M&A用語集【は行】意味・使用例・似た用語の違い

M&A用語集|は行

2027年1月・中小企業M&A実務能力・倫理検定試験の学習に

103語。意味・使用例・間違えやすい点をまとめています。

パーチェス法

ぱーちぇすほう

買収などの企業結合を、一方の会社が他方を取得したものとして会計処理する方法です。会計上の取得額を、受け入れた資産や引き受けた負債へ、原則として時価を基に割り振ります。取得額と、資産から負債を引いた評価額との差が、のれんなどになります。

使用例

パーチェス法による会計処理を想定し、取得する資産と負債の評価を確認します。

間違えやすい点売り手の帳簿額をそのまま引き継ぐ方法とは異なります。日本基準では「取得」に当たる企業結合の処理であり、同じ企業グループ内の再編などに一律に当てはめません。M&A価格を交渉して決める評価方法とも別です。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第17・23・28・31項:取得の会計処理、取得原価、資産・負債への配分とのれん。第40項以降:共通支配下の取引との区分

バーチャルデータルーム

ばーちゃるでーたるーむ

別名・英字:VDR

M&Aなどで使う決算書や契約書を、インターネット上で限られた相手と共有するための専用環境です。VDRとも呼ばれます。誰がどの資料を見られるかを設定し、買い手候補や専門家による調査や質問への対応に使います。

使用例

買い手候補ごとの閲覧権限を設定して、バーチャルデータルームで調査資料を開示する。

間違えやすい点データルームには紙の資料を置く部屋もありますが、VDRはオンライン上の資料室です。一般のファイル共有と比べ、M&Aの資料管理や閲覧制限、質問管理などに適した機能を備えることが特徴で、機能は製品により異なります。

出典

SS&C Intralinks「バーチャルデータルーム(VDR)/VDRPro」 ↗
「なぜVDRを使うべきか」「堅牢な機能」「比類なきセキュリティ」:機密情報の共有、Q&A、利用者・資料ごとのアクセス権限(提供事業者の機能説明として参照)

一橋大学大学院経営管理研究科「デュー・ディリジェンス」 ↗
「デュー・ディリジェンスにおける実務」:資料開示のデータルームとVDR、Q&Aシートによる質問と追加開示

パールハーバー・ファイル

ぱーるはーばーふぁいる

別名・英字:Pearl Harbor File/Pearl Harbor Files

突然の買収提案を受けた場合に備えて、連絡先や検討事項、対応の手順などをあらかじめまとめておく資料の呼び名です。米国の買収戦術を論じた資料にも登場する表現で、提案が届いてから慌てて準備を始めないための備えを表します。

使用例

買収提案を受けたときの初動を確認するため、パールハーバー・ファイルの連絡先と検討手順を見直す。

間違えやすい点特定の買収を自動的に止める契約条項ではありません。社内の対応準備と、協力してくれる他社へ見せる資料は分けて考え、社外へ出す情報の範囲や秘密の管理も確認します。

出典

Robert A. Prentice「Front-End Loaded, Two-Tiered Tender Offers」(1988–1989年) ↗
Case Western Reserve Law Review 39巻2号、脚注3:pearl harbor fileを突然の敵対的買収へのcontingency plansの集成と説明する原研究論文

バイアウト

ばいあうと

会社の経営権を得る形で、株式や事業を買い取ることです。事業承継や事業の切り出し、企業の非上場化などでも使われます。投資ファンドによる買収では、買収後の経営に深く関わり、企業価値を高める取組と結び付けて使われます。

使用例

事業承継の選択肢として、経営陣と投資ファンドによるバイアウトを検討する。

間違えやすい点バイアウトファンドは、バイアウトを主に行う資金の仕組みであり、取引そのものとは区別します。経営陣が買い手になるMBO、借入金を活用するLBOなどは、誰が買うか、資金をどう用意するかに着目した呼び方です。

出典

日本政策投資銀行「LBO/MBO」 ↗
「LBOとは」「MBOとは」:借入金を使う企業・事業買収と経営陣による買収、非公開化や事業承継

年金積立金管理運用独立行政法人「ハ行用語集:プライベート・エクイティ(PE)投資」 ↗
PE投資の「バイアウト」:経営改善・ガバナンス向上等を通じた企業価値の向上

FS MVP Private Markets Fund「Consolidated Schedule of Investments」(2025年6月30日、SEC EDGAR掲載) ↗
Private Equity/Buyouts:事業基盤のある企業への支配権投資、価値向上と売却

バイアウトファンド

ばいあうとふぁんど

別名・英字:買収ファンド/買収ファンド (Buy-out Fund)

投資家から集めた資金などで会社の経営権を取得し、経営の改善や成長を支えるファンドです。事業承継や事業の切り出しなどでも使われます。企業価値を高めたうえで、将来の株式売却や上場などによる資金回収と利益を目指します。

使用例

バイアウトファンドへの売却を検討し、買収後の経営体制と、将来の株式売却の方針を確認する。

間違えやすい点広い意味のPEファンドの一類型です。新興企業の成長を主に支えるVCに対し、一般に事業基盤のある企業の経営権を取得して深く関わる点が特徴です。実務ではPEファンドを狭い意味でバイアウト中心に使うこともあります。

出典

年金積立金管理運用独立行政法人「ハ行用語集:プライベート・エクイティ(PE)投資」 ↗
「プライベート・エクイティ(PE)投資」:バイアウト・VC等の類型、経営改善と企業価値、上場や事業会社への売却

FS MVP Private Markets Fund「Consolidated Schedule of Investments」(2025年6月30日、SEC EDGAR掲載) ↗
Private Equity/Buyouts:事業基盤のある企業への支配権投資、価値向上と売却。個別ファンドの説明を一般概念の根拠として参照

金融庁・金融審議会「投資運用等に関するワーキング・グループ」第1回議事録(2014年10月10日) ↗
日本のPEという呼称に関する発言:バイアウトとVCの区別、PEとバイアウトが混同して使われる場合の整理

廃業

はいぎょう

会社や個人事業主が、営んでいる事業をやめることです。経営者の引退、後継者が見つからないこと、事業の見通しなど、理由はさまざまです。利益が出ていても選ばれる場合があり、M&Aで事業や人材を引き継ぐ道と比較して検討されます。

使用例

廃業を決める前に、従業員や取引先との関係を引き継げる事業がないか、M&Aの選択肢と比べる。

間違えやすい点廃業という言葉だけで、借金を返せない状態だとは限りません。また、事業をやめることと、会社を法的に解散・清算することは区別します。会社か個人事業かによって、必要な手続も異なります。

出典

中小企業基盤整備機構 J-Net21「廃業するにはどうしたらよいですか?」 ↗
回答冒頭及び「会社の消滅」:廃業判断の前の相談、法人の解散・清算手続。本文の手続概要を確認し、個人の届出やM&Aの説明がこのページにあるとはしていない

内閣府「地域の経済2020 第2節 倒産・廃業と開業」 ↗
倒産・休廃業・解散の区別と、経営者の高齢化・後継者不足の背景。統計上の件数や定義を一般語の固定条件にはしていない

買収

ばいしゅう

他の会社の株式や事業を取得し、その経営や事業運営を主導できる状態にすることです。株式を買って子会社にする方法や、必要な事業を買い取る方法などがあります。既存の市場や技術、人材を引き継ぐ目的でも行われます。

使用例

新しい地域に進出するため、その地域に取引先を持つ会社の買収を検討する。

間違えやすい点合併は、複数の会社が法律上ひとつの会社になる手続です。買収では、株式の取得後も会社が別々に存続する場合があります。また、株式を少し取得する投資が、すべて経営権の取得を伴う買収になるわけではありません。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「M&A」 ↗
回答・ポイント・さらに詳しく:買収と合併の意味、会社・事業の支配権、買収の目的

中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
用語集「M&A」、参考資料1「中小M&Aの主な手法と特徴」:株式譲渡・事業譲渡等

買収監査

ばいしゅうかんさ

買収する会社や事業の実態を、契約前などに詳しく調べることで、デューデリジェンスとも呼ばれます。財務・税務・契約・人事・事業などを調べ、買うかどうかの判断や、価格・契約条件、買収後の対応を考える材料にします。

使用例

買収監査で分かった未払費用や契約上の問題を、価格交渉と最終契約の条件に反映する。

間違えやすい点名称に監査とありますが、決算書について監査意見を示す会計監査とは目的や範囲が異なります。買収判断のために必要な調査を行うもので、調べる分野や深さは案件や依頼内容によって変わります。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「デュー・ディリジェンス」 ↗
回答・ポイント:Due Diligenceの別称としての買収監査、対象会社・事業の実態調査、実行可否や取引条件の検討

KPMG「デューデリジェンス」 ↗
冒頭及び財務DD等の説明:案件の性質に応じた調査範囲・深さ、価格・契約条件・PMIに用いる調査結果

買収プレミアム

ばいしゅうぷれみあむ

買収で提示する株式の価格が、比較の基準となる価格をどれほど上回るかを表すものです。上場会社の買収では、公表前の市場株価などとの差額や、その割合で示します。株主に売却を促す条件や、買い手が見込む追加価値を検討するときに使います。

使用例

買収プレミアムを比べるときは、どの日の株価や平均株価を基準にしたか確認します。

間違えやすい点市場株価などに対する上乗せであり、取得した資産・負債への配分後に計算する会計上ののれんとは別です。基準日や平均を取る期間で割合は変わり、上乗せが大きければ適正な価格だと決まるわけでもありません。

出典

三菱ロジスネクスト「LVJホールディングス2合同会社による当社株券等に対する公開買付けの開始に関する意見表明のお知らせ」(2026年1月20日) ↗
本文40〜41ページ(PDF39〜40ページ)、(エ)過去の市場株価・同種案件に対するプレミアム水準の妥当性:憶測報道前の終値及び複数期間平均との比較。個別の率・価格は本文に採用しない

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第28・31項:資産・負債への取得原価配分と、のれんの算定。市場株価比のプレミアムとの区別

買収防衛策

ばいしゅうぼうえいさく

別名・英字:買収への対応方針・対抗措置

買収提案に対し、株主が判断するための情報や時間を確保したり、一定の条件で買収に対抗したりする仕組みの総称です。新株を取得できる権利を使う方法などがあります。2023年の国の指針では、買収への対応方針・対抗措置として整理されています。

使用例

買収防衛策の導入資料を読み、守ろうとする利益、発動条件、株主の意思を確認する方法を調べる。

間違えやすい点会社側が同意していない買収が、すべて悪い買収というわけではありません。経営者の地位を守ることだけを目的とせず、会社の価値や株主利益のために必要で、やり過ぎでないかを検討します。

出典

経済産業省「企業買収における行動指針」(2023年8月31日) ↗
第5章「買収への対応方針・対抗措置(買収防衛策)」:用語の整理、株主意思、必要性・相当性、経営者の地位保持だけを目的とする措置との区別。2026年6月以後の解釈案等は不採用

配当還元法

はいとうかんげんほう

別名・英字:配当還元方式

株式を持つことで受け取る配当を基に、株式の価額を見積もる方法です。相続税・贈与税の非上場株式評価では「配当還元方式」と呼び、同族株主以外の株主など、一定の区分に当たる人が取得した株式を評価するために使います。

使用例

相続した非上場株式について、配当還元法の対象となる株主の区分か確認します。

間違えやすい点税務上の株式評価の説明であり、M&Aの売買価格をこの方法で決める決まりではありません。少数の株式を持つだけで必ず適用されるとも限らず、株主同士の関係や持株割合などを踏まえて区分を確認します。

出典

国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」 ↗
対象税目・概要及び「特例的な評価方式」:相続税・贈与税、同族株主等の区分、年配当金額を利率で還元する方法

国税庁「令和6年分 確定申告書等作成コーナー:取引相場のない株式の評価」 ↗
特例的な評価方式:配当還元方式を用いる株主区分。基準日前の一般的な仕組みの確認

配当所得

はいとうしょとく

個人が株主などとして会社から受け取る配当や、一定の投資信託の分配金などによる所得です。会社の株式を持ち、その利益の分配を受ける場面が代表例です。株式そのものを売って得る利益とは、税務上の所得の種類が異なります。

使用例

個人株主が受け取った配当金について、配当所得としての税務上の扱いを確認する。

間違えやすい点株式の売却益や給与とは区別します。上場・非上場の別や株主の保有状況などによって申告方法が異なり、配当なら一律に申告分離課税を選べるわけではありません。

出典

国税庁「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」 ↗
概要/税額の計算方法(総合課税、確定申告不要制度等)

