 資料2」 ↗
個別DD・収益力分析:一時的・偶発的・臨時の損益、正常収益力及びM&A後の収益・費用の調整
一橋大学大学院経営管理研究科「EBITDA」 ↗
調整後EBITDA:一時的損益・非継続事業の損益などの調整
税制適格企業再編
ぜいせいてきかくきぎょうさいへん
税法で決められた条件を満たした合併や会社分割などのことです。一般に適格組織再編成と呼ばれ、移す財産に関する利益・損失の計上を繰り延べるなどの取扱いがあります。どの条件を調べるかは、再編の方法や会社同士の関係によって異なります。
合併の計画について、税制適格企業再編に当たる条件を満たしているか確認する。
間違えやすい点「適格」は税務上の分類です。会社法上正しい再編でも非適格になる場合があり、反対に適格ならすべての税金・手続が不要になるわけでもありません。
成長戦略
せいちょうせんりゃく
会社や事業を今後どう伸ばすか、その方向と方法を決めることです。どの商品を誰に売るか、必要な人材や技術をどうそろえるかを考え、自社で育てる方法や他社と組む方法、M&Aなどを選びます。
新しい地域への進出という成長戦略に合うかを基準に、買収候補を選ぶ。
間違えやすい点売上の目標額だけでは、達成する方法が分かりません。M&Aも成長のための手段の一つであり、買うこと自体を目的にせず、買収後に何を実現するかまで決めます。
出典
中小企業庁「2024年版 中小企業白書」 ↗
第2部第3章第2節・中小企業の成長に向けた取組、成長戦略としてのM&A
経済産業省「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」 ↗
行動1「目指すべき姿」と実現ストーリーの明確化、行動4 買収ありきでない成長のための判断軸
税務デューデリジェンス
ぜいむでゅーでりじぇんす
別名・英字:Tax DD/税務DD
買収先の税金の申告や取引の処理を調べ、買収後に追加の税金を請求されるなどの問題がないかを確認する調査です。過去の組織再編、会社間取引、申告内容などを点検し、見つかった税務上の問題を価格や契約条件の検討に反映します。
税務デューデリジェンスで過去の申告と取引内容を確認し、追加課税が生じる可能性を検討する。
間違えやすい点将来の節税策を考えることだけではありません。また、決算の利益や資産を中心に調べる財務DDと調査目的が異なります。税務DDを実施しても税務調査を免れるわけではなく、調査範囲にも限界があります。
税務メリット
ぜいむめりっと
取引や制度の選び方によって、税負担が減る、支払時期を先へ延ばせるなどの有利な効果が得られることです。M&Aでは売買の方法や引継ぐ資産によって税金の扱いが変わるため、売り手と買い手のそれぞれについて効果と条件を確認します。
株式譲渡と事業譲渡を比べ、税務メリットだけでなく、売却後の手取りや手続費用も検討する。
間違えやすい点税金が減る効果と、支払を待ってもらう効果は別です。税務メリットがあっても手続費用や事業上の負担が増す場合があります。条件を満たさずに優遇を見込んだり、片方の当事者だけの効果で判断したりしないことが大切です。
生命保険
せいめいほけん
人の死亡や所定の生存などに備え、契約で決めた条件に当たると保険金などが支払われる保険です。会社が経営者を対象に契約している場合もあります。M&Aでは、契約者・保険の対象者・受取人や、解約時に戻るお金を確認します。
会社名義の生命保険について、保障内容と解約返戻金を確認します。
間違えやすい点保険料を払えば全額が税金計算上の費用になる、または2019年以降は一切費用にならない、と一律にはいえません。税務は契約内容・受取人・保険料・解約返戻金などで異なり、売却前後の解約や名義変更も個別に確認します。
出典
生命保険文化センター「生命保険とは」 ↗
生命保険の役割と基礎用語:契約者・被保険者・受取人・保険料・保険金
国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い」 ↗
令和元年7月8日以後契約分:受取人・前払部分等に応じた保険料の取扱い
