出題範囲の根拠:公式「出題科目詳細」(全9頁)。各科目の説明の下で、中項目と掲載ページを確認できます。
「M&Aの流れを知っていれば解けるのか」「会計や法律はどこまで必要なのか」。出題範囲を読むと、取引の進め方と、それを支える財務・税務、法務、倫理をつなげて学ぶ必要があると分かります。
- 4科目で全60問程度。M&A実務には市場動向と中小企業政策も含まれます。
- 「DD」「最終契約」は複数科目に登場します。同じ場面を、数字・法律・行動の観点から整理しましょう。
- 本記事の学習目標・確認例・勉強順序は当サイトの提案です。実際の本試験問題や出題頻度を示すものではありません。
1.4科目の全体像と出題数

譲(ゆずる)「M&Aの手順を覚えるだけでは足りないんですね。」
結(ゆい)「数字や契約に加えて、顧客の利益を守る行動まで範囲に入っています。一つの工程を、4つの視点で見てみましょう。」
| 科目 | 出題数 | 学ぶ視点 |
|---|---|---|
| M&A実務 | 22問程度 | 各工程の目的・業務内容、市場動向・政策 |
| 財務・税務 | 13問程度 | 数字の読み方、評価、会計処理、税負担の考え方 |
| 法務 | 10問程度 | 契約、権利義務、手続、リスクの考え方 |
| 倫理・行動規範 | 15問程度 | 説明、情報管理、顧客利益を守る行動 |
出典:経済産業省の2026年10月30日発表「5.試験時間・出題形式等」。科目内のテーマ別出題数は示されていません。
形式は120分のCBT、四肢択一です。約60問で単純に割れば1問平均約2分ですが、これは時間配分の目安です。倫理は全体のおよそ4分の1を占めるため、財務・法務の勉強だけで対策を終えないようにしましょう。
2.M&A実務:相談から成約後まで
公式範囲は、案件を見つけて契約を締結するまでにとどまりません。初期相談・提案、企業価値評価、相手探し、調査、契約、決済、成約後の統合まで続きます。[公式PDF 1〜4頁]
入口では、相談者の希望と選択肢を整理する
事前相談には、潜在ニーズの把握、初期調査、企業・経営者の情報や希望の整理、提携先との連携が含まれます。提案の範囲には、第三者承継以外の事業承継スキームもあります。相談者が何を実現したいのかを整理する視点が入口です。
評価・相手探し・基本合意を一つの流れで学ぶ
バリュエーション(企業価値・事業価値の評価)は、コスト・マーケット・インカムの各アプローチに加え、純資産に数年分の利益を加算する方法などが範囲です。名称だけでなく、使う情報と方法の違いを整理しましょう。
マッチングには、企業名を伏せた紹介資料、企業概要書(IM)、候補先リスト、ネームクリア、入札、トップ面談などが含まれます。その後、意向表明と基本合意へ進みます。誰が資料を作り、誰が検討し、何を確認して次の工程へ進むかを説明できる状態が目標です。
DDは、調査の内容と進行の設計の両方
DD(デュー・ディリジェンス)は、取引前に対象企業の実態やリスクを調べることです。財務・税務、法務、人事・労務などの調査項目だけでなく、調査範囲・機関の選定、体制づくり、資料やデータルームの管理、面談・現地調査の調整も範囲です。
最終契約では、調査で分かったリスクの扱い、経営者保証、譲渡額、表明保証、クロージング前後の条件などを学びます。クロージング(取引の実行・決済)とPMI(成約後の統合)も独立した範囲です。
市場動向・政策を見落とさない
経営者の高齢化や後継者不在、中小M&Aの件数や市場参加者、不適切な取引も対象です。政策面では、中小企業者の定義、M&A支援機関登録制度、事業承継・M&A支援補助金、経営承継円滑化法、公的支援機関の取組などを確認します。
公式の14中項目と掲載ページ
出典:中小企業庁「出題科目詳細」。中項目の見出しを転記しています。小項目・詳細は原本で確認できます。
| 原本の頁 | 公式PDFの中項目 |
|---|---|
| 1頁 ↗ |
|