売買処理法

ばいばいしょりほう

会社分割の会計処理の解説では、移転する事業の資産や負債を売買したものと捉えて処理する考え方を指します。帳簿額を引き継ぐ考え方との対比で使われる言葉です。実際の会計処理は、取引が他社の取得に当たるか、投資が継続するかなどから判断します。

使用例

売買処理法という説明だけで決めず、会社分割の対価と投資の継続性を確認します。

間違えやすい点会社分割の法律上の手続名や、すべての株式売却に共通する会計方法の名前ではありません。事業を移す側と受ける側で処理が同じとも限りません。現行の企業結合・事業分離の会計基準に照らして確認します。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第7号 事業分離等に関する会計基準」 ↗
第9・10・76〜77項:分離元企業の会計処理の範囲、投資の清算・継続の判定、移転損益と帳簿価額

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第17・28・40項以降:取得の会計処理と共通支配下の取引等との区分。説明用語を現行の区分へ照合

バイヤーズバリュー

ばいやーずばりゅー

別名・英字:Buyer’s Value/Buyer's Value

買い手にとって、その会社や事業を手に入れる経済的な価値を指す呼び名です。自社の経営方針や買収後の見通しを踏まえて考えるため、同じ会社でも買い手によって評価が変わります。いくらまで支払えるかを検討する際の材料になります。

使用例

売り手の希望価格と自社のバイヤーズバリューを比べ、買収後に利益を得られる価格か検討する。

間違えやすい点実際の売買価格や、誰にとっても共通の時価と同じではありません。買い手が高く評価しても、その金額で買えば得をするとは限らず、評価に置いた前提と支払う金額を分けて確認します。

出典

国際評価基準審議会(IVSC)「Standards glossary」 ↗
2020年3月更新版のInvestment Value/Worth:特定の所有者・取得予定者の投資又は事業目的に応じた価値。日本語の呼称を国際基準がそのまま定義するという意味ではなく、買い手固有の価値概念を確認する根拠

破産法

はさんほう

借金などを返せなくなった人や会社について、裁判所の手続で財産を整理し、債権者へ公平に配分するための法律です。誰がどの財産を管理するか、どの順番で支払うかなどを定めます。個人の経済生活の再出発に関する規定もあります。

使用例

再建が難しい会社について、破産法に基づく財産の整理と従業員への対応を相談する。

間違えやすい点事業の立て直しを主な目的とする民事再生法とは異なります。また、個人が破産を申し立てただけで借金の支払義務がすべて自動的になくなるわけではありません。

出典

破産法 ↗
第1条(目的)/第15条・第16条(開始原因)/第252条(免責許可の決定の要件等)

法務省「日本法令外国語訳データベース 破産法」 ↗
日本語条文/第1条(目的)

バスケット条項

ばすけっとじょうこう

表明保証違反などによる損害の合計が、契約で決めた基準額に達するまで補償請求を制限する条項です。小さな損害のたびに請求する負担を抑えるためなどに設け、どの損害を合計に入れるか、いつ請求できるかを決めます。

使用例

表明保証違反の補償を定める際、バスケット条項の基準額と計算方法を交渉する。

間違えやすい点基準額を超えた部分だけ補償する型と、超えれば最初の損害から補償する型などがあり、一律ではありません。補償の上限額を決めるキャップとも役割が異なります。

出典

米国デラウェア州衡平法裁判所「LPPAS Representative, LLC v. ATH Holding Company, LLC等」 ↗
2020年12月29日判決/印刷ページ28〜29(PDF30〜31ページ)、basket・tipping basket・deductible basketの説明

米国SEC提出契約書(登録者CIK 1591890) ↗
Section 10.7(a) Threshold/Deductible Basket(本文はtipping thresholdと定義する実例)

破綻懸念先

はたんけねんさき

銀行などが融資先を評価する際、まだ経営破綻には至っていないものの、経営難が深刻で、今後破綻する可能性が大きいと判断する相手です。貸したお金が返るかを管理するための区分で、すでに倒産したという意味ではありません。

使用例

銀行は、破綻懸念先に区分する融資先について、返済見通しや再生計画を検討する。

間違えやすい点旧金融検査マニュアルは2019年に廃止されています。赤字などの一つの数字だけで機械的に決めるのではなく、事業や返済の見通しなどを踏まえた評価が必要です。

出典

金融庁「金融検査マニュアル関係」 ↗
冒頭の2019年12月18日廃止の注記

金融庁「金融検査マニュアル」旧資料 ↗
信用リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト/自己査定/債務者区分③破綻懸念先(旧資料として参照)

金融庁「検査マニュアル廃止後の引当に関する取組み」 ↗
融資DPの公表と各金融機関の信用リスクを反映する引当方法の見直し

金融庁「自己査定による債務者区分の推移」 ↗
表4/破綻懸念先の区分(マニュアル廃止後も区分が使用されることの確認)

バックエンド・ピル

ばっくえんどぴる

別名・英字:Back-end Pill

米国で使われてきた買収防衛策の一種です。一定の買収が起きたとき、対象となる株主が持ち株を現金や債券などと交換できる権利をあらかじめ設けます。会社側の支払負担などを重くして、買収を進めにくくする仕組みです。

使用例

米国の買収防衛策の資料で、バックエンド・ピルがどの条件で発動し、株主に何を渡す仕組みか確認する。

間違えやすい点新株を安く買える権利を使う仕組みとは、株主が受け取るものが違います。米国の過去の採用例があることと、日本で同じ仕組みをそのまま適法に導入できることは別で、契約条件や株主への影響を調べます。

出典

Robert F. Bruner「The Poison Pill Anti-takeover Defense」(1991年) ↗
Appendix 1「Note Purchase Rights Plans (Back-End Plans)」:株式と現金・株式・債務証券等の交換権、発動条件、Revlonの1985年採用例。研究著者の原資料

パックマンディフェンス

ぱっくまんでぃふぇんす

別名・英字:Pac-Man defense

買収を仕掛けられた会社が、逆に相手の会社を買収しようとして対抗する方法です。相手の買収を受け入れるか拒むだけでなく、自らも買い手に回る点に特徴があります。敵対的買収への対抗手段として使われる呼び方です。

使用例

買収への対抗案を比較する際、パックマンディフェンスに必要な資金と本業への影響を検討する。

間違えやすい点自社の株を買い戻す自社株買いとは異なり、相手企業への買収で対抗します。相手の株式を取得できる状況や資金が必要で、会社や株主にとって合理的かも検討する必要があります。

出典

米国証券取引委員会・Paul S. Atkins委員「Improving Financial Markets」(2008年4月17日講演) ↗
冒頭のNLT/American Generalの事例:対象会社が買収者へcounter-bidを行うPac-Man defenseの説明。米国の歴史的事例として参照

東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日) ↗
原則1-5:買収防衛に関する必要性・合理性・適正な手続と株主への説明

ハッピーリタイア

はっぴーりたいあ

経営の第一線を退いた後に、希望する暮らしを送ることを表す言い方です。M&Aでは、会社や事業を引き継いでもらい、生活資金や引退後の過ごし方を考えながら、経営者が納得して退くことを指す表現として使われます。

使用例

ハッピーリタイアを目指す経営者と、引退後の生活資金や事業の引継ぎ時期を整理する。

間違えやすい点法律上の制度名や特定のM&A手法の名称ではありません。M&Aの成約だけで引退後の安心が決まるわけではなく、実際に退く時期、売却後の関与、借入金の保証の扱いなどは個別に取り決めます。

出典

M&Aキャピタルパートナーズ「ハッピーリタイア篇」放映のお知らせ(2021年7月16日) ↗
「新TVCM ハッピーリタイア篇 ストーリー」:M&Aによる事業承継と経営者の引退を結び付けた表現の使用例。広告中の成果を一般的な保証としては扱わない

中小企業庁「中小M&Aハンドブック」 ↗
「M&Aは事前準備が大切です」:引退後のビジョンや希望条件の整理

バリューチェーン

ばりゅーちぇーん

商品・サービスの開発、製造、販売、販売後の対応などを、顧客に価値を生む活動のつながりとして捉える考え方です。M&Aでは、相手と自社のどの活動を組み合わせれば強みを増やせるか、どこに改善の余地があるかを調べる際に使います。

使用例

買収対象のバリューチェーンを整理し、開発力や販売網のうち自社を補える部分を確認する。

間違えやすい点サプライチェーンが調達・供給のつながりに注目するのに対し、バリューチェーンは各活動が生む価値に注目します。企業内を分析する用法だけでなく、取引先などを含む企業間のつながりを指す文脈もあります。

出典

農林水産省「平成24年度FCP成果報告会」資料 ↗
説明資料「4 バリューチェーンとは?」:設計、生産、マーケティング・販売、物流、アフターサービスの価値連鎖

環境省「環境報告のための解説書~環境報告ガイドライン2018年版対応~ 詳細解説」 ↗
「バリューチェーンマネジメント」バ-1:付加価値の連鎖と複数の関係者、上流・下流との関わり

バリュエーション

ばりゅえーしょん

会社や事業、株式などの価値を金額で見積もることです。M&Aでは、将来どれくらいお金を生むか、持つ資産にいくらの価値があるか、似た会社がどう評価されているかなどから検討します。売り手と買い手が価格を話し合うための土台になります。

使用例

事業計画と資産の内容を確認し、複数の方法でバリュエーションを行います。

間違えやすい点唯一の正解や、必ずその金額で売買できる価格を出す作業ではありません。評価する対象、方法、将来予測の置き方で結果は変わります。実際の取引価格には、交渉や契約条件なども影響します。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン」(2023年9月改訂資料) ↗
(3)バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価):評価額を基に譲渡額を交渉し、事例に応じた手法を選ぶ説明

野村證券「証券用語解説集:バリュエーション」 ↗
本文:企業価値評価及び株価と企業価値を比較する指標としての用法

範囲の経済

はんいのけいざい

異なる商品や事業で設備、販売網、技術などを共用することで、それぞれを別々に営むより全体の費用を抑えられることです。M&Aでは、買収する会社と自社の資源を組み合わせ、重複する作業や支出を減らせるかを考えます。

使用例

買収後に複数の商品で配送網を共用できるかを調べ、範囲の経済が働くか検討する。

間違えやすい点規模の経済は、生産量などを増やすことで一単位あたりの費用が下がることです。範囲の経済は、異なる商品や事業を組み合わせることに着目します。単に事業の数を増やすだけで生じるものではありません。

出典

慶應義塾大学大学院商学研究科・松本陽一「組織の強みを活かす経営戦略の研究」 ↗
「新しい研究課題」:別々に行う場合と異なる事業を一社で行う場合の効率、経営資源の共用・再配置

『経済研究』「信用金庫における範囲の経済性と規模の経済性」(1993年) ↗
掲載p.235「定義1」:複数の生産物を別々に生産する費用と同時に生産する費用の比較、規模の経済との区別

PER

ぴーいーあーる

別名・英字:株価収益率

株価が、1株分の最終利益の何倍になっているかを見る指標です。株価収益率ともいい、「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算します。M&Aでは、似た会社の利益と株式価格の関係を比べ、買収価格を検討するときの参考になります。

使用例

同業他社のPERを比べる前に、使っている利益が実績か予想かをそろえます。

間違えやすい点倍率が低いだけで割安とは決まりません。成長の見通しや一時的な損益でも変わります。また、利益がゼロや赤字の場合は通常の比較が難しくなります。投資額を必ずその年数で回収できる、という意味でもありません。

出典

日本取引所グループ「用語集:株価収益率」 ↗
本文:株価÷1株当たり当期純利益、株価の相対的水準を測る指標

日本取引所グループ「株価検索―はじめての方へ」 ↗
PER(倍)の項:計算式及び実績1株利益を使う同サイトの定義

PEファンド

ぴーいーふぁんど

別名・英字:プライベートエクイティファンド

投資家から集めた資金で、主に非上場会社の株式などへ投資するファンドです。PEはプライベートエクイティの略です。買収や成長資金の提供を行い、経営の改善などで会社の価値を高め、株式の売却などから利益を得ることを目指します。

使用例

PEファンドに、投資予定期間と買収後の経営支援の内容を確認します。

間違えやすい点ファンドという広い仕組みの一種で、運用を担う会社そのものとは役割が異なります。すべてが会社の過半数の株式を取得するわけではありません。対象企業や投資期間、経営への関わり方は、ファンドの方針によって違います。

出典

日本プライベート・エクイティ協会「よくあるご質問」 ↗
「ファンドとは、どのようなものですか?」:投資家からの資金、運用会社の事業支援、IPO・M&A等による売却

年金積立金管理運用独立行政法人「ハ行用語集」 ↗
「プライベート・エクイティ(PE)投資」:バイアウト・グロースエクイティ等の区分

PAI

ぴーえーあい

別名・英字:ポストアクイジションインテグレーション/Post Acquisition Integration

Post Acquisition Integrationの略で、買収後に、人事、経理、業務の進め方、システムなどをすり合わせる取組を指す呼び方です。買収前に期待した効果につなげるため、会社や事業を円滑に引き継ぎ、運営を整えます。