税理士
ぜいりし
税務に関する専門家として、依頼者の税金の相談、申告書などの作成、税務署への手続の代理を行う人です。M&Aでは、株式や事業を売る際の税負担、引継ぎに使える制度、買収先の税務上の問題などについて相談する専門家になります。
株式売却前に税理士へ相談し、取得費の資料と売却後の申告手続を確認する。
間違えやすい点M&Aの相手を探す仲介者や、法律上の争いを扱う弁護士とは役割が異なります。税理士資格があれば、すべての分野の代理や交渉を行えるという意味ではありません。依頼内容と担当分野を確認します。
税理士法人
ぜいりしほうじん
税理士が共同で設立し、税金の相談、申告書の作成、税務署への手続の代理などを組織として行う法人です。M&Aでは、売却時の税金や税務上の問題を調べる相談先になります。仕事の依頼先が個人の税理士ではなく法人である点が特徴です。
株式を売る前に、取得費の確認と売却後の税額の見積りを税理士法人へ依頼する。
間違えやすい点税理士がいる一般の会社を、すべて税理士法人と呼ぶわけではありません。税理士法に基づく法人で、行える業務にも範囲があります。M&Aの仲介や法的交渉などを何でも一括して行えるわけではありません。
節税
せつぜい
法律が認める控除や優遇制度などを、条件に従って利用し、税金の負担を抑えることです。M&Aや事業承継では、売却方法や財産の引継ぎに関係する税制を確認し、必要な申告や手続を行ったうえで、認められる効果を検討します。
自社株の引継ぎを検討する際、利用できる制度の要件と申告手続を税理士に確認して節税効果を見積もる。
間違えやすい点売上を隠す、架空の費用を計上するなどの脱税とは異なります。また、形式上の条件だけを利用する取引が租税回避として問題になる場合もあります。「税金が減る」という説明だけで適法性を判断できません。
セラーズバリュー
せらーずばりゅー
売り手の立場から考えた会社や事業の価値です。売り手が見込む将来の業績や、事業を手放す判断などが評価に影響します。売り手の計画に基づく評価額を指して使う場合もあり、買い手から見た価値とは一致するとは限りません。
売り手の事業計画に基づくセラーズバリューと、買い手が検証した評価額を比べる。
間違えやすい点売り手の評価額や希望価格が、そのまま最終的な売買価格になるわけではありません。将来の予測や評価条件をすり合わせて交渉します。また、売り手の見積りが必ず高すぎる、と決め付ける言葉でもありません。
出典
日本総合研究所「M&Aにおける事業価値・企業価値評価」 ↗
2ページ「セラーズバリューとベースバリュー」・3ページ「バイヤーズバリュー」
善管注意義務
ぜんかんちゅういぎむ
仕事や財産の管理を任された人が、その立場や仕事の内容に応じて、通常求められる注意を払う義務です。会社の取締役も会社に対して負い、M&Aでは必要な情報を集め、条件やリスクを検討して判断することなどが問題になります。
取締役は善管注意義務を踏まえ、買収価格の根拠やリスクを検討した過程を記録する。
間違えやすい点「人柄が善良であること」や「絶対に失敗しないこと」を求める意味ではありません。結果だけで決まらず、判断時に必要な情報を集め、注意して検討したかなどが問われます。
出典
民法 ↗
第644条・受任者の注意義務
会社法 ↗
第330条・会社と役員等の関係、第423条第1項・任務懈怠による損害賠償責任
法務省「民法(債権関係)部会資料」 ↗
受任者の注意義務・民法第644条及び役務提供の注意義務
潜在株式
せんざいかぶしき
将来、普通株式を取得できる権利や、普通株式に換えられる証券・契約を指します。決めた条件で株式を取得する新株予約権などが例です。現在の株数だけでは見えない、将来増える可能性のある株式を考える際に使います。
買収後の持株割合を計算するため、潜在株式がすべて普通株式になった場合の株数も確認する。
間違えやすい点既に発行された普通株式や、会社が持つ自己株式とは区別します。権利があれば必ず株式になるわけではなく、使える期間、支払額、転換条件などを確認します。