| 2頁 ↗ |
|
| 3頁 ↗ |
|
| 4頁 ↗ |
|
「企業概要書を渡す段階では、どんな情報管理や確認が必要か」。作業の順番だけでなく、秘密保持や顧客の意思確認と結び付けて説明してみましょう。
3.財務・税務:決算書から取引条件まで
企業価値の計算だけが対象ではありません。簿記、決算書、原価、資金繰りの基礎に加え、取引スキーム、資金調達、DD、契約へと広がります。[公式PDF 5〜6頁]
PL・BS・CFの役割を区別する
損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュ・フロー計算書(CF)が範囲です。利益、資産・負債、現金の動きを分けて捉え、数字がどの資料に表れるかを整理しましょう。益金・損金、課税所得と税額、原価計算、会計基準も含まれます。
スキームによる会計・税務の違いも対象
財務上の留意事項には、企業結合会計、PPA(取得原価の配分)、のれん、連結会計、銀行・公的融資、LBOローンの基本概念が挙げられています。税務は、法人税・所得税・消費税・贈与税・相続税などの基礎、源泉徴収、役員退職金、不動産評価まで対象です。
さらに、株式譲渡・事業譲渡・会社分割の税務上の考え方、配当・自己株買い・現物分配、組織再編税制、グループ通算制度・グループ法人税制が含まれます。売り手・買い手、個人・法人、取引方法という条件をそろえて読む習慣が大切です。
公式の9中項目と掲載ページ
出典:中小企業庁「出題科目詳細」。中項目の見出しを転記しています。小項目・詳細は原本で確認できます。
| 原本の頁 | 公式PDFの中項目 |
|---|---|
| 5頁 ↗ |
|
| 6頁 ↗ |
|
「この数字は利益なのか、現金なのか」「この論点は評価額、税負担、契約条件のどこに影響するか」。用語を取引の判断につなげてみましょう。
4.法務:法律名とM&Aの場面をつなぐ
会社法・民法だけでなく、労働法、独占禁止法、金融商品取引法、外為法、不正競争防止法、登記、倒産、不動産、個人情報保護、弁護士法に関わる基礎知識まで列挙されています。[公式PDF 7頁]
広い範囲ですが、まずは「どの工程で何を確認する法律なのか」を整理すると学びやすくなります。秘密保持や仲介・FA契約、意向表明・基本合意、法務DD、表明保証、クロージング、リスク・係争という実務上の場面に結び付けましょう。
契約を締結することと、実行することを分ける
実務科目で最終契約の進め方を学んだら、法務では条項の意味や権利義務を確認します。調査で見つかった問題を、価格や契約条件などでどう扱うかという観点で読むと、DDと契約がつながります。
公式の8中項目と掲載ページ
出典:中小企業庁「出題科目詳細」。中項目の見出しを転記しています。小項目・詳細は原本で確認できます。
| 原本の頁 | 公式PDFの中項目 |
|---|---|
| 7頁 ↗ |
|
本文では「不正競争防止法」と表記しています(公式PDFの表記は「不正防止競争法」)。
「契約条項が約束している内容は何か」「確認を省くと誰にどんなリスクが残るか」。条項名を自分の言葉に置き換えてみましょう。
5.倫理・行動規範:場面ごとの判断を学ぶ
約15問の独立した科目です。支援者の使命、顧客への貢献、善管注意義務、顧客利益の優先、意思の尊重、報告、広告・営業、品位、反社会的勢力との関係、情報管理などが対象です。[公式PDF 8〜9頁]
抽象的な心構えだけで終わらせない
公式範囲には、手数料や提供業務の説明、相手方の手数料の開示、仲介者の利益相反への対応、不適切な譲り受け側の排除、専任条項、直接交渉の制限、テール条項の留意点など、具体的な業務上の論点があります。
仲介者とFAは、関与する立場や役割の違いも学習対象です。「誰の立場で支援するのか」「どんな利害が衝突するのか」「誰への説明・確認が必要か」をセットで整理しましょう。
公式の11中項目と掲載ページ