使用例

買収後のPAIの計画として、経理の引継ぎや社員への説明、システムの利用方針を整理する。

間違えやすい点PMIと近い意味で使われますが、PAIの英語は買収後の統合を表します。別の法律上の手続を指すわけではなく、資料によって使う呼称や扱う範囲が異なるため、正式な英語表記と本文の説明を確かめます。

出典

かえでファイナンシャルアドバイザリー「PAI(Post Acquisition Integration)」 ↗
見出しの正式英語表記及び本文冒頭:買収後の業務・人事・システム等の統合作業という用例。独自の制度区分とは扱わず、名称・用法を確認

中小企業庁「中小PMIガイドライン」(2022年3月) ↗
総論1-1「PMIとは」、1-3「中小PMIの全体像」:M&A後の統合・すり合わせと成立前からの準備

BS

びーえす

別名・英字:B/S/バランスシート/貸借対照表

貸借対照表の略称で、会社の資産・負債・純資産を、決算日などの一時点で示す書類です。「資産=負債+純資産」の関係になります。M&Aでは、預金や土地など何を持ち、借入金などどのような負担を抱えているか調べる入口になります。

BSはある時点の財産、PLは一定期間の収益・費用・利益を確認します。利益と現金の増減は同じではありません。
BSはある時点の財産、PLは一定期間の収益・費用・利益を確認します。利益と現金の増減は同じではありません。
使用例

BSに載る売掛金が実際に回収できるか、取引先別の明細も確認します。

間違えやすい点ある期間の利益を示すPLとは、示す時間の範囲が違います。BSに載る資産の金額がそのまま売却価格になるわけでもありません。数字の内容や注記を確認し、帳簿に表れていない負担も調べます。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「貸借対照表」 ↗
回答本文:Balance Sheet・B/S、決算日の財政状態、資産と資金調達源泉の対照

一橋大学大学院経営管理研究科「財務諸表」 ↗
回答本文:貸借対照表は時点、損益計算書は期間を示すこと及び現金収支との区分

PMI

ぴーえむあい

別名・英字:ポストマージャーインテグレーション/Post Merger Integration

買収や合併の後に、経営の方針、従業員の働き方、会計やITなどをすり合わせ、事業を円滑に引き継ぐ取組です。単に会社を買うだけでは実現しない、売上の拡大や業務の改善につなげるために行います。

使用例

買収後に経理や受発注が止まらないよう、PMIの担当者と実施する作業を買収前から決める。

間違えやすい点合併などの法律上の手続と、実際の経営や業務をすり合わせるPMIは別です。成立後の取組が中心ですが、準備は買収前から始めます。すべての制度や組織を一律に同じにすることが目的ではありません。

出典

中小企業庁「PMIを実施する」 ↗
「PMIとは」、PMI実践ツール・統合方針書の説明:成立後の統合、M&Aの目的、経営・業務の取組と計画

中小企業庁「2022年版小規模企業白書」第1部第1章第7節 ↗
中小PMIガイドラインの紹介:経営統合・信頼関係構築・業務統合、検討段階からの準備と継続的な取組

PL

ぴーえる

別名・英字:P/L/損益計算書

損益計算書の略称で、1年間などの一定期間に、会社がどれだけ収益を得て、どれだけ費用がかかり、いくら利益や損失が出たかを示す書類です。M&Aでは、売上や費用の推移を調べ、対象会社が継続して稼げるか検討するときに使います。

使用例

PLの利益が増えた理由を、売上の伸びと一時的な資産売却益に分けて確認します。

間違えやすい点利益は、手元に残る現金の増加額とは一致しません。代金を後で受け取る売上もあるため、資金の出入りは別に確認します。決算日の財産や負担を示すBSとは異なり、期間中の経営成績を見る書類です。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「損益計算書」 ↗
回答本文:Profit and Loss Statement・P/L、一定期間の収益・費用と差額の利益

一橋大学大学院経営管理研究科「財務諸表」 ↗
回答本文:時点と期間の区分、収益・費用だけから現金の状況は分からないこと

PBR

ぴーびーあーる

別名・英字:株価純資産倍率

株価が、株主側の元手に対して何倍になっているかを見る指標です。株価純資産倍率ともいい、「株価÷1株当たり純資産」で計算します。M&Aでは、会社の株式価格を、決算書上の資産と負債の差額などと比べる目安になります。

使用例

PBRを比較するときは、純資産に含まれる土地や売掛金の実態も確認します。

間違えやすい点1倍未満だから必ず割安、というものではありません。資産の帳簿額で実際に売却できるとは限らず、将来の稼ぐ力も重要です。利益を基準にするPERとは異なり、純資産がゼロやマイナスなら通常の比較も難しくなります。

出典

日本取引所グループ「用語集:株価純資産倍率」 ↗
本文:株価÷1株当たり純資産、利益を基準とするPERとの違い

日本取引所グループ「株価検索―はじめての方へ」 ↗
PBR(倍)の項:1株当たり株主資本(純資産)を分母とする計算式

PPA

ぴーぴーえー

別名・英字:取得原価の配分/取得原価配分/Purchase Price Allocation

買収などの会計上の取得額を、受け入れた資産と引き受けた負債に割り振る作業です。「取得原価の配分」を指します。日本基準では原則として取得時の時価で商標なども個別に評価し、資産から負債を引いた評価額と取得額との差を、のれんなどにします。

使用例

PPAで商標権の価値を個別に見積もり、のれんと区別して整理します。

間違えやすい点買収価格そのものを交渉して決める企業価値評価とは、作業の目的が違います。取得金額をすべてのれんにするものでもありません。配分の結果は、買収後の減価償却や費用計上などに影響します。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第28・29・31・99・100項:取得原価の資産及び負債への配分、識別可能な無形資産とのれんの区分

BPS

びーぴーえす

別名・英字:1株当たり純資産/一株当たり純資産

普通株主に対応する決算書上の純資産を、1株分に直した金額です。「1株当たり純資産」とも呼びます。期末の対象純資産を、自己株式を除く期末の普通株式数で割り、株価が帳簿上の元手の何倍かを見るPBRの計算などに使います。

使用例

BPSを比べる際は、連結決算か単独決算かと、使った期末日をそろえます。

間違えやすい点株価や、会社を売却したときの1株当たりの受取額ではありません。普通株主に関係しない持分などは調整します。また、一定期間の利益を1株分にしたEPSとは異なり、ある時点の純資産に着目します。

出典

日本取引所グループ「用語集:1株当たり純資産」 ↗
本文:BPSの定義、期末普通株式数から自己株式数を控除すること

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第4号 1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」 ↗
第34・35・58項:普通株式に係る期末純資産額、自己株式の控除、普通株主に関連しない金額の調整

非事業資産

ひじぎょうしさん

別名・英字:非事業用資産

会社が持つ資産のうち、評価する事業の運営や収益の獲得に直接は必要ないものを指します。事業に使わない土地や、事業運営に必要な額を超える預金などが例です。M&Aでは、事業の稼ぐ力とは別に価値を確認し、株式価格への反映などを検討します。

使用例

使っていない土地を非事業資産として別に評価するか、取引の対象から外すか検討します。

間違えやすい点現預金や有価証券をすべて一律に分類するものではありません。何が事業に必要かは、会社や評価の前提によって変わります。その資産が生む収益も事業価値に含めた上で、資産価値を重ねて加算しないようにします。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「企業価値」 ↗
本文:事業価値に加算する非事業用資産、有価証券・遊休土地等の例

一橋大学大学院経営管理研究科「フリー・キャッシュ・フロー」 ↗
本文末:賃貸用不動産を別に評価する場合、その収支を事業FCFから除く例と評価範囲の整合

ビジネスDD

びじねすでぃーでぃー

別名・英字:ビジネスデューデリジェンス/事業DD/事業デューデリジェンス

買収する会社や事業が、今後も競争力を保ち、利益を生めるかを調べることです。顧客、市場の見通し、競合との違い、商品の強みなどを確かめ、事業計画に無理がないか、自社の買収目的に合うかを判断する材料にします。

使用例

ビジネスDDで主要顧客との取引の継続性や市場の見通しを調べ、買収後の売上計画を検討する。

間違えやすい点会計数値や資産・負債などを主に調べる財務DDに対し、ビジネスDDは市場や顧客、競争力などの事業面に重点を置きます。互いに関係するため、別々の調査結果を突き合わせて考えます。

出典

経済産業省「我が国企業による海外M&A研究会 報告書」(2019年) ↗
3.2.4「自社戦略との適合性判断のためのビジネスデューデリジェンス」:市場・競合・対象会社の立ち位置と成長戦略との適合

PwC Japanグループ「デューデリジェンス」 ↗
冒頭及び「ビジネスデューデリジェンス」:市場の成長性・事業計画の実現性、財務DD等との区別

非支配株主

ひしはいかぶぬし

親会社が支配する子会社に、親会社グループとは別に出資している株主を指します。買収で子会社にしても、株式を全部取得しなければ、別の株主が残ることがあります。グループの決算では、その株主に属する取り分も分けて表示します。

使用例

子会社の非支配株主が持つ株式と権利を確認し、追加取得や配当、組織再編の進め方を検討する。

間違えやすい点少ない株式を持つ人全般を、いつでも非支配株主と呼ぶわけではなく、親会社との関係で使う言葉です。また、親会社側でないからといって、投票や配当などの株主の権利が当然になくなるわけではありません。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準」 ↗
第26項:子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分を非支配株主持分とする定義。第55-2項:2013年改正での名称変更の経緯。2026年6月以降の改正事項は本文に不採用

日本取引所グループ「上場制度(優先株等)」 ↗
株式による配当・財産分配・議決権等の内容差。実際の権利は株式内容を確認するため参照

非上場株式

ひじょうじょうかぶしき

別名・英字:未上場株式

証券取引所に上場されていない株式です。取引所の株式市場で日々売買される株式とは異なり、売り手と買い手が価格や条件を話し合って取引する場面が多くなります。中小企業のM&Aでも、こうした株式の譲渡がよく扱われます。

使用例

非上場株式を取得する前に、会社の情報、株主の構成、価格の根拠、譲渡に必要な承認を確認する。

間違えやすい点非上場というだけで、売買できない株式になるわけではありません。また、非上場かどうかと、譲渡に会社の承認が必要かどうかは別の問題です。定款や株式の内容を調べ、個別の手続を確認します。

出典

証券保管振替機構「金融商品取引所に上場されていない株式についても、株式等振替制度において取り扱われるのでしょうか」 ↗
非上場株式の定義。非上場でも一定の株式等が振替制度の対象となり得る点。制度の個別銘柄や募集条件は本文に不採用

SMBC日興証券「未公開株」 ↗
取引所に上場していない株式、取引所外の当事者間での売買の説明。制度の近年の指定状況や年次情報は本文に不採用

ヒストリカル・ボラティリティ

ひすとりかるぼらてぃりてぃ

別名・英字:HV

過去の株価などのデータから求める、値動きの大きさの指標です。価格の変化率のばらつきを計算し、通常は年率で表します。ストックオプションなどの権利の価値を見積もる際に、将来の値動きを考えるための材料として使います。

使用例

ヒストリカル・ボラティリティを計算した期間に、事業の大きな変化がなかったか確認します。

間違えやすい点過去の数字なので、将来も同じ大きさで変動するとは限りません。データを集める期間や観察の間隔でも値は変わります。オプションの現在の取引価格から逆算するインプライド・ボラティリティとは求め方が異なります。

出典

日本取引所グループ「用語集:ヒストリカル・ボラティリティ」 ↗
本文:過去の原資産価格の変動率、標準偏差と年率換算

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第11号 ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」 ↗
第9・10・11項:過去の株価実績、情報収集期間・観察頻度・事業の不連続的変化、インプライド・ボラティリティとの区分

筆頭株主

ひっとうかぶぬし

その会社の株主の中で、最も多くの株式を持つ株主を指す言葉です。個人の場合も会社などの法人の場合もあります。M&Aでは、売り手の候補や経営への影響力を調べるため、株主名簿などで持ち株数と保有割合を確認します。

使用例

筆頭株主だけでなく、ほかの株主の保有割合と議決権も調べ、買収に必要な合意を得られるか検討する。

間違えやすい点持ち株数が一番多くても、過半数を持つとは限りません。そのため、筆頭株主というだけで会社を単独で支配できるとも限りません。一定割合以上の保有を基準とする主要株主などとも区別します。