出典
日本取引所グループ「潜在株式」 ↗
普通株式を取得・転換できる証券又は契約の定義
選択と集中
せんたくとしゅうちゅう
限られた人、お金、時間を、特に力を入れる事業や商品へ振り向ける考え方です。すべてを同じように続けるのではなく、自社の強みや将来性を比べ、伸ばす分野と縮小・売却する分野を決めます。
主力事業への選択と集中を進めるため、別の事業の売却を検討する。
間違えやすい点赤字の事業を切り捨てることだけを意味しません。利益が出ていても自社の方針に合わない事業を売る場合があり、目先の削減額と将来の成長力を分けて考えます。
出典
中小機構 J-Net21「商品開発・市場開拓のための基本方針」 ↗
選択と集中を実行するためのポイント
Forvis Mazars「エムケー精工グループのホテル事業の譲渡に係るM&Aアドバイザリー業務を提供」 ↗
主力外のホテル事業を譲渡した2025年成約案件
全部取得条項付種類株式
ぜんぶしゅとくじょうこうつきしゅるいかぶしき
株主総会で決めることによって、会社がその種類の株式をすべて取得できる条件が付いた株式です。取得日や引換えに渡すものなども所定の手続で決めます。「全部」とは、対象となる種類の株式の全部を指します。
株主構成を整理する方法として、全部取得条項付種類株式を使う手続と株主保護を確認する。
間違えやすい点会社が持つ全種類の株式を、いつでも全部取り上げられる制度ではありません。種類の設定や取得の決定、価格に関する株主の権利などを確認します。
出典
会社法 ↗
第108条第1項第7号/第171条〜第173条
創業者利益
そうぎょうしゃりえき
会社を立ち上げて成長させた人が、保有する株式の価値上昇や、その売却などを通じて得る利益を指します。M&Aでは、自分が育てた会社の株式を売って利益を実現する場面で使います。会社の日々の営業利益とは、利益を得る人も仕組みも異なります。
株式の売却による創業者利益と、会社に残る資金を分けて説明します。
間違えやすい点売却代金の全額が、そのまま税引後の利益になるわけではありません。取得費や売却費用、税負担なども確認します。また、上場などで株式の評価が上がっただけでは、同額の現金を受け取ったことにはなりません。
出典
東京都立産業技術大学院大学「事業承継の基礎知識」 ↗
第三者承継(M&A)のメリット:株式売却による創業者利益
国税庁「株式等を譲渡したときの課税」 ↗
株式譲渡益の計算:取得費・委託手数料等の控除
総合課税
そうごうかぜい
個人が得た対象となる種類の所得を合計し、所得控除を差し引いたうえで所得税を計算する方法です。給与所得や事業所得などが対象になります。M&Aで何かを売った場合も、何を売ったかによって課税の方法が変わるため確認が必要です。
事業売却に伴う所得について、総合課税か分離課税かを資産の種類ごとに確認する。
間違えやすい点個人が得たすべてのお金を一つにまとめる制度ではありません。例えば株式や土地・建物の譲渡所得は原則として分離課税です。売却代金そのものと、経費などを差し引いた所得の金額も区別します。
総資産利益率
そうしさんりえきりつ
別名・英字:ROA
会社が持つ資産全体に対し、どのくらいの利益を生んだかを見る割合です。ROAともいい、基本は「利益÷総資産」で計算します。借入れで用意した資産も含め、会社が資産を効率よく使っているかを確認するときに使います。
設備投資後の総資産利益率を見て、資産の増加に利益が見合うか確認します。
間違えやすい点利益には営業利益、経常利益、当期純利益など複数の取り方があります。比較時は、利益の種類と資産の集計時点をそろえます。株主側の元手を基にする自己資本利益率とは、分母の範囲が異なります。
出典
総数引受契約
そうすうひきうけけいやく
会社が募集する株式の全部を、一人または複数の引受人が引き受けると、会社との契約でまとめて決める方法です。ここでいう全部は、今回募集する株式の全部です。個別の申込みや割当てについて、通常とは異なる手続になります。