出典:中小企業庁「出題科目詳細」。中項目の見出しを転記しています。小項目・詳細は原本で確認できます。
| 原本の頁 | 公式PDFの中項目 |
|---|---|
| 8頁 ↗ |
|
| 9頁 ↗ |
|
小項目が詳しく列挙されていない項目もあります。未記載の細目を公式範囲として補ってはいません。
「成約を急ぎたい支援者の都合と、顧客の慎重な判断がぶつかったら、何を説明し、どの意思を確認するか」。登場人物と行動を置いて考えてみましょう。
6.どこまで勉強すればよい?範囲表の読み方
範囲にあることと、必ず出ることは別
科目名だけでなく小項目まで読むと、学ぶ対象を具体化できます。ただし、掲載は必ず出ることや出題頻度の高さを意味しません。本記事の42項目は、公式表の中項目を当サイトで数えたものです。公式の問題数や配点ではありません。
また、「基礎知識」という記載だけを根拠に、計算が出ない、細かな条件は不要、専門資格と同じ難易度だ、と判断することはできません。今回の発表と別紙だけでは、詳細な難易度、必要学習時間、計算問題の比率は確定できません。
法令・制度は2026年3月31日を基準に読む
別紙冒頭に示された基準日は2026年3月末日です。税制、補助金、制度の要件などは、現在のウェブページの内容だけでなく、対象となる時点と適用関係を確認しましょう。新しい情報が出たからといって、直ちに今回の試験の正答根拠になるとは限りません。
古い検討案を確定事項に置き換えない
学習範囲は今回公表された「出題科目詳細」で確認します。過去の検討資料にある優先度の印や合格基準案などを、そのまま今回の確定条件として扱わないことが大切です。受検案内や追加の公式説明も確認してください。
7.どう勉強を始めるか

譲「範囲が広いですね。どこから手を付けよう……。」
結「まず取引の全体像をつかみましょう。DDなら、進め方・数字の調査・契約の確認・情報管理というように、科目をつなげると整理しやすくなります。」
以下は当サイトの学習提案です。公式に推奨された順序や合格を保証する方法ではありません。
初めて学ぶ人:工程を軸に4科目をつなぐ
- 全体の流れを一度たどる。相談→評価→相手探し→基本合意→DD→最終契約→クロージング→PMIという見取り図を作ります。実際の案件では工程が重なったり前後したりします。
- 財務の基礎を並行して固める。PL・BS・CFと、株式譲渡・事業譲渡などの用語を押さえます。
- 一つの場面を4つの視点で読む。例えばDDなら、実務は調査の設計、財務・税務は数字や税務の調査、法務は契約や権利義務、倫理は支援者の役割や情報管理を整理します。
- 問題を解き、誤った選択肢の理由まで確認する。根拠資料に戻り、条件が変わると判断がどう変わるかを考えます。
- 市場・政策・PMIの抜けを点検する。契約までの勉強に偏らず、一覧で未学習の分野を確認します。
実務経験者:自社のやり方と公式資料を照合する
経験のある工程は、自社の慣行をそのまま正解とせず、用語、説明事項、役割分担を一次資料と照合しましょう。自分が担当しない税務・法務・PMIや政策制度も範囲に含まれます。経験したことがない項目を先に洗い出すと、学習の抜けを見つけやすくなります。
- 用語の意味を説明できるか
- 誰が、何のために、何を確認するか説明できるか
- 他の科目とのつながりと、根拠資料の場所が分かるか
出典と確認先
- 経済産業省「令和8年度中小企業M&A実務能力・倫理検定試験を実施します」(2026年10月30日)。問題数・試験形式の根拠。
- 別紙「出題科目詳細」。実務1〜4頁、財務・税務5〜6頁、法務7頁、倫理・行動規範8〜9頁。法令・制度基準日は1頁冒頭。頁はPDFのページ順です。
本記事は公式資料を基に当サイトが要約・解説した独自記事です。学習目標、確認例、勉強順序、譲と結の会話は編集上の提案で、実際の本試験問題の再現や出題予告ではありません。公式表の表記は一部読みやすく整理しています。確認日:2026年11月1日。