出典

東海東京証券「大株主」 ↗
大株主のうち所有株数が最も多い株主を筆頭株主とする説明。主要株主に関する数値条件は本文へ引用せず、順位と一定割合の違いのみ説明

日本取引所グループ「主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動」 ↗
留意事項:筆頭株主順位の繰上がり、主要株主・親会社異動との区分

非適格組織再編

ひてきかくそしきさいへん

合併や会社分割などのうち、税法上の適格要件を満たさないものです。移す資産をその時の価値で売ったものとして利益や損失を計算するなど、再編の種類に応じた原則的な課税ルールが適用されます。

使用例

予定する会社分割が非適格組織再編になる場合の税額と資金負担を試算する。

間違えやすい点非適格は税務上の区分で、違法な再編や失敗した再編という意味ではありません。会社側と株主側の税金は別に確認し、必ず税金が増えると決めつけないことも必要です。

出典

財務省「組織再編税制に関する資料」 ↗
基本的な考え方/原則として時価取引・適格組織再編成の課税繰延べ

法人税法 ↗
第62条(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)/第62条の2・第62条の3(適格の場合との区別)

秘密保持契約

ひみつほじけいやく

別名・英字:CA(シーエー)/NDA(エヌディーエー)/機密保持契約

相手から受け取った秘密の情報を、決めた目的以外に使わず、無断で外へ漏らさないと約束する契約です。M&Aでは会社名、顧客情報、決算書などを詳しく見せる前に結びます。秘密の範囲や開示できる相手、保管方法などを決めます。

使用例

買い手候補へ会社名と決算書を渡す前に、秘密保持契約を締結する。

間違えやすい点NDAも同じ意味で使われます。契約を結んだから必ず買収する義務が生じるわけではなく、すでに公表された情報などをどう扱うかも契約ごとに確認します。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
用語集/秘密保持契約(NDA、CA)

東京都事業承継・引継ぎ支援センター「M&A基礎知識」 ↗
M&A一般用語/秘密保持契約・ノンネーム

100日プラン

ひゃくにちぷらん

別名・英字:100日計画/ひゃくにちプラン/百日プラン

M&Aが成立した直後の、おおむね100日間に優先して行う作業をまとめた計画です。引継ぎの責任者、従業員や取引先への説明、現状の把握などについて、誰が何をいつまでに行うかを決め、買収後の混乱を減らすために使います。

使用例

買収後の100日プランに、社員との面談、支払手続の引継ぎ、経営課題の確認を盛り込む。

間違えやすい点法律で一律に課された期限ではなく、初期対応を集中的に進める期間の目安です。PMI全体を100日で終えるという意味でもありません。成立前に準備し、成立後に分かった状況に応じて計画を見直します。

出典

中小企業庁「PMI実践ツール活用ガイドブック」 ↗
「3つの実践ツールの紹介とPMIのポイント」「PMIに要する期間」:成立後100日は初期対応を集中的に行う期間の目安

中小企業庁「中小PMIガイドライン」(2022年3月) ↗
1-3「中小PMIの全体像」:成立前の準備、100日を目途とする推進体制・信頼関係構築・現状把握と継続的な取組

中小企業庁「2018年版中小企業白書」第2部第6章第4節3 ↗
経営参画後のアクションプランである「100日プラン」の事例:課題の優先順位、誰がいつまでに何をするかの明確化

100%減資

ひゃくぱーせんとげんし

資本金の額を全額減らし、ゼロにすることです。資本金は会社の財産の総額や現金残高とは別の会計・登記上の金額で、ゼロにしても会社の財産が全部なくなるわけではありません。欠損の整理や事業再生などで検討されます。

使用例

再生計画で100%減資を検討し、資本金の減少と既存株式の取扱いを別々に確認する。

間違えやすい点減資だけで株式や株主の権利が自動的に消えるわけではありません。再生の説明では株式の取得・消却などと一緒に使われることもあるため、実際に行う手続を確認します。

出典

会社法 ↗
第447条(資本金の額の減少)/第449条(債権者の異議)/第171条(全部取得条項付種類株式の取得)/第178条(株式の消却)

表明保証

ひょうめいほしょう

契約で決めた事項について、ある時点で事実に合っていると相手へ伝え、その内容を保証することです。M&Aでは、売り手が株式を正しく保有していることや、開示した重要な情報の正確さなどを取り決めます。

使用例

最終契約で売り手が行う表明保証について、対象項目や例外を一つずつ確認する。

間違えやすい点買収後の利益や成功を何でも約束するものではありません。違っていた場合の補償の範囲・期限・上限などは契約で決まり、DDで調べることとも役割が異なります。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
用語集/表明保証条項

中小企業庁「参考資料7 株式譲渡契約書サンプル」 ↗
別紙1「甲が表明及び保証する事項」/冒頭の表明保証条項に関する注意

表明保証保険

ひょうめいほしょうほけん

M&Aの契約で約束した事実が正しくなかった場合など、表明保証違反による損害を、保険契約で定めた範囲で補う保険です。売り手に求める補償だけでは不安がある場面などで、買い手用・売り手用の商品が使われます。

使用例

売り手の補償負担と買い手の希望が折り合わず、表明保証保険の条件を検討する。

間違えやすい点M&Aの失敗やすべての損害を無条件で補う保険ではありません。すでに分かった問題、補償対象外の項目、免責金額、支払限度額、期間などを確認し、DDも行います。

出典

損保ジャパン日本興亜「海外M&A取引に関わる『表明保証保険』の販売開始」 ↗
2015年5月18日公表/2 商品の概要(契約者・補償内容)/3 商品の特長

マーシュ「表明保証保険」 ↗
買主用・売主用保険/主要な保険免責条項は?

非流動性割引

ひりゅうどうせいわりびき

別名・英字:非流動性ディスカウント

売りたいときに買い手を見つけたり、無理のない価格で売却したりしにくいことを理由に、株式などの評価額を割り引く考え方です。M&Aでは、非上場株式の値段を考える際などに検討します。売却の制限や買い手の見つけやすさなどを確認します。

使用例

非流動性割引を検討する前に、株式の売却制限と評価方法の前提を確認します。

間違えやすい点会社が赤字だから安くする、という理由とは別です。また、非上場株式なら必ず一定割合を差し引く決まりでもありません。評価方法にすでに売りにくさを織り込んでいる場合は、二重に差し引かないよう注意します。

出典

Aswath Damodaran「Answer 24」(NYU Stern) ↗
本文末:流動性の程度による評価差、非公開企業に対する一定率の一律適用の問題

米国内国歳入庁「Discount for Lack of Marketability Job Aid」(2009年参考資料) ↗
掲載pp.4〜5(PDF8〜9頁):DLOM・DLOLの定義、流動性を考慮済みの場合の追加割引との区別。日本の税務基準又はIRSの正式な法的見解としては用いない

非連結子会社

ひれんけつこがいしゃ

親会社が支配する子会社でありながら、グループ全体の決算に資産や負債などをまとめる対象に含めていない会社です。日本基準では原則としてすべての子会社を連結しますが、重要性が乏しい場合など、条件を満たすと除外されることがあります。

使用例

非連結子会社を除外している理由と、その会社が抱える借入金や保証の内容を確認します。

間違えやすい点親会社との関係がない会社、という意味ではありません。非連結でも、保有割合等に応じて投資損益を決算に反映する持分法の対象になる場合があります。除外条件は会計基準によって異なり、親会社が自由に選べるものでもありません。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準」 ↗
第6・13・14項及び注1・注3:子会社の定義、全子会社を原則連結、重要性が乏しい子会社等の除外

企業会計基準委員会「企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準」 ↗
第6項:非連結子会社及び関連会社への投資の持分法適用。重要性の原則にも留意

ファイナンシャルアドバイザー

ふぁいなんしゃるあどばいざー

別名・英字:FA/フィナンシャルアドバイザー/財務アドバイザー

M&Aでは、売り手か買い手のどちらか一方から依頼を受け、その側に立って取引を支援する専門家・支援機関です。FAと略します。相手探しや会社の価値の検討、条件交渉、手続の進行などを支援し、具体的な業務範囲は契約で決めます。

使用例

売り手側のファイナンシャルアドバイザーに、買い手候補の比較と提示条件の検討を依頼する。

間違えやすい点仲介は売り手と買い手の間に入り双方を支援しますが、FAは依頼者である一方の立場で支援します。FASは助言・調査・価値評価などのサービスを指す呼び方で、FAという役割の名称とは使い方が異なります。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
用語集「FA(フィナンシャル・アドバイザー)/FA契約」「仲介者/仲介契約」:一方との契約と双方との契約、支援範囲

Deloitte「ファイナンシャルアドバイザリー領域のサービス内容」 ↗
サービスカテゴリー・提供サービス例:M&A助言、デューデリジェンス、価値評価、PMI、再生支援等

ファイナンシャルアドバイザリーサービス

ふぁいなんしゃるあどばいざりーさーびす

別名・英字:FAS/ファイナンシャルアドバイザリー/フィナンシャルアドバイザリーサービス

企業のM&Aや組織再編、財務面の意思決定などを、専門家が支えるサービスの呼び方です。FASと略されます。会社の価値の評価、買収前の調査、交渉の支援、買収後の統合、事業の立て直しなど、幅広い支援が含まれます。

使用例

ファイナンシャルアドバイザリーサービスの契約範囲に、会社の価値評価と買収前の調査が含まれるか確認する。

間違えやすい点FAはM&Aで一方の当事者を支援する専門家・支援機関の役割を表し、FASはサービスを指す呼び方です。提供会社や部門の名称に使われることもあり、実際にどこまで支援するかは契約内容で異なります。

出典

Deloitte「ファイナンシャルアドバイザリー領域のサービス内容」 ↗
Financial Advisoryのサービスカテゴリー・提供サービス例:M&A助言、財務DD、価値評価、PMI、リストラクチャリング等(提供者によるサービス範囲の一次説明)

中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
用語集「FA(フィナンシャル・アドバイザー)/FA契約」:一方当事者との契約に基づく支援機関と業務範囲

ファイナンシャルバイヤー

ふぁいなんしゃるばいやー

別名・英字:フィナンシャルバイヤー

投資した資金を将来回収し、利益を得ることを主な目的として会社や事業を買う買い手です。投資ファンドなどが代表例です。買収後に経営を改善して企業価値を高め、株式をほかの買い手へ売却したり上場させたりする方法などで回収を目指します。

使用例

買い手候補のファイナンシャルバイヤーに、買収後の経営支援と将来の投資回収方針を確認する。

間違えやすい点自社事業との相乗効果を重視するストラテジックバイヤーと、主な買収目的で区別します。金融目的だから経営に関与しないという意味ではありません。経営支援や追加買収で事業を育てることもあります。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「M&A」 ↗
「ストラテジック・バイヤーとフィナンシャル・バイヤー」:経済的リターンを目的とする買い手、経営改善と上場・事業会社への売却

年金積立金管理運用独立行政法人「ハ行用語集:プライベート・エクイティ(PE)投資」 ↗
PE投資の類型:経営改善・ガバナンス向上、上場・売却によるキャピタルゲイン

ファインディング

ふぁいんでぃんぐ

M&Aの相手となる会社や案件を探すことです。買い手なら取得したい会社、売り手なら事業を引き継ぐ相手の候補を見つけます。業種、地域、事業の強みなどの条件を整理し、情報を集めて、交渉に進む候補を絞り込みます。

使用例

希望する業種と地域を整理して、買収候補のファインディングを進める。

間違えやすい点案件発掘を意味するソーシングと近い意味で使われ、厳密な使い分けが統一されているわけではありません。調査報告書などの英語のfindingsは「調査で分かった事項」という別の意味なので、文脈を確かめます。

出典

日本M&Aアドバイザー協会「買収を検討されている企業団体様へ」 ↗
本文の「案件探し(ファインディング)」:買い手の案件探しとしての用例

三菱東京UFJ銀行「BTMU中国月報 第26号」(2008年3月) ↗
「中堅・中小企業のM&Aにかかるポイント」Ⅰ・1「ファインディング」:ロングリストからショートリストへの候補選定、情報収集・分析

ファンド

ふぁんど

M&Aでいうファンドは、投資家の資金などをまとめて企業や不動産などへ投じ、得られた成果を投資家へ分配する仕組みを指します。会社を買収するPEファンドもその一種です。投資対象や運営方法、使う法律上の形はさまざまです。

使用例

買い手のファンドについて、投資方針と資金を運用する会社を確認します。

間違えやすい点すべてが投資信託という商品や、株式会社という形を取るわけではありません。また、ファンドとその運用を担う会社は役割が異なります。PEファンドは主に非上場株式へ投資するもので、ファンド全体の一部です。