今回発行する株式のすべてを二社が引き受けるため、総数引受契約を結ぶ。
間違えやすい点会社の発行済株式をすべて買う契約という意味ではありません。既存株主から買う株式譲渡とも異なり、募集に必要な会社の決定や払込みまで省略できるわけではありません。
出典
会社法 ↗
第203条〜第205条(募集株式の申込み及び割当てに関する特則)/第208条(出資の履行)
相続
そうぞく
人が亡くなったときに、その人に属していた財産上の権利や義務を、法律上の相続人が引き継ぐことです。預金や土地だけでなく、会社の株式や借金なども関係します。会社経営者が亡くなった場合は、誰が株式を持つかが経営にも影響します。
経営者の相続が起きたため、株式を引き継ぐ人と会社の代表者を確認する。
間違えやすい点株式を相続した人が、自動的に社長になるわけではありません。株主としての立場と、取締役・代表者としての立場は別です。生きている間に財産を無償で渡す贈与や、他社へ売るM&Aとも区別します。
相続時精算課税
そうぞくじせいさんかぜい
別名・英字:相続時精算課税制度/相続時精算課税贈与
生前の贈与と将来の相続を通して税額を計算する、選択制の贈与税の仕組みです。一定の条件を満たす親子・祖父母と孫などの間で選べます。贈与時には所定の控除を使い、贈与者が亡くなったときに、制度に応じた対象額を相続財産に加えて精算します。
父から自社株の贈与を受ける際、相続時精算課税と暦年課税のどちらを選ぶか検討する。
間違えやすい点相続税が必ずなくなる制度ではありません。選択した相手からの贈与については、その後に暦年課税へ戻せません。毎年の基礎控除により相続時の加算対象から外れる部分がある点にも注意します。
出典
国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」 ↗
1~2頁:令和6年施行の基礎控除と相続財産への加算、同じ贈与者について暦年課税へ変更不可
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」 ↗
概要・贈与者ごとの選択・将来の相続税との精算。制度の基本構造の照合に利用し、基準日後の数値改正は本文に採用しない
相続税評価
そうぞくぜいひょうか
相続税などを計算するため、引き継ぐ財産を税務上いくらと見るかを決めることです。土地、建物、株式などの種類に応じた評価方法を使います。未上場会社の株式では、会社の規模や株主の立場などによって、適用する方法が変わります。
後継者へ自社株を引き継ぐ前に、税理士へ相続税評価の計算を依頼する。
間違えやすい点M&Aの相手と交渉して決める売却価格と、必ず同じになるものではありません。同じ株式でも、相続・贈与の税額を計算する目的と、買い手が将来の利益を見込んで価格を決める目的では、見方が異なります。
ソーシング
そーしんぐ
M&Aの相手候補を探し、情報を集め、話し合いにつながる接点をつくる活動です。金融機関や専門家からの紹介、候補企業への直接の働きかけなどを通じて、自社の目的に合う相手を見つけます。
必要な技術を持つ会社を見つけるため、金融機関からの紹介も使ってソーシングを進める。
間違えやすい点候補先が見つかった後に会社の実態を詳しく調べる買収監査とは役割が異なります。候補を一覧にするだけでなく、条件を絞ったり相手の意向を確かめたりする段階も含めて使われます。
出典
経済産業省 2024年度委託調査(M&A支援業務の整理) ↗
事前相談・マッチング業務の整理:初期ロングリスト、ソーシング方法、候補先への提案
レコフデータ MARR「ソーシング」 ↗
M&A情報を扱う事業者による用語解説・候補との関係構築、直接ルート等
組織再編
そしきさいへん
会社や企業グループの形、事業の持ち方を組み替えることです。会社法の文脈では、合併、会社分割、株式交換などの手続を指して使います。会社を一つにまとめる場合も、一部の事業を別会社へ切り出す場合もあります。
重複する事業をまとめるため、合併と会社分割による組織再編を比較する。