出典

金融庁「ファンド関連ビジネスを行う方へ」 ↗
Ⅰ「集団投資スキーム(ファンド)とは何か」:出資を充てた事業からの収益・財産の分配

日本プライベート・エクイティ協会「よくあるご質問」 ↗
「ファンドとは、どのようなものですか?」:各種組合・投資信託等の形態、PEファンド等の例

VWAP

ぶいわっぷ

別名・英字:出来高加重平均価格/売買高加重平均価格

株式などの取引価格を、取引された数量を重みとして平均した価格です。「出来高加重平均価格」と呼び、1日分なら総売買代金を総売買株数で割ります。少量だけ取引された価格より、多くの株式が取引された価格を強く反映し、売買価格を比べる目安になります。

使用例

株式の売買価格をVWAPと比べる前に、対象日と対象となる市場を確認します。

間違えやすい点価格を単純に足して平均する方法や、その日の最後の取引価格である終値とは違います。計算する期間や対象取引が違えば結果も変わります。会社の将来価値や、今後売買できる価格を保証する数字ではありません。

出典

野村證券「オンラインサービス ヘルプ:個別銘柄情報―株価」 ↗
「VWAP」「出来高」「売買代金」:1日の総売買代金÷総出来高、売買代金は約定価格×株数の合計

ブーン・ピケンズ

ぶーんぴけんず

別名・英字:T. Boone Pickens

米国の石油事業家・投資家T. Boone Pickensを指します。1980年代にMesa Petroleumを率い、ユノカルへの買収提案に関わった人物です。当時の企業買収や買収防衛策の歴史を読む際に登場する人名で、2019年に亡くなりました。

使用例

ユノカル事件の資料でブーン・ピケンズの立場を確認し、買い手側の提案と対象会社の対抗策を分けて読む。

間違えやすい点買収手法や法制度の名前ではありません。本人が当時行ったこと、裁判所が判断したこと、現在の日本で認められる行為は別です。人名だけを暗記するより、どの取引・判例に関係したかを結び付けます。

出典

デラウェア州最高裁判所「Unocal Corp. v. Mesa Petroleum Co.」(1985年、判決本文) ↗
事実関係及び脚注1:T. Boone PickensのMesa各社での役職・関係と、1985年のMesaによるUnocalへの買収提案。原判決の公開転載

National Football Foundation「NFF Mourns the Passing of T. Boone Pickens」(2019年9月11日) ↗
同財団の役員・顕彰対象者に関する発表:2019年9月11日の死去。現在の活動人物と誤解させないため参照

フェアネスオピニオン

ふぇあねすおぴにおん

別名・英字:Fairness Opinion

買収価格や合併比率などの条件が、財務面から見て妥当かについて、外部の専門家が示す意見です。会社の取締役会などが、評価の前提や分析を踏まえ、取引条件を判断するための材料として利用します。

使用例

取締役会で買収価格を判断するにあたり、フェアネスオピニオンの内容と評価の前提を確認する。

間違えやすい点株価算定書が価値の金額や範囲を示すのに対し、フェアネスオピニオンは提示された価格や比率の財務面での妥当性に関する意見です。取引全体の適法性や、買収後の利益を保証するものではありません。

出典

KPMG「バリュエーション(取引目的・会計目的)」 ↗
「フェアネスオピニオン」:外部専門家による価格・統合比率の財務的観点からの分析、意見書と取締役会の判断

経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019年6月28日) ↗
3.3.2「第三者評価機関等からの株式価値算定書等の取得」、3.3.2.2:株式価値算定書とフェアネス・オピニオン、取引条件の公正性の検討

フェアマーケットバリュー

ふぇあまーけっとばりゅー

別名・英字:FMV/適正市場価値/Fair Market Value

売買を強いられておらず、必要な情報を持つ売り手と買い手が、通常の市場で合意すると考えられる価値です。FMVと略し、適正市場価値や公正市場価値と訳されます。会社や株式、資産の価値を評価する際の考え方の一つです。

使用例

会社のフェアマーケットバリューと、自社だけが見込める買収後の効果を分けて検討する。

間違えやすい点実際の売買価格や帳簿の金額と、必ず一致するものではありません。会計基準の公正価値や税務上の時価も、それぞれの制度で条件や評価方法を確認する必要があり、名前が近いだけですべて同じとはいえません。

出典

米国内国歳入庁「Publication 561」(2025年12月版) ↗
What Is Fair Market Value (FMV)?/FMV:強制されず、関連事実について合理的知識を持つ売り手・買い手。一般概念の参考とし日本の税法上の評価規定としては用いない

KPMG「バリュエーション(取引目的・会計目的)」 ↗
「M&A、組織再編における価値評価、統合比率算定」「財務会計目的の評価」「プライシングならびに事業計画の検討」:FMV、投資価値と目的別の評価

負債

ふさい

過去の取引などにより、会社が将来お金を払う、商品やサービスを渡すといった負担を、会計上の条件に従って金額で表したものです。借入金や買掛金、顧客から先に受け取った代金に対応する負担などが含まれます。M&Aでは、引き継ぐ負担を調べる基本項目です。

使用例

負債の明細を調べ、利息を払う借入金と、仕入先への未払代金を区別します。

間違えやすい点利息の付く借入金だけを指す言葉ではありません。また、今後予定するすべての支出が負債になるわけでもありません。決算書に載っていない負担がないかも調べ、現金で払う時期や内容を確認します。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第5号 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」 ↗
第19・21項:資産やサービス等の経済的資源を放棄・引渡しする義務としての負債の特徴と表示

企業会計基準委員会「企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準」 ↗
第26・78・79項:受領した対価に対応する財・サービス移転義務又は返金義務、契約負債の計上

負債コスト

ふさいこすと

会社が借入金や社債でお金を集めるために負担する金利などのコストです。企業価値を見積もる際は、貸し手がその会社の返済リスクなどに応じて求める収益率を考えます。株主が求める収益率とは分け、資金調達全体のコストを計算する材料にします。

使用例

買収資金の調達条件を踏まえ、評価に使う負債コストを見直します。

間違えやすい点借入金の元本残高そのものではなく、調達に必要な率などを表します。過去に借りた金利が、今の評価に適するとも限りません。税金への影響を考慮する前後で値が変わるため、計算の前提もそろえます。

出典

日本取引所グループ「用語集:資本コスト」 ↗
本文:債権者から調達した負債に係るコストと、株主資本コストとの区分

Aswath Damodaran「The Cost of Capital」(NYU Stern) ↗
PDF23〜24ページ「The Cost of Debt – Current and Consistent」「The Tax Benefit of Debt」:現在の信用リスクと金利、税効果。過去の契約金利をそのまま使わない考え方

物的承継

ぶってきしょうけい

事業を引き継ぐ際に、経営に必要な財産を後継者へ引き継ぐことです。事業用の土地・建物・設備だけでなく、会社を支配する基礎となる株式なども関係します。誰が何を持っているかを整理し、売買・贈与・相続などの方法を考えます。

使用例

後継者への物的承継に向け、自社株式と経営者個人が持つ工場用地を整理する。

間違えやすい点後継者を選び育てる人的承継や、技術・顧客との関係などの引継ぎとは区別して使います。社長が交代しても、株式や個人所有の事業用財産が自動的に移るわけではありません。

出典

中小企業庁「事業承継を知る」 ↗
事業承継の構成要素/人(経営)・資産・知的資産の承継

中小企業庁「事業承継ガイドライン」 ↗
財産の承継―株式・事業用資産の分散防止

プットオプション

ぷっとおぷしょん

別名・英字:プット

株式などの対象を、決めた価格で売ることができる権利です。契約で決められた時期や条件に従って行使します。対象の価格が下がっても一定価格で売れる権利を持つため、将来の売却条件を考える際や、金融商品の評価などで使う言葉です。

使用例

プットオプションの契約を読み、いつ、誰に、どの価格で売却できるか確認します。

間違えやすい点権利を買った側は、不利なら行使しない選択ができます。一方、権利を売った側は、有効に行使されると買い取りや差額の支払いなど、契約に応じる義務を負います。買う権利であるコールオプションとは反対です。

出典

日本取引所グループ「用語集:プット・オプション」 ↗
本文冒頭:原資産を権利行使価格で売る権利という定義

日本取引所グループ「よくあるご質問:先物・オプション」 ↗
Q7:権利行使と権利放棄、買い手の権利と、行使に応じる売り手の義務

普通株式

ふつうかぶしき

配当や会社を清算したときの財産分配、株主総会での投票などについて、優先や制限の特別な内容を付けていない標準的な株式です。M&Aでは、普通株式の数や持ち主を調べ、誰が会社の意思決定に関わるかを確認します。

使用例

対象会社の定款と株主名簿を確認し、普通株式と、それ以外の権利内容の株式を分けて把握する。

間違えやすい点普通株式を持てば、毎年必ず配当を受けられるという意味ではありません。また、優先株式などでは配当の順番や投票の権利が異なることがあるため、株数だけで同じ権利と決めつけません。

出典

東海東京証券「普通株式」 ↗
証券会社自身の証券用語解説:普通株式の一般的な権利と、優先株式等との違い

日本取引所グループ「上場制度(優先株等)」 ↗
優先株等の利益配当・残余財産・転換権・議決権などについて普通株式と異なる商品性の説明

不動産M&A

ふどうさんえむあんどえー

不動産を持つ会社の株式を取得するなどして、間接的にその不動産を引き継ぐ取引の呼び方です。不動産そのものを売買する代わりに、その持ち主である会社を買う形で行う例があり、物件と会社の両方を調べて条件を検討します。

使用例

不動産M&Aを検討する際、建物の状態に加え、保有会社の借入金や賃貸借契約を確認する。

間違えやすい点直接の不動産売買と異なり、株式の取得では会社が不動産の持ち主のままです。土地・建物だけでなく、その会社の借入金や契約、過去の税務なども調べます。税金や費用の有利・不利は取引条件により異なります。

出典

Deloitte「不動産所有会社の株式譲渡~不動産M&A~」(2022年11月) ↗
「はじめに」「買い手からみた不動産M&A」:不動産所有会社の株式売却、所有権は会社に残ること、債務・潜在リスク・DDと現物売買との差

不動産取得税

ふどうさんしゅとくぜい

土地や建物を買う、贈与を受ける、建物を建てるなどして不動産を取得したとき、取得者に都道府県が課す税金です。事業譲渡で工場や店舗の不動産を受け取る場合なども検討します。非課税や軽減となる場合もあります。

使用例

工場の土地・建物を事業譲渡で取得するため、不動産取得税も買収費用に含めて試算する。

間違えやすい点毎年の所有にかかる固定資産税とは異なります。株式譲渡で土地の所有者である会社が同じままなら、株主が土地自体を取得したことにはなりません。

出典

東京都主税局「不動産取得税」 ↗
1 不動産取得税とは/2 不動産の価格

東京都主税局「不動産取得税Q&A」 ↗
Q1(取得に対する課税)/Q21(非課税となる場合)

負ののれん

ふののれん

買収で受け入れた資産の価値から引き継いだ負債を差し引いた額が、取得にかかった金額を上回る場合の差額です。日本の会計基準では、資産・負債の見落としや評価を点検し、それでも残る差額を原則として発生した期の利益にします。

使用例

買収の会計処理で負ののれんが見込まれたため、引き継ぐ資産と負債の評価を再確認する。

間違えやすい点通常ののれんは、取得にかかった金額の方が大きい場合の差額です。負ののれんは現金収入そのものではなく、帳簿の純資産と価格を比べるだけで安い買収だったと即断できません。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準」 ↗
第28項〜第31項(取得原価の配分・差額)/第33項(負ののれんの会計処理)。2024年7月1日までの修正反映版。

プライベートエクイティ

ぷらいべーとえくいてぃ

別名・英字:PE

主に上場していない会社の株式や、それに投資する分野を指す言葉です。PEと略します。企業へ成長資金を出したり、買収後の経営改善を支援したりする投資があります。M&Aでは、買い手となるファンドの投資分野として登場します。

使用例

買い手候補が行うプライベートエクイティ投資について、対象企業や支援方針を確認します。

間違えやすい点PEそのものは、運営会社の名前や一つの法律上の組織形態ではありません。PEへの投資を行う仕組みがPEファンドです。上場会社を買収して非上場化する投資もあり、創業直後の会社への投資だけではありません。

出典

日本プライベート・エクイティ協会「よくあるご質問」 ↗
「プライベート・エクイティとは、どのようなものですか?」:未上場株式・投資行為、非上場化、投資対象の幅

年金積立金管理運用独立行政法人「ハ行用語集」 ↗
「プライベート・エクイティ(PE)投資」:非上場株式を対象とするPEファンドと投資手法の分類

プライベタイゼーション

ぷらいべたいぜーしょん

別名・英字:ゴーイングプライベート/Going Private/Privatization

M&Aでは、上場会社の株式を経営陣や特定の買い手などへ集め、株式市場で広く売買されない形にする非公開化を指す呼び名です。ゴーイングプライベートとも呼ばれます。経営陣による買収などを通じて、上場廃止を伴うことがあります。

使用例

プライベタイゼーションの計画を読み、株主から株式を取得する方法と、上場廃止までの手順を確認する。

間違えやすい点会社の事業をやめることではありません。また、英語には国の事業を民間に移す民営化の意味もあるため、文脈を確認します。非公開化でも、残る株主への説明や株式取得の手続が不要になるわけではありません。

出典

米国証券取引委員会(SEC)Investor.gov「Going Private」 ↗
Going Privateの定義及び株主への情報提供の説明。米国制度の届出要件を日本の要件としては記載しない

ストライク「プライベタイゼーション」 ↗
日本語のM&A用語として公開会社の非公開化を指す用法の確認。具体的な過去の手法説明は転載・採用していない

ブラジウス基準

ぶらじうすきじゅん

別名・英字:Blasius基準/ブラウシス/ブラウシス基準

米国デラウェア州の判例で、取締役が株主の投票を妨げることを主な目的に行動したとき、強い正当化理由を求めた考え方です。1988年のBlasius事件に由来し、株主が取締役を選ぶ権利を守るための審査として説明されてきました。

使用例

米国判例を調べ、ブラジウス基準が問題にした株主の投票への介入と、会社側の説明を確認する。

間違えやすい点日本の法律そのものではありません。また、米国でも2023年のCoster判決で、対抗措置が必要で釣り合ったものかをみるユノカル基準の中に整理されました。昔の独立した審査が不変に続くとは捉えません。

出典

デラウェア州最高裁判所「Coster v. UIP Companies, Inc.」(2023年6月28日) ↗
p5脚注3:Blasiusの1988年判例とcompelling justificationの説明。p30〜32:Blasius等をUnocal審査に組み込み、投票の自由を保護する整理

ブラック・ショールズモデル

ぶらっくしょーるずもでる

別名・英字:ブラック・ショールズ式

株式などを決められた価格で売買する権利の理論的な価値を、計算式で見積もるモデルです。株価、権利行使価格、期限までの期間、値動きの大きさなどを使います。M&Aでは、対象会社のストックオプションの評価などで登場します。

使用例

ブラック・ショールズモデルに入力した株価変動性と予想残存期間の根拠を確認します。

間違えやすい点計算結果が実際の取引価格になるとは限りません。値動きなどに一定の仮定を置くため、途中で権利を行使する条件や譲渡制限なども考慮します。株価の将来の上がり下がりを当てる式ではありません。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第11号 ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」 ↗
第2項(2)・第5〜7項:連続時間型モデルの例、評価技法が反映する特性と基礎数値、予想残存期間

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第11号(2006年5月31日改正版)」 ↗
第2項(2)・第5〜7項:基準日前からのモデルの定義と、ストック・オプションの特性の反映を確認

ブランクチェック

ぶらんくちぇっく

別名・英字:ブランクチェック優先株式

M&Aの株式制度の文脈では、米国などで株主があらかじめ認めた範囲内で、取締役会が優先株式の権利内容を決めて発行できる仕組みを指します。配当や議決権などを柔軟に設計でき、資金調達や買収への対応に使われます。

使用例

米国企業の買収を検討し、ブランクチェック優先株式を発行する権限が取締役会にあるか調べる。

間違えやすい点白紙小切手という一般的な比喩や、SPACを指す「ブランクチェック会社」とは文脈が異なります。何でも自由に発行できるわけではなく、その国・州の法律や定款等による制限があります。

出典

米国デラウェア州一般会社法 ↗
Title 8, §151(a)・(g)(定款に基づく取締役会の種類・シリーズ株式の権利設定権限)

Citrine Global, Corp.「PRE 14C」(米国SEC提出資料、2024年) ↗
CREATION OF BLANK CHECK PREFERRED STOCK

米国SEC「Special Purpose Acquisition Companies, Shell Companies, and Projections」 ↗
Rule 405におけるblank check companyの定義(優先株の発行権限との区別)

ブランド価値

ぶらんどかち

会社や商品に対する知名度、信頼、好ましいイメージなどが、選ばれやすさや価格、将来の収益にもたらす価値です。M&Aでは、設備や預金だけで見えない強みとして調べます。名前やロゴの有無だけでなく、顧客が選び続ける理由などを確認します。

使用例

ブランド価値を検討するため、継続購入の状況や他社商品との価格差を確認します。

間違えやすい点有名であれば必ず大きな金額で売れるとは限りません。また、商標権という法律上の権利や、会計上ののれん全体と同じものでもありません。買収時に無形資産として個別に計上できるかは、識別できるかなどを検討します。

出典

中小企業庁「2022年版 中小企業白書」第2部第2章第1節 ↗
「1.ブランドの構築・維持のための取組」:ブランドの定義、第2-2-4・5図における価格・売上総利益率との関係。因果関係を断定しない

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第10号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」 ↗
第370項「いわゆるブランドの取扱い」:のれんとの区分、独立した価額の合理的算定及び分離可能性

フリーキャッシュフロー

ふりーきゃっしゅふろー

別名・英字:FCF

事業で生み出す資金から、事業を続けたり成長させたりするために必要な支払い・投資を差し引いた資金を示す指標です。FCFと略します。借入れの返済や株主への配当などに回す余地を考え、M&Aでは事業の価値を見積もる際にも使います。

使用例

買収対象のフリーキャッシュフローを見積もり、必要な設備投資も織り込みます。

間違えやすい点利益や現金残高そのものではありません。営業活動と投資活動の現金収支を足す簡便計算などもあり、評価する対象に応じて計算範囲を確認します。大型投資で一時的にマイナスでも、それだけで経営不振とは決まりません。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「フリー・キャッシュ・フロー」 ↗
本文:事業が生み出す資金、必要投資の控除、債権者・株主への分配、価値算出対象と収支範囲の整合

中小企業基盤整備機構 J-Net21「キャッシュフロー経営の基本」 ↗
(4)キャッシュフロー計算書:営業活動と投資活動のキャッシュフローの合計をフリーキャッシュフローと呼ぶ説明

フリーキャッシュフロー問題

ふりーきゃっしゅふろーもんだい

事業に必要な有望な投資を賄っても資金が余るとき、経営者が株主へ返すより、採算の低い投資や組織の拡大などに使ってしまうおそれがある、という問題です。経営者と株主の利害のずれとして捉え、M&Aや経営を監督する仕組みを考える際に登場します。

使用例

フリーキャッシュフロー問題の観点から、余剰資金の投資先や株主への還元方針を確認します。

間違えやすい点資金不足を指す言葉ではなく、余った資金の使い方の問題です。通常のFCFという資金指標とも同じ意味ではありません。余剰資金が多い会社で必ず起きるとは限らず、投資計画や経営の監督体制を確認します。

出典

Michael C. Jensen「Agency Costs of Free Cash Flow, Corporate Finance, and Takeovers」(American Economic Review 76(2), 1986, pp.323–329) ↗
著者公開稿pp.2〜3:有望な投資を賄って余るFCFの定義、配当等による資金返還と低採算投資・浪費を巡る経営者と株主の利害対立

ブリッジローン

ぶりっじろーん

別名・英字:つなぎ融資/Bridge Loan

後で予定する資金調達までの間を埋める、一時的な借入れです。M&Aでは、買収代金の支払いを先に行い、その後の長期融資や出資などで返す予定の資金として使うことがあります。いつ、何のお金で返すかが重要になります。

使用例

買収代金に使うブリッジローンについて、借換えの予定時期と、予定どおり調達できない場合の対応を確認する。

間違えやすい点短期間の借入れなら、すべて同じ条件になるわけではありません。また、後で長期融資に切り替えられることが必ず保証されるわけでもなく、返済期限、金利、借換えや出資の条件を確認します。

出典

米国通貨監督庁(OCC)「Comptroller’s Handbook: Leveraged Lending」 ↗
Appendix B Glossary p58「Bridge loan」:長期的な借入れ・証券発行・資産売却等で置き換える短期資金。2008年版、2025年3月の修正履歴を確認。米国での一般的説明を用い、年数条件は本文に不採用

ブレークアップフィー条項

ぶれーくあっぷふぃーじょうこう

別名・英字:ブレークアップフィー/Break-up Fee

M&Aの契約が、別の買い手の提案を選ぶなどの決められた理由で終了したとき、相手方へ一定の金額を支払う約束です。米国などのM&A契約で使われ、交渉にかけた負担や取引が実現しないリスクを調整する役割があります。

使用例

最終契約のブレークアップフィー条項を読み、どの終了理由で、誰が誰にいくら払うのか確認する。

間違えやすい点交渉がまとまらなければ必ず発生する、法律で一律に決まった罰金ではありません。支払条件と金額は契約で確認します。高すぎる支払額は、ほかの有利な提案の検討を妨げる問題も生じ得ます。

出典

経済産業省委託「M&Aに関する外国法制等調査」 ↗
米国法制 p41〜42「M&Aにおける取引保護条項」「ブレークアップ・フィー」:解除時の支払い・取引実行の確実性・過大な金額の問題。外国法の調査内容であり日本の一律要件とはしない

プレパッケージ型民事再生

ぷれぱっけーじがたみんじさいせい

民事再生を申し立てる前から、事業を支援するスポンサー候補などを確保し、再建の準備を進めておく方法です。例えば、手続の開始後に早く事業を譲り渡せるようにし、経営の混乱や事業価値の低下を抑えることを目指します。

使用例

事前にスポンサー候補を探し、プレパッケージ型民事再生で店舗事業の継続を目指す。

間違えやすい点裁判所を使わない私的整理ではなく、民事再生の進め方の一つです。事前に合意していれば自由に実行できるわけではなく、裁判所の手続や必要な許可などに従います。

出典

東京地方裁判所民事第20部「よくある質問」 ↗
民事再生手続の進行イメージと実際の活用事例等/短縮スケジュール・プレパッケージ型

東京地方裁判所民事第20部「民事再生手続の進行イメージと実際の活用事例等」 ↗
2026年2月版/短縮スケジュールのプレパッケージ型

プロキシーファイト

ぷろきしーふぁいと

別名・英字:委任状争奪戦/Proxy Contest/Proxy Fight

株主総会で自分たちの提案や取締役候補を通すため、会社側と提案する株主側などが、ほかの株主から投票を任せてもらおうと争うことです。委任状争奪戦とも呼ばれます。株式を買い集める方法とは別に、株主の支持を集めて経営に影響を与えます。

使用例

プロキシーファイトの資料を読み、双方の取締役候補と提案内容を比較して議決権の行使を判断する。

間違えやすい点株式の売買や、株主本人が一斉に会場へ集まることだけを指す言葉ではありません。米国の代理投票ルールと日本の手続は同じではなく、委任する内容や適用される手続を確認します。

出典

米国証券取引委員会(SEC)「Universal Proxy: Small Entity Compliance Guide」 ↗
Introduction及びWho is affected:会社側と対抗する株主側による候補者提案・委任状勧誘を伴う取締役選任争い。2021年採択の米国ルールの説明で、米国固有のカード要件・数値は本文に不採用

プロラタ方式

ぷろらたほうしき

金額などの割合に応じて配分する方法です。事業再生では、複数の銀行への返済額を借入残高などの割合に合わせて決める場面で使います。例えば、対象となる借入額が二対一なら、返済額も二対一に分ける考え方です。

使用例

返済条件を見直す際、各銀行の借入残高に応じたプロラタ方式の返済案を作る。

間違えやすい点すべての銀行へ同じ金額を返す方法ではありません。借入残高を基準にするか、担保で回収できる部分を除いた金額を基準にするかでも、割合は変わります。

出典

北海道中小企業活性化協議会「知っておきたい用語集」 ↗
プロラタ方式(残高プロラタ・信用プロラタ)

分割型分割

ぶんかつがたぶんかつ

税務上の会社分割の区分で、事業を移す代わりに交付される株式などのすべてを、事業を切り出した会社の株主へ渡す型です。例えば、新会社に事業を移し、元の会社が受け取った新会社の株式を分割の日に株主へ渡します。

使用例

会社の事業を二つに分け、分割型分割で新会社の株式を既存株主へ渡す方法を検討する。

間違えやすい点分社型分割との違いは、主に株式などを誰が受け取るかです。会社法上の分割と株主への分配などを組み合わせて行い、税金を繰り延べられるかどうかは別の条件で判定します。

出典

法人税法 ↗
第2条第12号の9(分割型分割の定義。無対価分割にも別途定義あり)