間違えやすい点部署名を変える社内の組織変更とは、意味する範囲が異なる場合があります。組織再編をすれば自動的に税金を繰り延べられるわけではなく、税法上の条件は別に確認します。
出典
会社法 ↗
第5編(組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付)
組織再編税制
そしきさいへんぜいせい
合併や会社分割などで、会社の財産や株式が移るときの税金の扱いを定める仕組みです。通常の売買のように利益・損失を計算する場合と、一定の条件を満たすためその計上を先へ繰り延べる場合があります。
会社分割の方法を比較し、組織再編税制による課税時期や欠損金の扱いを調べる。
間違えやすい点会社法の手続が適法であることと、税金を繰り延べられることは別です。また、繰延べは通常、税金が永久になくなる意味ではありません。
租税回避リスク
そぜいかいひりすく
税負担を減らすために選んだ取引が、税法の趣旨に反する利用などと判断され、予定した税務上の扱いが認められなくなるリスクです。M&Aでは、組織再編や会社間取引について、形式だけでなく実際の目的や経済的な実態が問題になる場合があります。
税効果を見込む再編案について、事業上の目的と取引の実態を整理し、租税回避リスクを専門家と確認する。
間違えやすい点税金が少なくなる取引が、すべて違法という意味ではありません。一方、契約形式を整えれば必ず認められるわけでもありません。適用される規定や具体的事実によって判断され、脱税や適法な節税とも区別します。
出典
国税庁税務大学校「租税回避行為の否認についての一考察」 ↗
研究の概要・租税回避の意義と節税/脱税との違い。研究論文であり個別取引への一律の法的結論ではない
国税庁税務大学校「税大ジャーナル28」 ↗
節税・租税回避・脱税の区別、租税回避否認の検討
損益計算書
そんえきけいさんしょ
別名・英字:P/L/PL
一定期間に、会社がどれほど収益を得て、どれほどの費用を使い、利益や損失がいくらになったかを示す決算書です。PL(ピー・エル)とも呼びます。M&Aでは売上や利益の推移を読み、本業の稼ぐ力や一時的な損益を確かめるために使います。
損益計算書を数期分比べ、営業利益が増減した理由を確認します。
間違えやすい点その期間の入金と出金を、そのまま一覧にした書類ではありません。商品を売って利益が出ても、代金が未回収の場合があります。現金の動きは資金繰り表やキャッシュフロー計算書と合わせて確認します。
出典
一橋大学大学院経営管理研究科「財務諸表」 ↗
損益計算書の定義、収益・費用と現金収支の違い
損切り
そんぎり
保有する株式などに損失が出ているとき、売却や決済によって取引を終え、損失を確定することです。さらに損が大きくなることを避けたい場面などで使います。広く、採算の悪い事業や投資から撤退する判断を指すこともあります。
投資先の見通しが変わったので、保有を続けるか損切りするか検討します。
間違えやすい点損切りすれば、その後必ず得をするという意味ではありません。予定の価格で売れるとも限らず、売却後に相場が戻る場合もあります。単に帳簿の評価額を下げる処理と、実際に取引を終えることも区別します。
出典
大阪取引所「北浜投資塾:デビットスプレッド戦略」 ↗
損切り設定、取引時間外の価格変動及び反転に関する説明
存続会社
そんぞくがいしゃ
吸収合併で、合併後も同じ法人として残る会社です。合併で消滅する会社の財産や契約上の権利、借金などを引き継ぎます。どちらを残すかによって、会社名や許認可などについて確認すべきことが変わります。
二社の吸収合併では、販売網を持つ会社を存続会社にする計画を立てた。
間違えやすい点存続会社が必ず大きい会社や実質的な買い手になるとは限りません。新設合併では既存会社がすべて消滅し、新しく作る会社が引き継ぐため、仕組みが異なります。
出典
会社法 ↗
第2条第27号(吸収合併)/第749条・第750条(吸収合併契約・効力)


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