会社法 ↗
第758条第8号・第763条第1項第12号(分割に際して行う剰余金の配当等)

分社化

ぶんしゃか

今まで一つの会社の中にあった事業や部門を、別の会社として運営する形に分けることです。事業ごとの責任を明確にしたり、外部から出資を受けたりするために行われます。会社分割や事業譲渡など、目的に合う手法を選んで進めます。

使用例

事業部門の分社化を検討し、どの会社へ人員、契約、設備を移すか、事業を続けるために必要なものを整理する。

間違えやすい点会社分割という一つの法的手続と、必ず同じ意味ではありません。分社化は別会社へ分ける経営上の取組を指し、会社分割はそのための手法の一つです。部署名を変えるだけでは別法人にはなりません。

出典

中小企業基盤整備機構 J-Net21「スタートアップ創出促進保証」(2025年2月14日) ↗
分社化により別法人として新規設立する場合の説明・事業部門から別法人を設ける事例。保証制度の年数・金額等の条件は一般定義へ転用していない

中小企業基盤整備機構 J-Net21「事業譲渡と会社分割」 ↗
事業の移転手法としての事業譲渡・会社分割の比較。税制上の個別要件や過去の年度条件は本文に不採用

分社型分割

ぶんしゃがたぶんかつ

別名・英字:物的分割

税務上の会社分割の区分で、事業を移す代わりに受け取る株式などを、事業を切り出した会社が持つ型です。例えば、製造部門を新会社へ移して受け取った新会社の株式を、元の会社が持ち続ける形が当たります。

株式などの対価を交付する典型例。分社型・分割型は税務等の分類で、吸収分割・新設分割とは別の軸です。無対価分割などは別途判定します。
株式などの対価を交付する典型例。分社型・分割型は税務等の分類で、吸収分割・新設分割とは別の軸です。無対価分割などは別途判定します。
使用例

製造事業を分社型分割で子会社へ移し、元の会社がその子会社の株式を持つ。

間違えやすい点株主へ株式などを渡す分割型分割と区別します。会社法の吸収分割・新設分割とは別の分け方で、何も受け取らない分割には株式の保有関係などによる税法上の判定ルールがあります。

出典

法人税法 ↗
第2条第12号の10(分社型分割の定義)

会社法 ↗
第2条第29号・第30号(吸収分割・新設分割の定義)

分離課税

ぶんりかぜい

ある種類の所得を、給与などほかの所得と分けて税額を計算する方法です。株式の売却益や土地の売却益などで用いられます。自分で申告する申告分離課税と、支払時に税金が差し引かれて納税が終わる源泉分離課税があります。

使用例

個人株主が会社の株式を売った利益について、申告分離課税の申告を準備する。

間違えやすい点所得を合算して計算する総合課税と区別します。分離課税ならすべて同じ税率・同じ損益通算のルールになるわけではなく、申告が不要という意味でもありません。

出典

国税庁「No.2240 申告分離課税制度」 ↗
概要/申告分離課税制度の例

国税庁「No.2230 源泉分離課税制度」 ↗
概要

ベアハッグ

べあはっぐ

別名・英字:Bear Hug

米国のM&Aなどで、対象会社へ正式な買収提案を示し、交渉に応じるよう強く働きかける方法を指します。提案を公表して株主の関心を集め、経営陣へ圧力をかける場合もあります。まず非公開の書簡で持ちかける形もあります。

使用例

ベアハッグと呼ばれる買収提案について、提示条件、資金の裏付け、公表の経緯を確認する。

間違えやすい点高い買収価格を示せば、対象会社が法律上必ず承諾するという意味ではありません。非公開の提案と公表された提案の両方があり、価格だけでなく実現可能性や条件も検討する必要があります。

出典

Wachtell, Lipton, Rosen & Katz「Takeover Law and Practice」(2023年) ↗
VII.F.1 p158「Private Versus Public Forms of Approach」:非公開のbear-hug letter、正式提案という性質、公表して株主・世論から対象会社へ圧力をかける場合。米国のM&A法律実務者自身の資料

ベータ値

べーたち

別名・英字:β値/ベータ係数

市場全体の値動きに対して、ある株式の収益率がどの程度連動するかを表す指標です。市場に共通する要因に伴うリスクの大きさを見るもので、M&Aでは、投資家が求める収益率を考え、会社の価値を見積もるための計算などに使います。

使用例

株式のベータ値を使う前に、比較する市場指数と計算期間を確認します。

間違えやすい点ボラティリティが値動き全体の大きさを見るのに対し、ベータは市場との関係を見ます。市場が動くたびに必ず同じ倍率で株価が動くわけではありません。使う市場指数や計算期間によっても変わります。

出典

日本取引所グループ「用語集:β値」 ↗
本文:市場共通要因に伴うリスク、TOPIXの変動に対する個別銘柄の変動の傾向

企業年金連合会「用語集:ベータ値」 ↗
本文:過去の株式収益率と市場指数収益率の回帰直線の傾きとしての定義

ペーパーカンパニー

ぺーぱーかんぱにー

登記上は会社として存在していても、自社で行う事業や人員・設備などの実体がほとんどない会社を指す言い方です。資産の保有や特定の取引のために置かれる場合もあります。M&Aでは登記だけでなく、実際の活動と所有者を確かめます。

使用例

取引相手がペーパーカンパニーの可能性もあるため、実際の所有者と事業内容を確認する。

間違えやすい点こうした会社の設立や保有が直ちに違法になるわけではありません。正当な目的で使われる場合もありますが、資金の出所や実際の所有者を隠すための悪用などには注意が必要です。

出典

米国財務省FinCEN「Potential Money Laundering Risks Related to Shell Companies」 ↗
FIN-2006-G014(2006年11月9日)/冒頭・Shell Company Overview

国家公安委員会「委員長記者会見要旨」 ↗
2024年11月28日/ペーパーカンパニーの法人口座の悪用に関する質疑

ベストオーナー

べすとおーなー

その会社や事業の強みを活かし、長い目で見て最も価値を高められると期待される経営主体です。資金だけでなく、技術、人材、販売網や経営能力、成長のために投資する意思などを見て、誰が持つのが望ましいかを考えます。

使用例

自社が事業を持ち続ける場合と売却する場合を比べ、その事業のベストオーナーは誰かを検討する。

間違えやすい点最も高い金額を提示した買い手と、必ず同じとは限りません。また、売却先だけに使う言葉ではなく、現在の持ち主である自社が引き続き適任かを考える際にも使います。公的な資格や認定の名称ではありません。

出典

経済産業省「事業再編実務指針(事業再編ガイドライン)エグゼクティブ・サマリー」(2020年7月31日) ↗
掲載p.2・1.3及び脚注2:中長期の企業価値を最大化する経営主体、自社がベストオーナーかという観点

経済産業省「事業再編実務指針(事業再編ガイドライン)」 ↗
掲載p.31・事業の切出しに関する考え方:黒字事業でも自社がベストオーナーでない場合、事業の価値と従業員の利益

弁護士法人

べんごしほうじん

弁護士法に基づいて弁護士が設立し、法律相談、契約書の確認、訴訟の代理などの法律事務を行う法人です。M&Aでは法務調査や最終契約の検討などを担当します。個人の弁護士とは別に、法人として依頼を受ける形になります。

使用例

買収先の契約や許認可を確認するため、弁護士法人へ法務DDを依頼する。

間違えやすい点法律事務所という名称があるだけで法人とは限りません。また、株式会社のように株式を買って所有する組織ではなく、構成員になれる人などに弁護士法の特別なルールがあります。

出典

弁護士法 ↗
第30条の2(設立等)/第30条の4(社員の資格)/第30条の5(業務の範囲)

ベンダーデューデリジェンス

べんだーでゅーでりじぇんす

別名・英字:VDD/ベンダーDD

売り手が専門家などに依頼し、売却する会社や事業をあらかじめ調べてもらうことです。財務などの情報や問題点を整理し、買い手候補が検討しやすい報告書などにまとめます。複数の買い手候補との交渉を進める際にも使われます。

使用例

入札での売却に備えてベンダーデューデリジェンスを行い、買い手候補へ開示する資料を整える。

間違えやすい点ここでのベンダーは売り手を意味します。通常の買い手側の調査とは依頼する側が異なり、売り手が調査したからといって、買い手の確認が不要になるわけではありません。調査範囲や前提も確かめます。

出典

PwC Japanグループ「デューデリジェンス」 ↗
「ベンダーデューデリジェンス」:売り手側の事前の論点整理、買い手候補の分析に用いる情報、VDDレポート及び入札案件での開示

ベンチャー企業

べんちゃーきぎょう

独自の技術や新しい商品・サービス、仕事の仕組みなどを使い、新しい事業を育てて成長を目指す会社を指す言葉です。M&Aでは、その技術や人材、事業を取り込むための出資・買収の対象となることがあります。制度や調査によって定義は異なります。

使用例

ベンチャー企業との資本提携を検討し、技術の強みだけでなく、売上の見通しと資金の使い道を確認する。

間違えやすい点設立したばかりの会社や小さな会社が、すべて自動的に該当するわけではありません。会社の呼び名だけで成長や投資の成功が保証されるものでもなく、制度を使う場合はその制度の条件を確認します。

出典

国会会議録 第146回国会 衆議院商工委員会第9号(1999年12月8日) ↗
茂木政務次官の政府答弁:統一的定義の有無、独創的技術・新たな製品や業態を通じた新事業分野の創造。特定制度の年数・規模条件を一般定義へ転用していない

ベンチャーキャピタル

べんちゃーきゃぴたる

別名・英字:VC

成長が期待される未上場の新興企業などに出資する投資会社やファンドです。お金を提供するだけでなく、人材や取引先の紹介、経営への助言などで成長を支えます。将来の上場やM&Aで保有株式を売却し、資金の回収と利益の獲得を目指します。

使用例

ベンチャーキャピタルから出資を受ける際、成長支援の内容と将来の株式売却の方針を確認する。

間違えやすい点銀行から借りる融資と、株式を引き換えに受ける出資は異なります。また、一般に成熟した企業の経営権を取得するバイアウトファンドと比べ、成長途上の企業を主な対象とする点に特徴があります。

出典

日本取引所グループ「ベンチャーキャピタル」 ↗
用語解説本文:未公開会社への出資、人材・取引先紹介等の成長支援、株式売却益

一橋大学大学院経営管理研究科「ベンチャーキャピタル」 ↗
回答:成長企業への投資、IPO又はM&Aによる株式売却と投資回収

年金積立金管理運用独立行政法人「ハ行用語集:プライベート・エクイティ(PE)投資」 ↗
「プライベート・エクイティ(PE)投資」:バイアウト・VC等の類型、上場や事業会社への売却

ポイズンピル

ぽいずんぴる

別名・英字:毒薬条項

特定の買収者以外が株式を得られる権利などを使い、その買収者の持株割合を薄めることで買収を難しくする仕組みです。「毒薬条項」とも呼ばれます。日本では、新株予約権という、株式を取得できる権利を使う方法などがあります。

使用例

ポイズンピルの説明を読み、発動条件と、買収者やほかの株主への影響を確認する。

間違えやすい点買収への対抗手段の一つであり、買収防衛策全体の別名ではありません。導入・発動が常に認められるわけではなく、必要性や合理性、株主の意思や利益、手続の適切さなどが問題になります。

出典

国税庁「新株予約権を用いた敵対的買収防衛策の新類型に関する原則的な課税関係」(2005年7月7日) ↗
冒頭のポイズンピル(毒薬条項)・ライツプランの説明及びリンク先「経済産業省から示された新類型」:名称と典型的仕組みのみ参照し、旧資料の税務上の結論は本文に用いない

東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日) ↗
原則1-5・1-6:買収防衛策や大規模な希釈化を伴う資本政策の必要性・合理性・適正な手続と株主への説明

経済産業省「企業買収における行動指針」(2023年8月31日) ↗
第5章「買収への対応方針・対抗措置」、5.2株主意思の尊重・5.3必要性と相当性の確保。2026年の追加解釈案は本稿に用いない

包括承継

ほうかつしょうけい

財産や契約上の権利・義務を、一つずつ移すのではなく、法律の効果によってまとめて引き継ぐことです。M&Aでは合併や会社分割で使われます。会社分割なら、分割契約や計画で決めた範囲の権利・義務を引き継ぎます。

使用例

会社分割で引き継ぐ契約と債務を一覧にし、包括承継される範囲を確認する。

間違えやすい点会社分割で元の会社のすべてを必ず引き継ぐという意味ではありません。事業譲渡の個別の引継ぎと区別し、許認可や労働契約などには別途の確認・保護手続も必要です。

出典

会社法 ↗
第750条第1項(吸収合併の効力)/第759条第1項(吸収分割の効力)/第764条第1項(新設分割の効力)

厚生労働省「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」 ↗
第2条以下(労働者等への通知・労働契約の承継等)

包括利益

ほうかつりえき

当期純利益に、その利益には含めない資産の評価差額などの変動を加減した金額です。例えば、保有する一部の有価証券の値上がり・値下がりに伴う変動などを含めて見ます。会社の純資産が、その期間にどう変わったかを幅広く把握するために使います。

使用例

当期純利益は増えましたが、包括利益には有価証券の評価差額の減少も影響しています。

間違えやすい点純資産の増減を何でも利益にするわけではありません。株主からの出資や配当など、所有者との直接の取引は除きます。また、「その他の包括利益」は当期純利益に含めない部分だけを指し、包括利益全体とは区別します。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第25号 包括利益の表示に関する会計基準」 ↗
第4〜7項:所有者との直接取引を除く純資産変動、その他の包括利益、当期純利益への加減と内訳

法人格否認の法理

ほうじんかくひにんのほうり

会社とその背後の経営者や別会社を別々の存在として扱う原則を、特定の関係で例外的に認めない考え方です。会社が名ばかりで独立した実体がない場合や、法律上の責任を逃れるために会社の形式を悪用した場合などに問題になります。

使用例

別会社を使った債務逃れが疑われるため、法人格否認の法理が適用されるか弁護士に相談する。

間違えやすい点社長や親会社が会社の借金をすべて負うという意味ではありません。会社そのものが消えるわけでもなく、具体的な事実や問題となる取引関係に応じて慎重に判断されます。

出典

裁判所公表判決(裁判例PDF 18957) ↗
PDF18ページ「三 法人格否認の法理について」1・2

最高裁判所判決(2005年7月15日) ↗
PDF3〜4ページ、理由2(実体法上の効果と判決の効力の区別)

法的再生

ほうてきさいせい

裁判所が関わる法律上の手続を利用し、借金などを整理しながら事業の立て直しを図ることです。民事再生や会社更生が代表例です。会社が自力で再建する場合のほか、スポンサーへ事業を譲って事業を残す場合もあります。

使用例

銀行との話合いだけでは再建が難しく、法的再生の利用を弁護士と検討する。

間違えやすい点法的整理には、再生型の手続だけでなく破産などの清算型も含まれます。また、法的再生を申し立てれば、必ず従来の経営者や会社がそのまま残れるという意味ではありません。

出典

民事再生法 ↗
第1条(目的)

会社更生法 ↗
第1条(目的)

東京地方裁判所民事第20部「よくある質問」 ↗
民事再生手続の活用事例/自主再建型・事業譲渡型・管理型

法務

ほうむ

会社の活動を法律や契約の面から支える仕事です。契約の確認、必要な手続の検討、紛争への対応、法令を守る仕組みづくりなどを含みます。M&Aでは、取引の進め方や契約条件を考え、対象会社に法的な問題がないかも調べます。

使用例

契約書へ署名する前に法務担当者へ相談し、約束する内容と、守れなかった場合の責任を確認する。

間違えやすい点法務部という部署の名前だけを指す言葉ではなく、法務部がない会社にも必要な仕事です。また、問題が起きてから訴訟へ対応するだけでなく、取引の計画段階から関わる役割もあります。

出典

経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(2019年11月) ↗
第1章「本報告書のねらい」及び法務部門の範囲を示す注記:契約審査・法律相談・訴訟・コンプライアンス等、部署名を問わない法務機能、パートナーとガーディアンの役割

法務DD

ほうむでぃーでぃー

別名・英字:法務デューデリジェンス

M&Aの対象となる会社や事業について、法律や契約の問題を調べることです。株式を売る人が正しい株主か、取引契約は続けられるか、必要な許可があるか、訴訟がないかなどを確認し、取引条件や対応を考えます。

使用例

法務DDで、主要取引先の契約に買収時の同意を求める条項があると分かった。

間違えやすい点決算書の数字を中心に調べる財務DDとは視点が異なります。調査しただけですべての問題がなくなるわけではなく、見つかった問題を価格・契約・改善策へ反映します。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 ↗
第1章Ⅱ3(6)デュー・ディリジェンス(DD)/法務DD

東京都事業承継・引継ぎ支援センター「M&A基礎知識」 ↗
M&A一般用語/買収監査(デューデリジェンス、DD)

ホールディングス

ほーるでぃんぐす

別名・英字:Holdings

持株会社を表す呼び名です。ほかの会社の株式を保有し、傘下の会社の経営方針や人・お金の配分をまとめる役割を担います。自ら事業を行わずグループの管理を中心にする会社と、自らも事業を行いながら子会社を管理する会社があります。

使用例

ホールディングス化の計画を読み、親会社と事業を行う子会社の役割、株式の持ち方を確認する。

間違えやすい点株式会社などと別の法人の種類を新設する言葉ではありません。また、グループ各社は通常それぞれ別の法人です。社名にホールディングスとあるだけで、実際の支配関係や事業内容まで判断しないようにします。

出典

総務省 政府統計の総合窓口「持株会社か否か」 ↗
定義単位項目:純粋持株会社は自ら独自事業を行わず株式保有で子会社を支配、事業持株会社は自らも事業を行う。統計上の資産割合条件を一般説明の固定要件には引用しない

簿外債務

ぼがいさいむ

貸借対照表の負債に十分表れていない債務です。借入金だけでなく、未払残業代や、計上されていない退職金の負担などが問題になります。M&Aでは、買収後に想定外の支払いを抱えないよう、契約や人事資料なども調べて確認します。

使用例

簿外債務の有無を調べるため、決算書に加えて残業記録や退職金規程も確認します。

間違えやすい点故意に隠した借金だけを指す言葉ではありません。計上漏れのほか、会計上の計上条件なども確認します。将来の出来事によって負担が決まる偶発債務とは見方が異なり、決算書の注記にも注意が必要です。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月) ↗
税理士の主な支援内容:退職給付債務・未払残業代等の簿外債務及び株式譲渡時の引継ぎリスク

中小企業庁「2021年版 中小企業白書」第2部第3章第2節 ↗
コラム2-3-5「M&Aにおけるリスクへの対応」:簿外債務・偶発債務とDDによる事前調査

簿外資産

ぼがいしさん

貸借対照表に資産として載っていない財産や権利などです。自社で育てたブランドの価値や、計上が漏れている権利などが調査対象になります。M&Aでは、決算書の数字だけでは見えない価値の有無を調べ、会社や株式の評価に反映するか検討します。

使用例

簿外資産の可能性がある商標権について、権利者と利用状況、価値を確認します。

間違えやすい点帳簿にないから必ず不正、とは限りません。会計ルール上、資産として計上しない価値もあります。一方、帳簿にある土地の時価が帳簿額を上回る含み益とは別の見方です。価値があると主張するだけで全額を加算するものでもありません。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第28・29・99・100項:取得前の計上の有無にかかわらない識別可能資産、無形資産への取得原価配分

高浜市「償却資産について」 ↗
申告対象となる資産の表「簿外資産」:帳簿に記載されていない資産という用語の確認。税務固有の金額・要件は本文に用いない

簿価引継法

ぼかひきつぎほう

会社分割などの会計処理を説明する際に、資産や負債を、移す前の適切な帳簿の金額で引き継ぐ考え方を指す言葉です。同じ企業グループ内の再編などで登場します。資産を動かしたことだけで、時価との差額を利益にする処理とは区別します。

使用例

この会社分割で簿価を引き継ぐか、共通支配下の取引に当たるかを確認します。

間違えやすい点会社分割なら必ずこの方法になる、という意味ではありません。資産を移す側と受ける側、投資が続くかなどによって処理を判断します。引き継ぐ会計上の帳簿額は、売買価格や税務上の金額と一致するとは限りません。

出典

企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準(2025年10月16日までの修正反映)」 ↗
第40・41項:共通支配下の取引における適正な帳簿価額による資産・負債の計上

企業会計基準委員会「企業会計基準第7号 事業分離等に関する会計基準」 ↗
第10項(2)・第77項:投資が継続する場合の帳簿価額、重要な会社分割等で適正な帳簿価額を確定すること

ポストM&A

ぽすとえむあんどえー

M&Aが成立して取引を実行した後の段階や、その後に行う作業を指す呼び方です。従業員や取引先への説明、仕事や経理の引継ぎ、契約名義の変更などを進め、事業を継続できる状態に整えていきます。

使用例

ポストM&Aの担当を決め、取引先への連絡や残っている引継ぎ作業を一覧にする。

間違えやすい点PMIと重なる部分がありますが、ポストM&Aは成立後という段階を広く表す言葉です。PMIのほか、契約に基づく残務や精算などを含める文脈もあります。成立すればすべての作業が終わるという意味ではありません。

出典

中小企業庁「中小M&Aガイドライン 第3版」 ↗
第1章・M&Aの流れ(10)「クロージング後(ポストM&A)」:報告、各種名義変更・経営者保証、業務引継ぎ、入出金の精算等

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「企業買収の実務プロセス 第3版」(2021年6月、著者による紹介) ↗
目次「第3部 ポストM&Aフェーズ」:統合準備・経営統合という用法

ボラティリティ

ぼらてぃりてぃ

株価などの値動きの大きさを表す度合いです。高いほど価格が大きく振れることを示し、株価が上がる方向だけを意味しません。M&Aでは、ストックオプションなど、将来株式を取得する権利の価値を計算するときの前提にも使います。

使用例

新株予約権の評価に使うボラティリティを、どの期間の株価から求めたか確認します。

間違えやすい点過去の値動きから計算するものと、オプションの取引価格から逆算するものがあります。調べる期間や方法が違えば値も変わり、将来の値動きがそのとおりになる保証ではありません。株価の上昇率や市場との連動度とも別です。

出典

日本取引所グループ「用語集:ボラティリティ」 ↗
本文:価格変動率、ヒストリカル・ボラティリティとインプライド・ボラティリティ

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第11号 ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」 ↗
第6項・第9〜12項:株価変動性を評価に用いること及び過去の情報に基づく見積り

ホワイトナイト

ほわいとないと

別名・英字:白馬の騎士

会社の経営陣が賛同していない買収提案に対し、その会社が協力を求める友好的な買い手のことです。先に現れた買い手への対抗案として会社を買うなどして、経営陣が望まない買収を避けようとする場面で使われます。

使用例

対抗する買収提案を比較する際、ホワイトナイトの提示価格と買収後の方針を確認する。

間違えやすい点単なる資金援助者ではなく、友好的な買い手を指す言葉です。友好的とは主に対象会社の経営陣との関係を表し、その提案が株主にとっても最善かは別に検討します。買収されれば所有や経営のあり方は変わります。

出典

一橋大学大学院経営管理研究科「ホワイトナイト」 ↗
回答:対象企業が求める友好的買収者、対抗提案、自社売却による独立性の変化

東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日) ↗
原則1-5・補充原則1-5①:経営陣の保身を目的としない対応、対抗提案の説明と株主の権利

本源的価値

ほんげんてきかち

別名・英字:本質的価値

オプションの評価では、今の対象価格と、契約で決めた売買価格を比べ、権利を行使するとどれだけ有利かを表す金額です。買う権利なら対象価格が高い側、売る権利なら対象価格が低い側の差額を見ます。不利な場合はゼロとし、マイナスにはしません。

使用例

ストックオプションの本源的価値を、現在の株価と権利行使価格から確認します。

間違えやすい点権利を得るために支払った代金を差し引いた最終利益とは違います。また、期限までに有利になる可能性に対応する時間的価値も別です。本源的価値がゼロでも、期限前のオプション全体の価値がゼロとは限りません。

出典

日本取引所グループ「用語集:本質的価値」 ↗
本文:コール・プットそれぞれの対象価格と行使価格の有利な差額、不利な場合はゼロ

日本取引所グループ「用語集:プレミアム」 ↗
本文:オプション料は本質的価値と時間的価値で構成されること

企業会計基準委員会「企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準」 ↗
第13項後段:単位当たりの本源的価値の定義。ストック・オプションにおける株式評価額と行使価格の差

資料確認:2026年11月1日 / 試験の法令・制度基準日:2026年3月31日
用語は学習用に要約しています。税務・法務の具体的な判断は、適用時点の法令・契約・個別条件を確認してください。

収録範囲と編集方法

日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、かえでファイナンシャルアドバイザリーの用語索引・記事索引と照合しました。は行(ば行・ぱ行を含む)の読みを持つ用語を集め、同じ意味の表記はまとめています。英字略語も読みで整理しています。旧制度や外国の呼称は、現在の日本の手続と区別して説明しています。説明文と使用例は独自に作成し、出典は各項目に示しています。すべての競合サイトや、試験の全論点を網羅したという意味ではありません。

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